がんゲノム医療に携わる医師等の育成に資する研究

文献情報

文献番号
202008017A
報告書区分
総括
研究課題名
がんゲノム医療に携わる医師等の育成に資する研究
課題番号
19EA1007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大江 裕一郎(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院血液腫瘍科)
  • 吉野 孝之(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科)
  • 土原 一哉(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター トランスレーショナルインフォマティクス分野)
  • 内藤 陽一(国立がん研究センター東病院 先端医療科)
  • 角南 久仁子(関原 久仁子)(国立がん研究センター 中央病院 臨床検査科)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部 ゲノム生物学教室)
  • 小山 隆文(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 先端医療科)
  • 高橋 秀明(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)
  • 浜本 康夫(慶応義塾大学 医学部)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 中谷 中(三重大学医学部附属病院)
  • 武田 真幸(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんゲノム医療は、第3期がん対策推進基本計画の分野別施策「がん医療の充実」に掲げられている重要課題である。質の高いがんゲノム医療の提供には、がんゲノム医療に携わる人材の育成が必要不可欠であるが、現場で対応する医師等に関しては、備えるべき知識や資質等が明確でなく、またそれらを修得するためにどのような研修が必要か明らかにされていない。また、質の高いがんゲノム医療を均てん化するには、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネルの質の向上、標準化が不可欠である。本研究では、エキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成およびがんゲノム医療に従事する医師等の教育、育成を行い、質の高いエキスパートパネルの判断に基づき、がんゲノム医療や分子標的治療に対する高度な知識と経験を有する医師等により、がんゲノム医療が実施されることにより、適切ながんゲノム医療を広く国民に提供することを目的とする。
研究方法
本研究事業では、1)がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成方法の研究(吉野小班)、2)がんゲノム医療中核拠点病院以外のがんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等の教育、育成の研究(西尾小班)を両小班の連携のもと実施した。
結果と考察
吉野小班では、模擬症例50例を用いたトライアルから、全12のがんゲノム医療中核拠点病院エキスパートパネルでエビデンスレベルが高い(A/B/R、「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス(2020 年 5月 8 日 第 2.1 版)」)遺伝子異常に正確なクリニカル・アノテーションがなされている一方、エビデンスレベルが低い(C/D/E/F)遺伝子異常に正確なクリニカル・アノテーションがなされていないことがわかった。エビデンスレベルが低い(C/D/E/F)遺伝子異常に関するコンセンサス・アノテーション(正解のアノテーション)をon-timeで共有する仕組み作りが必要であると考えられた。近い将来エキスパートパネルの負担はさらに増加すると考えられ、全症例(All)から必要な症例(Some)に絞って行う(複雑な症例や教育的な症例をより重点的に検討)というエキスパートパネルの最適化が必要であると考える。合わせて臨床医個人レベルのクリニカル・アノテーションの教育を日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会と協働して行うことが重要であると考える。
西尾小班では、主としてがんゲノム医療中核拠点病院等以外に勤務し、がん診療に携わる医師等を対象にがんゲノム医療に携わる医師等が備えるべき知識や資質について検討した。また、身につけるための方策を検討の上、医師等を対象に、研修実施者の育成も念頭に置いた上で、研修を実施した。がんゲノム医療に必須の知識を身につける際に求められる研修資料、教育プログラムの策定、モデル研修会の実施と評価法の策定を行った。モデル研修会を2020年8月16日、WEB開催した。参加申し込み:563名申込分まで受け付け(定員400名)、参加予定者480名、参加者(最終log確認値)401名(関係者を含め418名)であった。事前事後問題結果を用い教育効果の評価を行った。事前事後問題の解答率の中央値は事前問題3/9、事後問題4/9(p<0.0001、paired t-test)であり、教育効果が示された。アンケート調査結果を基に、課題抽出を行った。
 がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材が備えるべき知識や資質等を明らかにし、人材育成に資する研修資料や研修プログラムを作成・実践し、エキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成を系統だって実施することにより、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネルの質の向上が期待される。がんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等が備えるべき知識や資質等を明らかにし、人材育成に資する研修資料や研修プログラムを作成・実践することで、がんゲノム医療や分子標的治療に対する高度な知識と経験を有する医師等を育成することが期待される。
結論
標準化された質の高いエキスパートパネルの判断に基づき、がんゲノム医療に対する高度な知識と経験を有する医師等が、がんゲノム医療を実施することにより、適切ながんゲノム医療を広く国民に提供することにより、生存率の向上および医療経済的なメリットが期待される。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)を介して、がんゲノム医療を受ける患者のゲノム情報、臨床情報を収集することにより、がんゲノム医療の学術的な発展をもたらすとともに新薬の開発などで社会的に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202008017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
17,253,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,747,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 139,000円
人件費・謝金 603,000円
旅費 2,000円
その他 11,893,000円
間接経費 4,615,000円
合計 17,252,000円

備考

備考
千円以下切り捨てによる差異により収⼊「(2)補助⾦確定額」と⽀出研究費(内訳) 「合計」が異なっています。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-