血液製剤の安全性向上をめざした高圧処理による病原体不活化法の研究

文献情報

文献番号
200735066A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤の安全性向上をめざした高圧処理による病原体不活化法の研究
課題番号
H19-医薬-一般-029
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 野島 清子(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、ウイルスのスクリーニング法と不活化・除去法の導入によって安全性は飛躍的に向上した。しかし、新興;再興感染症の発生に対応でき、さらに輸血用血液にも応用できる安全で有効な不活化法の開発が求められている。本研究班では、食品の無菌化に用いられている高圧処理技術を血液製剤の病原体の不活化に応用し、血液製剤の新しい不活化法の開発を目指した。
研究方法
原理的には、チッソガスを用いて密閉した水を圧縮することで検体に加圧できる装置を使用した。密閉された容器内は「パスカルの原理」で均等に圧をかけることができる。この高圧装置に循環式の冷却装置を付け、高圧処理の温度を室温から4℃までコントロールできるようにした。室温及び4℃の条件下に新鮮凍結血漿を2000気圧から4000気圧まで圧を変えてそれぞれ高圧処理し、活性化部分トロンボプラスチン時間(以下APTT)、プロトロンビン時間(以下PT)、第8、9因子等の活性を測定した。また、ヒト免疫グロブリン製剤を同様に加圧し、凝集体の形成と抗補体活性を測定した。さらに、パルボウイルスB19(以下B19)をアルブミンに添加して、室温と4℃でそれぞれ3000気圧の高圧処理を行ない、60℃10時間の液状加熱での不活化効果と比較、検討した。
結果と考察
室温での3000気圧処理ではAPTTが著しく延長し、凝固因子の活化は低下した。しかし、第9因子、アンチトロンビン III 、フィブリノゲンの活性は低下しなかった。一方、4℃での3000気圧処理ではAPTTの延長は抑制され、凝固因子の活性は100%ではないにしろ保たれた。ヒト免疫グロブリン製剤の高圧処理では3000気圧まで凝集体の形成は認められなかった。抗補体活性は4000気圧以上に加圧すると生物学的製剤基準を超えたが、それ以下の圧では基準以下の値が得られた。各種不活化に抵抗性を示すB19を用いてウイルスの不活化を検討したが、4℃及び室温とも3000気圧処理によって4 Log不活化された。一方、液状加熱では4Log不活化された。液状加熱では10時間を要したが、加圧処理では僅か3分間(1分間の加圧を3回)の処理で同等の不活化効果を得ることができた。
結論
高圧処理による血液製剤のウイルス不活化法を検討した。低温条件で高圧処理することによって、ウイルスの不活化効率を変えずに凝固因子の失活を抑制することに成功した。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
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