がん診療連携拠点病院等における医療提供体制の均てん化のための評価に既存資料を活用する

文献情報

文献番号
202008010A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等における医療提供体制の均てん化のための評価に既存資料を活用する
課題番号
H30-がん対策-一般-009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮代 勲(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森島 敏隆(大阪国際がんセンター がん対策センター)
  • 中田 佳世(山田 佳世)(大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
  • 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
  • 小山 史穂子(大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
  • 大川 純代(大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
  • 荒牧 英治(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構)
  • 若宮 翔子(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 がん診療連携拠点病院等(以下、拠点病院)における医療提供体制の均てん化のための評価に関し、既存資料を活用した効率的なモデルを示すことを目標とする。大阪府の拠点病院(平成30年度65医療機関)を対象に、(1)医療機関の比較、(2)実地調査を行う。質的量的に優位性をもつ大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージすることで、単独のデータベースでは実施困難な評価、例えば医療機関の背景の違いを考慮した比較等、適切な評価のあり方を示す。また、現況報告書の信頼性をあげるという視点から、実地調査の負担軽減に繋げる。
研究方法
(1)医療機関の比較
 大阪府がん診療連携協議会がん登録・情報提供部会(研究代表者が部会長)において、大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージした連結データベースを作成する。都道府県がん診療連携協議会がん登録部会が実施するQI(quality indicator)研究と比較して、複数年を扱う点、地域がん登録情報による生存率を扱う点、大阪府だけで多くの拠点病院の比較が可能で都道府県間の違いを考慮しなくてもよい点が優位点である。
(2)拠点病院の実地調査
 大阪府がん診療連携協議会会長(都道府県がん診療連携拠点病院総長)のもと、大阪府担当課、協議会の各部会長、同じ二次医療圏の医療機関の管理職、患者会から構成される拠点病院を対象とした訪問を実施している。好事例等の情報収集と課題の把握等を行うとともに、拠点病院間の情報共有や課題への改善策の検討を通して、府内全体のがん診療の質の向上を図ることを目的としている。現地見学と医療機関による概要説明に2時間を用い、診療体制、緩和ケア、タバコ対策、情報提供体制、地域連携、がん登録を確認事項としている。現況報告書は拠点病院の指定要件の確認に重要な資料で、信頼できる報告であることが前提であるが、矛盾や実態と異なる場合も珍しくはない。
結果と考察
 平成30年度、2010-15年診断例を対象に、36の拠点病院が参加する大阪府がん登録(地域がん登録)・DPC連結データベース(178,524例)を整備した。令和1年度は、2013-15年診断例を対象に、36のうち31の拠点病院が参加する院内がん登録を追加連結したデータベース(120,053例)を整備した。大阪府がん登録による従来の分析を行うとともに、整備できた連結データベースを用い、単独のデータベースでは実施困難な分析を行った。令和1年度、情報科学分野の研究分担者を加えて新たな研究課題にも取り組み、最終年度の令和2年度は、研究者都合による研究分担者の減員にともない、一定の成果達成が見込めない課題を整理し、英文論文等の成果公表の促進を図った。
 大阪府がん登録を用いた分析としては、医療機関治療件数と生存率との関連、医療機関種と生存率の関連などを示した。連結データベースを用いなければ実施困難な分析としては、医療機関の背景の違いを考慮した比較分析において、年齢、性、ステージだけでなく、併存疾患とADLも施設・地域間で生存率を測定・比較するときのリスク調整因子として使えることを示した。ソーシャルメディアを用いた分析では、QAサイト等が医学的な悩みの膨大なデータとなる可能性があることが示唆された。通院時間の分析では、医療施設ごとに特定の時間内で通院可能な鉄道駅を可視化した。
 大阪府がん診療連携協議会として、令和1年度末に大阪府内訪問を再開した(2巡目)。大阪府の新たな指定は令和2年度からとなることから、国指定の拠点病院のうち5医療機関を訪問し、従来の確認事項に加え、院内がん登録全国集計・生存率集計を基にした意見交換を行った。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大抑制の観点から令和2年度の現地訪問は行えず、再開の目途がたたない社会状況にある。令和1年度から「現況報告書入力システム」を試作しており、現況報告書の信頼性をあげ、提出側である医療機関と収集側である行政の負担を軽減し、利用者である府民に遅滞なくより正確な情報を提供するための新しい仕組みとして設計している。現況報告書の信頼性をあげるという観点から実地調査の負担軽減をはかる本研究の取り組みがより重要になると考えている。
結論
 がん診療連携協議会の枠組みの利用や生存率に関する適切な比較まで行うことのできるがん登録データを持つ都道府県は限られ、他の都道府県が実施できるようになるには年月を要する。可能な都道府県として先駆け的に実践し、ノウハウと比較可能な過去データを蓄積する取り組みは、日本全体の益になると考えている。
 今後も新たな感染症の流行は生じるであろう。現況報告書の信頼性をあげるという観点から実地調査の負担軽減をはかる本研究の取り組みが、現在および今後の社会に対応し得る方向性だと考える。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-10-01

