文献情報
文献番号
202008014A
報告書区分
総括
研究課題名
全国がん登録の利活用に向けた学会研究体制の整備とその試行、臨床データベースに基づく臨床研究の推進、及び国民への研究情報提供の在り方に関する研究
課題番号
19EA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
平田 公一(北海道公立大学法人札幌医科大学 医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
研究分担者(所属機関)
- 井本 滋(杏林大学医学部外科)
- 海野 倫明(東北大学 大学院医学系研究科)
- 大家 基嗣(慶應義塾大学医学部泌尿器科)
- 岡本 高宏(東京女子医科大学 医学部 内分泌外科)
- 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究院 食道胃腸外学)
- 加藤 則人(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
- 賀本 敏行(京都大学 医学研究科)
- 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科・リハビリテーション科)
- 菊地 栄次(聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科学)
- 木下 義晶(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児外科)
- 弦間 昭彦(日本医科大学 医学部)
- 河野 浩二(公立大学法人 福島県立医科大学 消化管外科学講座)
- 小寺 泰弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 小林 宏寿(帝京大学医学部附属溝口病院外科)
- 佐治 重衡(公立大学法人 福島県立医科大学 医学部)
- 柴田 亜希子(山形大学放射線医学講座)
- 神野 浩光(帝京大学 医学部)
- 竹政 伊知朗(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座)
- 千田 雅之(獨協医科大学 呼吸器外科学講座)
- 藤 也寸志(九州がんセンター 消化管外科)
- 永瀬 智(山形大学 産科婦人科学講座)
- 成田 善孝(国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科 )
- 西田 俊朗(独立行政法人 地域医療機能推進機構 大阪病院)
- 袴田 健一(弘前大学 大学院 医学研究科 消化器外科学講座)
- 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
- 堀口 明彦(藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院消化器外科)
- 増井 俊彦(京都大学 医学研究科)
- 水島 恒和(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学/炎症性腸疾患治療学寄附講座)
- 吉野 一郎(千葉大学大学院 医学研究院 呼吸器病態外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
本邦のNation‐wideの臨床データベースとしてDPCデータ、保険診療データ、 がんに特化する事業として地域がん登録、院内がん登録、(全国)がん登録、学会等の主導する臓器がん登録がある。前5種の登録データによる分析では、がん医療の質評価には科学的に限界は明らかで、国内・外の視点からはこれまでに高い学術的貢献と評価された研究は極めて少ない。一方、多数の登録項目を設定する臓器がん登録データによる分析は多くの貢献を示す歴史が見られる。一層の精緻性が加わることで一層貢献度は高まることは明らかで、医療の質評価はもちろん、更に必要とされる新規医療の探索を可能とさせたい。国民のがん医療への期待と信頼が更に高まることに繋がろう。その視点から本研究では、がん登録データの利活用に向けた体制の整備、法の解釈に関する課題解決、学術組織間の有機的な体制構築の試案作成、現状での臨床研究を更なる国際貢献への組織間相互の情報交換、そして国民への貢献として成しうる事業の付加価値の探索、学術団体の登録事業実施に関する責任の一貫として「登録データ利活用研究内容の国民向けの紹介・公表」を目的とする。
研究方法
「固形癌のがん診療ガイドライン公表し、臓器がん登録事業を経験のある学術団体」の登録事業担当役員あるいは疾病登録事業に精通する学術団体理事長あるいは当該領域に精通する研究者に研究分担者を担って頂き、更に研究支援者として研究協力者の推薦を頂き、研究組織を構成している。研究初年度と2年目に於いて、(1)全国がん登録の臓器がん登録への利活用の課題と研究班として将来に向けた提言、(2)臓器がん登録について、第三者機関による登録と分析の委託状況、(3)登録データを利活用した臨床研究の効用とその貢献状況、(4)臓器がん登録として通年登録研究と短期登録研究の意義、(5)研究実施組織の責務の一貫として、研究内容の紹介とその公表体裁の提案。(6)現状の登録項目における診療領域の偏りの確認とその打開策の検討、を行った。臓器別学術団体の現状動向の把握と検討依頼内容を分析するとともに、3種のワーキンググループ(WG)を構成し、以下の課題別に研究を行った。WGⅠ:全国がん登録の予後データの臓器がん登録への活用意義と課題、打開策の提案、WGⅡ:学術団体の登録事業上の責務と姿勢の公表、WGⅢ:臓器がん登録項目内容の偏り状況とその解消策の検討、である。併せて臨床データベースを用いた臨床研究の国際貢献、国内貢献に関し代表的状況を把握することとした。
結果と考察
具体的研究結果は“総括研究報告書内の「C.研究結果」”に詳細に記載されている。以下にその概要を列挙する。①登録事業を実施する学術団体のほぼ全ての『がん登録』の実態を把握しておらず、利活用に向けての行政への働きかけが重要との認識に至った。研究者には周知に尽力を頂いた。オプトイン体制に無い組織に於いては利活用が出来ぬことが周知された。いずれの組織もオプトイン体制の導入は困難との状況を確認し合った。②登録事業の跡の在る20種以上の学術団体、約30種の固形癌領域について登録体制の実態把握を行った。その結果、希少がん領域(今回の対象は十二指腸癌とGISTの2領域)を除くがん種については全て通年登録を実施していた。非実施の二領域については財務的困難に由来する結果である。③研究分担者の関与せぬものの“がん”に関するガイドラインを発刊する組織にあっては全ては登録事業は非実施であった。④「全国がん登録の利活用」については、神経内分泌腫瘍領域のみが予定していた。⑤登録・分析体制、登録事業運営については、学会間で多様性が伺われ、在り方について検討が必要との確認に至った。背景の基本には、財務的あるいは人材的課題の学会間格差が大きい為と推定された。⑥市民向けの研究情報を提供する学会は全くなく、学会組織横断的に市民向け公表体制の確立を社会に示すことが望ましいとの合意に至った。
結論
7種の大研究項目と各大項目内の3~6種の小研究項目については、いずれも二年目迄の研究目標をほぼ達成できた。臓器がん登録の通年実施については、予定していた全ての組織で一定基準を備えた登録体制が確認された。但し、登録・分析・公表に関する規定が完備された学術団体は無いと推察されている。その中で、長期間の実績を有し、かつ充実した体制を有する組織にあっては研究業績内容も高いレベルを有する傾向にあった。国際的に評価の高い業績を有する等の貢献度と組織体制の充実度とは関係は不明な傾向であった。全国がん登録データの活用、一般市民向けの研究公表の在り方、については一定の方向性としての結論が得られ、三年目研究で具体的活動として結び付けることとなった。研究二年目を終え、総じて予定研究は順調に展開できたと評価し得た。
公開日・更新日
公開日
2021-06-16
更新日
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