文献情報
文献番号
202008012A
報告書区分
総括
研究課題名
全国がん登録情報で得られる乳がん・卵巣がん・子宮体がんの発症率と胚細胞系列変異との統合解析による累積リスク評価系の構築
課題番号
19EA1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
白石 航也(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 河野 隆志(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
- 加藤 友康(国立がん研究センター(研究所および東病院臨床開発センター)その他部局等)
- 内藤 陽一(国立がん研究センター東病院 先端医療科)
- 片野田 耕太(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計・総合解析研究部)
- 口羽 文(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,890,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、全国がん登録で得られる年齢層別での発症率などの情報を活用することで、①乳がん、卵巣がん、子宮体がんにおける年齢層別での発症率を算出、②年齢層別でのBRCA胚細胞系列変異をもつ場合の発症リスクを算出する、③年齢層別のがん罹患率とBRCA1やBRCA2胚細胞系列変異などを伴う日本人乳がん・卵巣がん・子宮がん患者の累積もしくは絶対リスクを算出する。これらの解析を通して、日本人におけるBRCA1/2に対する発症リスクを明らかにする。
研究方法
国立がん研究センターが中心となり収集された乳がん、卵巣がん、子宮体がん症例とバイオバンクジャパンにて収集された卵巣がん、子宮体がん症例 14,239例に対して、遺伝性腫瘍に関わる11遺伝子もしくは25遺伝子の全エクソンに対するターゲットシークエンスを実施した。これらのゲノムデータを用いて、検出されたバリアントを評価した。7179例の乳がん症例において、ToMMoなどの日本人一般集団において1%以下で認められた5,312バリアントを研究対象とした。この中よりACMG基準に基づき、病的バリアントを選出した。
結果と考察
乳がん・卵巣がん症例の絶対・累積リスク算出に必要な診療情報の収集とゲノム情報の統合を行うため、既取得ゲノムデータに対するアノテーション(病的バリアントの有無)を実施した。具体的には、ClinVarに登録されているACMG基準情報の他に、QCIを用いたアノテーションも利用した。BRCA2遺伝子に病的バリアントが認められたのが163例、BRCA1遺伝子に病的バリアントが認められたのが92例であった。卵巣がん症例に着目した場合、BRCA2遺伝子に病的バリアントが認められたのが57例、BRCA1遺伝子に病的バリアントが認められたのが104例であった。このことから、一般集団の乳がん、卵巣がん症例には5-10%が遺伝性腫瘍であることが分かった。得られたデータを元に、引き続き、第一近親者に乳がんもしくは卵巣がんを発症した症例並びに発症年齢をもとにした絶対リスク評価系について検討を進めている。
結論
今回の解析結果から、遺伝性腫瘍が一般乳がん・卵巣がんにおいて5-10%占められており、この結果は今までの疫学研究と大きく異ならない結果であった。したがって、日本人における散発的な乳がん・卵巣がん症例からなる集団と考えられ、本研究の解析が実施できることを確認した。来年度は、子宮体がんについて、解析を進めるとともに、複数のコントロール集団と対比した最適なリスクモデルの構築を進める予定である。来年度にその成果を報告する予定である。
公開日・更新日
公開日
2021-09-13
更新日
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