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202008010B
報告書区分
総合
研究課題名
がん診療連携拠点病院等における医療提供体制の均てん化のための評価に既存資料を活用する
課題番号
H30-がん対策-一般-009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宮代 勲(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森島 敏隆(大阪国際がんセンター がん対策センター)
  • 中田 佳世(山田 佳世)(大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
  • 佐藤 亮(大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
  • 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
  • 小山 史穂子(大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
  • 大川 純代(大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
  • 荒牧 英治(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構)
  • 若宮 翔子(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構)
  • 藤井 誠(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 がん診療連携拠点病院等(以下、拠点病院)における医療提供体制の均てん化のための評価に関し、既存資料を活用した効率的なモデルを示すことを目標とする。大阪府の拠点病院(平成30年度65医療機関)を対象に、(1)医療機関の比較、(2)実地調査を行う。質的量的に優位性をもつ大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージすることで、単独のデータベースでは実施困難な評価、例えば医療機関の背景の違いを考慮した比較等、適切な評価のあり方を示す。また、現況報告書の信頼性をあげるという視点から、実地調査の負担軽減に繋げる。
研究方法
(1)医療機関の比較
 大阪府がん診療連携協議会がん登録・情報提供部会(研究代表者が部会長)において、大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージした連結データベースを作成する。都道府県がん診療連携協議会がん登録部会が実施するQI研究と比較して、複数年を扱う点、地域がん登録情報による生存率を扱う点、大阪府だけで多くの拠点病院の比較が可能で都道府県間の違いを考慮しなくてもよい点が優位点である。
(2)拠点病院の実地調査
 大阪府がん診療連携協議会会長(都道府県がん診療連携拠点病院総長)のもと、大阪府担当課、協議会の各部会長、同じ二次医療圏の医療機関の管理職、患者会から構成される拠点病院を対象とした訪問を実施している。好事例等の情報収集と課題の把握等を行うとともに、拠点病院間の情報共有や課題への改善策の検討を通して、府内全体のがん診療の質の向上を図ることを目的としている。現地見学と医療機関による概要説明に2時間を用い、診療体制、緩和ケア、タバコ対策、情報提供体制、地域連携、がん登録を確認事項としている。現況報告書は拠点病院の指定要件の確認に重要な資料で、信頼できる報告であることが前提であるが、矛盾や実態と異なる場合も珍しくはない。
結果と考察
 本研究班では、3年計画で、①拠点病院の背景の違いを考慮した比較等、単独データベースでは実施困難な評価を行うための取り組み、②実地調査を実施するとともに、人的、時間的、予算的な負担の大きい実地調査の負担軽減のために現況報告書の信頼性をあげる取り組みを「期待される効果」として掲げ、計画を進めてきた。評価には患者の視点も取り入れることが重要であることから、令和1年度、情報科学分野の研究分担者を加えて新たな研究課題にも取り組み、最終年度の令和2年度は、研究者都合による研究分担者の減員にともない、一定の成果達成が見込めない課題を整理した。
 平成30年度、2010-15年診断例を対象に、36の拠点病院が参加する大阪府がん登録(地域がん登録)・DPC連結データベース(178,524例)を整備した。令和1年度は、2013-15年診断例を対象に、36のうち31の拠点病院が参加する院内がん登録を追加連結したデータベース(120,053例)を整備した。大阪府がん登録による従来の分析を行うとともに、連結データベースを用い、単独のデータベースでは実施困難な分析を行った。本研究班でリンケージ・データベースを実際に構築し、単独データベースやランダム化比較試験では困難な分析を実現したことが、臨床医との共同研究の増加や継続的な英文論文等の情報発信に繋がっている。
