がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化にむけた臨床研究—がん医療の充実を志向して

文献情報

文献番号
202008025A
報告書区分
総括
研究課題名
がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化にむけた臨床研究—がん医療の充実を志向して
課題番号
19EA1015
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 大須賀 穣(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 杉山 隆(愛媛大学医学部)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 高井 泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)
  • 太田 邦明(東邦大学医学部産科婦人科学教室)
  • 高江 正道(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 安岡 稔晃(愛媛大学 医学部)
  • 岩間 憲之(東北大学 医学系研究科)
  • 荻島 創一(国立大学法人 東北大学 高等研究機構 未来型医療創成センター)
  • 水野 聖士(東北大学 メディカル・メガバンク機構)
  • 高橋 俊文(福島県立医科大学 ふくしま子ども女性医療支援センター)
  • 小宮 ひろみ(福島県立医科大学附属病院 性差医療センター)
  • 岩佐 武(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
  • 佐藤 美紀子(浅井 美紀子)(日本大学 医学部)
  • 鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院血液腫瘍科)
  • 長谷川 潤一(聖マリアンナ医科大学 産婦人科学)
  • 洞下 由記(奥津 由記)(聖マリアンナ医科大学 産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんサバイバーシップ(生殖機能)に主眼をおいて、「がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化」を目指した7つの研究を行い、成果による政策提言を行う。
研究方法
研究① 本邦における小児・AYA世代がん患者の生殖機能に関するがん・生殖医療連携体制の拡充と機能維持に向けた研究:全国47都道府県におけるがん・生殖医療連携ネットワークの現状を検証する。研究② 本邦における小児・思春期世代がん患者に対する妊孕性温存の診療の実態調査と小児がん診療拠点病院におけるがん・生殖医療の均てん化に向けた研究:全国小児がん拠点病院におけるがん・生殖医療に関する実態調査を行う。研究③ 本邦におけるがん・生殖医療のアウトカムの検証とエビデンスの構築に向けた研究:現時点での妊孕性温存療法のエビデンスを検証する。研究④ 本邦におけるがんサバイバーの周産期予後等の実態調査とプレコンセプションケア確立に向けた研究:プレコンセプションケア確立を目的にがんサバイバーの周産期予後等の実態調査を検証する。研究⑤ 本邦におけるがん領域における妊孕性温存療法の均てん化に関する調査研究:日本癌治療学会の小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年版の性腺リスク分類に掲載されていない、妊孕性温存療法の適応疾患を抽出する。医療系学生を対象とした、AYAがんに関する意識調査並びにオンライン特別講義を開催する。研究⑥ 小児・AYAがんサバイバー女性におけるオンコウィメンズヘルスの実態調査:小児・AYAがんサバイバー女性の後遺症の実態と患者自身の意識に関する実態調査を企画する。研究⑦ 小児AYA世代がん患者などの生殖機能温存に関わる支援における対象者数および最大助成金額に関する試算2020:小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存療法の経済的負担軽減に向けた、助成金の試算を行う。
結果と考察
本年度も「がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化」を目指した7つの研究を予定通り進めることができた。
結論
① がん・生殖医療連携体制の拡充と機能維持について:小児・AYA世代がん患者に対する、より充実したがん・生殖医療に関する支援を行うためには、がん治療医と行政の関与体制の構築が急務である。
② 小児がん診療拠点病院におけるがん・生殖医療の均てん化ついて:小児がん拠点病院のがん治療医が、患者とその家族に対して妊孕性温存に関する説明を行う際の、説明資材の作成並びに充実が必要である。そして、小児がん拠点病院におけるがん・生殖医療連携体制の構築が急務である。
③ がんサバイバーのプレコンセプションケアの確立について:わが国においても、小児・AYA世代がんサバイバーの妊娠転帰は、早産や低出生体重などのリスクが高いことが示唆されたことから、がんサバイバーのプレコンセプションケアの確立が急務である。さらに、がんサバイバーを取り巻く環境は、ソーシャル・キャピタルが乏しく、特に出産経験がない場合はより顕著であったことから、ソーシャル・キャピタルを高める支援策の検討が急務である。
④ 妊孕性温存療法の適応拡大について:治療開始前に妊孕性温存を考慮すべきがん疾患や非がん疾患の患者には経済的支援支援が行き届かず、これらの患者は妊孕性温存の機会を損失している。本研究成果は、小児・AYA世代がん患者等に対する必要ながん・生殖医療の提供に繋がると確信する。
⑤ AYAがんに関する均てん化について:同じAYA世代の若者でありかつ将来医療従事者を目指す医療系学生に対して、AYAがんサバイバー協力のもとAYAがんに関する医学教育の継続的な導入が必要である。
⑥ 小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存療法に対する経済的支援に関して:地方自治体レベルの取り組みでは、自治体ごとに施策の優先順位が異なるため、がん・生殖医療に関わる費用助成の実施やその条件、助成額に格差が生じうる。したがって国内のすべての患者に均等な機会を与えるという意味では、特定不妊治療費助成金同様に国が支援を行うことが望ましいと考える。以下に、小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存療法に対する経済的支援案を記す;未受精卵子凍結(推定患者数1,440人):5億7600万円-11億5200万円、卵巣組織凍結(推定患者数100人):5600万円-8000万円、胚(受精卵)凍結(推定患者数2,400人):12億円-24億円、精子凍結(精巣内精子凍結を含む)(推定患者数3,000人):1億6800万円-3億1800万円。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,960,000円
(2)補助金確定額
11,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 46,331円
人件費・謝金 90,100円
旅費 440円
その他 9,063,129円
間接経費 2,760,000円
合計 11,960,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-12-07
更新日
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