危機的出血に対する輸血ガイドライン導入による救命率変化および輸血ネットワークシステム構築に関する研究

文献情報

文献番号
200735068A
報告書区分
総括
研究課題名
危機的出血に対する輸血ガイドライン導入による救命率変化および輸血ネットワークシステム構築に関する研究
課題番号
H19-医薬-一般-031
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
稲田 英一(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 津崎 晃一(慶応義塾大学 医学部)
  • 半田 誠(慶応義塾大学 医学部)
  • 紀野 修一(旭川医科大学)
  • 蕨 謙吾(順天堂大学 医学部)
  • 矢野 哲(東京大学 医学部)
  • 益子 邦洋(日本医科大学 医学部)
  • 入田 和男(九州大学 医学部)
  • 稲葉 頌一(神奈川県赤十字センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大量出血・危機的出血の実態把握と、輸血部の対応の調査、輸血部と日本十字血液センターを結ぶ受発注オンラインネットワークの構築を目的とした。
研究方法
麻酔科認定病院384施設と、同病院の輸血部、産科を持つ病院291施設、救命救急センター202施設、小児病院27施設を対象として、危機的出血の症例数、その際に行った輸血療法(輸血量、交差適合試験の省略、異型適合輸血など)、異型適合血使用例についてアンケート調査を行った。厚生労働省輸血実施指針や、日本麻酔科学会と日本輸血・細胞治療学会の「危機的出血への対応ガイドライン」の周知度、理解度を調査した。委託事業として、輸血部と血液センター間のオンライン輸血受発注システムの開発を行った。
結果と考察
麻酔科指導病院247施設(692,241例)、産科病院143施設(分娩数45,495例)、小児病院14施設(25,345例)、救命救急センター83施設、輸血部330施設から回答があった。手術室における循環血液量以上の出血例は2,657例(発生率38.4/1万例)、危機的出血症例数は404例(発生率5.8/1万例)、そのうち30日以内の死亡は196例(2.8/1万例)、小児専門病院における循環血液量以上の出血例は43例(発生率16.9/1万例)、危機的出血は16症例(発生率6.3/1万例)であった。分娩時の2,000ml以上出血例は483例(106.2例/1万分娩)であった。麻酔科領域調査では、未交差同型血は103例、異型適合血使用は23施設から54症例が報告された。救命センターの43%は未交差、未照射O型血の使用経験があった。異型適合血使用に関しては、院内のコンセンサスの欠如や、医師の躊躇が問題であった。血液センターからの輸血用血液の平均搬送時間が30分を超える施設が約半数、最大搬送時間が60分を超える施設が約40%近く存在した。「危機的出血への対応ガイドライン」の周知度は低かった。輸血マニュアルが整備されていたが、実地訓練実施施設は少なかった。輸血用血液受発注オンラインネットワークは実用化には、まだ多くの課題があった。
結論
深刻な危機的出血の実態とそれに対する適切な輸血療法実施における問題点が明らかになった。危機的出血への対応ガイドラインの周知徹底と実地訓練、血液センター-基幹病院間のオンラインネットワーク構築推進の必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-