 大阪府がん診療連携協議会が行っていた拠点病院訪問を平成29年度末までに65全てに実施し、指定要件更新のタイミングの平成30年度は、近隣県の都道府県がん診療連携拠点病院を訪問して意見を交換、令和1年度末に大阪府内訪問を再開した(2巡目)。大阪府の新たな指定は令和2年度からとなることから、国指定の拠点病院のうち5医療機関を訪問し、従来の確認事項に加え、院内がん登録全国集計・生存率集計を基にした意見交換を行った。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大抑制の観点から令和2年度の現地訪問は行えず、再開の目途がたたない社会状況にある。令和1年度から「現況報告書入力システム」を試作しており、現況報告書の信頼性をあげ、提出側である医療機関と収集側である行政の負担を軽減し、利用者である府民に遅滞なくより正確な情報を提供するための新しい仕組みとして設計している。
結論
 がん診療連携協議会の枠組みの利用や生存率に関する適切な比較まで行うことのできるがん登録データを持つ都道府県は限られ、他の都道府県が実施できるようになるには年月を要する。可能な都道府県として先駆け的に実践し、ノウハウと比較可能な過去データを蓄積する取り組みは、日本全体の益になると考えている。
 今後も新たな感染症の流行は生じるであろう。現況報告書の信頼性をあげるという観点から実地調査の負担軽減をはかる本研究の取り組みが、現在および今後の社会に対応し得る方向性だと考える。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202008010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
活用し得る既存データベースは少なくないが、リンケージを想定していないのが実情で、リンケージには個人情報保護等のクリアすべき課題が多い。本研究班で、大阪府がん登録等による従来の分析を行うとともに、リンケージ・データベースを実際に構築し、単独データベースやランダム化比較試験では困難な分析を実現したことが、臨床医との共同研究の増加や継続的な英文論文等の情報発信に繋がっている。
臨床的観点からの成果
本研究班では、①拠点病院の背景の違いを考慮した比較等、単独データベースでは実施困難な評価を行うための取り組み、②実地調査を実施するとともに、人的、時間的、予算的な負担の大きい実地調査の負担軽減のために現況報告書の信頼性をあげる取り組みを実践した。背景の違いを補正しても問題が存在する医療機関を視覚的に示すことで、重点的に調査する対象を選別できる。また、評価には患者の視点も取り入れることが重要であることから、情報科学分野の研究分担者を加えて新たな研究課題にも取り組んだ。
ガイドライン等の開発
がん登録推進法のもとで始まったがん登録情報の利用における課題の共有と解決方法等を共に検討したいとの近隣府県からの要望に応え、広域ブロック地域がん登録会議(12府県)を開催、事前アンケートの情報を共有した。結果をふまえ、日本がん登録協議会を通じて全国アンケートを実施し、学術集会の指定セッションおよび和文論文で公表した。また、初年度実施の小児がん患者家族ニーズに関するアンケート調査は、モニタリング指標の1つとして、その後も継続実施されている。
その他行政的観点からの成果
初年度、大阪府がん診療連携協議会の有志による現況報告書に関する課題出しのワーキングを開催し、薬物療法のべ患者数などは他県や同じ大阪府内でも大きく数値が異なることが明らかになるとともに、薬物療法のべ患者数の算出がいかに現場で難しいかの情報共有がなされた。実患者数を加えて報告することが、のべ患者数に関する検討に役立つことがわかり、提案内容の一部は大阪府への現況報告書提出時の資料に反映され、令和1年度の拠点病院等の指定要件の確認の際に活用された。
その他のインパクト
最終年度、本研究班の現況報告書入力システムの取り組みに関する説明を厚労省から求められ、訪省した。今後も新たな感染症の流行は生じるであろう。現況報告書の信頼性をあげるという観点から実地調査の負担軽減をはかる本研究の取り組みが、変化する社会に対応し得る方向性だと考える。がん診療連携協議会の枠組みの利用や生存率に関する適切な比較まで行うことのできる都道府県は当面限られるが、先駆け的に実践し、ノウハウと比較可能な過去データの蓄積する取り組みは、日本全体の益になると考えている。

発表件数

原著論文(和文)
6件
総合研究報告書別紙4研究成果一覧および2021-23年追加分
原著論文(英文等)
47件
総合研究報告書別紙4研究成果一覧および2021-23年追加分
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
各年度研究報告書別紙3および2021-23年追加分
学会発表(国際学会等)
7件
各年度研究報告書別紙3および2021-23年追加分
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
「ガイドライン等の開発」、「その他行政的観点からの成果」の項を参照。
その他成果(普及・啓発活動)
0件
ウェブサイト「大阪がん情報」(https://oici.jp/ocr/)にて公開。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2024-05-31

収支報告書

文献番号
202008010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,943,500円
人件費・謝金 0円
旅費 76,480円
その他 1,980,020円
間接経費 1,200,000円
合計 5,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
2021-11-01