薬剤性肺障害の発現状況の国際比較に関する研究

文献情報

文献番号
200735056A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤性肺障害の発現状況の国際比較に関する研究
課題番号
H19-医薬-一般-019
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
久保 惠嗣(信州大学医学部内科学第一講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 翔二 (日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍内科部門)
  • 河野修興 (広島大学医歯薬学総合研究科分子内科学(第二内科))
  • 太田 正穂(信州大学医学部法医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内外で使用される薬剤について、薬剤性肺障害の発生頻度につき国際間で比較をおこない、民族間での薬剤性肺障害に対する感受性の有無、薬剤性肺炎におけるKL-6などの血清マーカーの意義、薬剤性肺障害の発生に関する遺伝的研究をおこなう。
研究方法
ゲフィチニブによる急性肺障害・間質性肺炎(ILD)の発生頻度を論文および公的な報告書を検索し、日本、台湾、欧米で比較した。
薬剤性肺炎の最も重篤な病理像であるびまん性肺胞障害(DAD)を来たす薬剤を、PNEUMOTOX (http://www.pneumotox.com)によって論文検索した。
ゲフィチニブ治療を受けた非小細胞肺癌76例を対象として、薬剤性肺炎を発症した6例(7.9%)でのKL-6の推移と治療効果、予後について検討した
日本人における薬剤性肺障害の遺伝学的要因を解明するためのストラテジーの作成、文献的考察を行った。
結果と考察
ゲフィチニブによるILDの発生頻度は、欧米では、0例/216例(0%)、5例/891例(0.6%)、台湾では、1例/76例(1.3%)、日本では、193例/3,322例(5.81%) 、59例/1,482例(3.98%)、14例/244例(5.7%)であった。我が国での頻度は明らかに高い。
DADを惹起する薬剤が22種列挙され、ゲフィチニブ、ボルテゾミブは日本からの高い報告率を示した。
ゲフィチニブによる薬剤性肺炎が発症した6例の検討で、血清KL-6値が上昇しなかった3例は治療に反応し改善した。一方、 KL-6が経過中に上昇した3例は投与中止並びにステロイドパルス療法などの治療に反応せずに死亡した。剖検では新旧のDADが混在するという従来のゲフィチニブによるILDに合致する所見であった。新しいDAD組織で上皮細胞においてKL-6蛋白が強く染色された。
遺伝子学的な検索の幾つかの方法が示唆された。
結論
わが国でのゲフィチニブによるILDやボルテゾミブによるDADの発生頻度は欧米に比べて明らかに高頻度である。
ゲフィチニブ治療開始後、血清KL-6値が上昇する症例はゲフィチニブによる致死的な薬剤性肺障害を発症している可能性が高く、直ちにゲフィチニブの投与の中止を検討する必要がある。
薬剤性肺障害、特に薬剤性(間質性)肺炎の発生頻度に民族的相違をもたらす遺伝要因や同一民族間での遺伝要因についての幾つかの方法論が呈示された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-