がん患者の療養生活の最終段階における体系的な苦痛緩和法の構築に関する研究

文献情報

文献番号
202008021A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の療養生活の最終段階における体系的な苦痛緩和法の構築に関する研究
課題番号
19EA1011
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
里見 絵理子(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 田上 恵太(東北大学大学院 医学系研究科 緩和医療学分野)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 森 雅紀(聖隷三方原病院 臨床検査科)
  • 今井 堅吾(聖隷三方原病院 ホスピス科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
進行終末期がん患者の治療抵抗性の苦痛のうち、がん疼痛、呼吸困難、終末期せん妄について十分に症状緩和に至り患者の生活の質(QOL)向上につなげることを目的とし、以下の研究をおこなう。

がん疼痛の治療アルゴリズムの構築に関する研究
難治性がん疼痛治療の実態調査
進行がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の体系的治療に関する研究
進行がん患者の過活動型せん妄に対する向精神薬の体系的治療に関する研究

緩和ケアの実地臨床での体系的治療の教育研修を関連団体に働きかけ、地域・施設間格差の改善のための提言をおこなう。
研究方法
①がん疼痛の治療アルゴリズム構築に関する研究(担当:田上)
がん疼痛性状を調査し、緩和ケアチームで実施するがん疼痛治療の日常臨床を反映したアルゴリズムのうちどのように治療されるかについて前向き観察研究を行い、疼痛緩和に至る臨床データを複数施設で集積する。集積されたデータに基づいて、アルゴリズムを完成させる。

② 難治性がん疼痛治療の実態調査(担当:松本)
難治性がん疼痛に対する治療の実態や専門医の考え、施設ごと整備状況などについての質問紙を作成し、がん疼痛治療に関わる専門医、医療機関に郵送し、調査する。解析において、難治性がん疼痛に対する治療における障壁や課題の抽出と、対策・提言をおこなう。

③ 進行がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の体系的治療に関する研究(担当:森)
呼吸困難に対するオピオイド持続注射の緩和ケアの実臨床における使用を反映し視覚化した体系的治療(アルゴリズム)を作成し、観察研究をおこない、実臨床における安全性、有効性、実施可能性を探索する。

④ 進行がん患者の過活動型せん妄に対する向精神薬の体系的治療に関する研究(担当:今井)
緩和ケア病棟における終末期がん患者の過活動型/混合型せん妄では向精神薬(注射薬)の使用方法を反映した体系的治療(アルゴリズム)を作成し、観察研究をおこない、実臨床における安全性、有効性、実施可能性を探索する。
結果と考察
研究結果
①がん疼痛の治療アルゴリズム構築に関する研究
緩和ケア医、腫瘍内科医、ペインクリニック医、看護の各専門家を交えたパネルで作成したがん疼痛治療アルゴリズムを用い、現在臨床データ収集のための前向き観察研究を開始し、現在登録中である。

難治性がん疼痛治療の実態調査
令和2年度は、がん疼痛に関する質問紙をがん疼痛治療に関わる専門医(がん治療認定医、緩和医療専門医/認定医、ペインクリニック専門医、IVR専門医(IVR:Interventional Radiology 画像下治療)、在宅専門医)に郵送し回収が完了した。「がんの痛みが十分に緩和されない時に、どのような対応を取るか」という問いにおいて、院外に相談できる専門医がいないとした在宅医の割合が多かった。またがん治療認定医対象の調査においては、難治性がん疼痛治療薬メサドンや画像下治療による鎮痛法についての認識がとぼしいことが明らかになった。
医療機関(がん診療連携拠点病院、それ以外の病院、在宅医療機関)を対象に、がん疼痛治療の実態に関する調査票を郵送した。

進行がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の体系的治療に関する研究
作成した体系的治療(アルゴリズム)に関する前向き観察研究を実施し5機関において開始した。

進行がん患者の過活動型せん妄に対する向精神薬の体系的治療に関する研究
視覚化した体系的治療(アルゴリズム)について、2機関において、前向き観察研究を実施し現在登録中である。
考察
難治性がん疼痛の専門医調査を終え、がん疼痛治療に関わる医師の専門性、就業環境によってがん疼痛治療の提供状況が異なる可能性が示唆され、苦痛緩和のための医療連携が必要であることがいえる。また、がん治療医において、強オピオイドの使用や緩和的放射線治療は普及しているが、難治性がん疼痛治療薬メサドンや画像下治療による疼痛緩和について認識が低いことが明らかになった。これは、緩和ケア教育に各種疼痛緩和法に関する内容を含めるべきと考えられた。がん疼痛治療のアルゴリズム開発と共に難治性がん疼痛治療については、地域の専門家と連携することが求められる。また呼吸困難、終末期過活動せん妄については体系治療による観察研究を実施し順調に登録が進んでいる。
結論
がん疼痛、呼吸困難、終末期せん妄の症状緩和に関する体系的治療(アルゴリズム)の構築と観察研究、および難治性がん疼痛治療の実態調査を実施した。専門医調査から進行終末期がん患者の苦痛緩和を達成するためにがん疼痛治療法の医師への教育とともに地域連携の強化が必要である。引き続き症状緩和治療のアルゴリズム構築に関する研究を進め、教育、医療連携の強化など、関係団体と情報共有をしながら更なる検討する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,639,000円
差引額 [(1)-(2)]
361,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 108,836円
人件費・謝金 622,251円
旅費 0円
その他 6,600,987円
間接経費 2,307,000円
合計 9,639,074円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
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