文献情報
文献番号
202008007A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害患者の低いがん検診受診率を向上させる勧奨法の開発および標準的ながん治療・ケアへのアクセスを改善するための課題の把握と連携を促進する仕組みの構築
課題番号
H30-がん対策-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 正俊(国立大学法人島根大学 医学部精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 山田 了士(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 )
- 内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院支持療法開発部門)
- 藤森 麻衣子(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
- 樋之津 史郎(札幌医科大学 医学部 医療統計学)
- 藤原 雅樹(岡山大学 大学病院)
- 堀井 茂男(公益財団法人慈圭会 慈圭病院)
- 児玉 匡史(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター 医療部)
- 宮路 天平(東京大学大学院医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,776,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
精神障害者は、がんによる死亡率が一般人口よりも高いことが示されている。精神障害者のがん死亡率が高い背景の1つとして、がん検診受診率が低い、診断の遅れや標準的な治療を受けることができない等、がんの予防、診療における格差があることが報告されている。そこで、研究1では、精神障害者のがん検診受診率の向上を目的として、かかりつけ精神科臨床場面におけるがん検診受診勧奨法を開発する。研究2では、がんを合併した精神障害者のがん治療、診断およびケアにおける課題を広く抽出する調査を行う。
研究方法
研究1:1年目は、文献をレビューした上でがん検診受診勧奨法を作成し、パイロット研究を実施して実施可能性と予備的な有効性を明らかとした。2年目である2019年度は、1年目に開発した、かかりつけ精神科医療機関における複合的ケースマネジメントによる個別のがん検診受診勧奨法の有効性を検証するために無作為化比較試験を完了した。3年目である2020年度は、無作為化比較試験のデータ解析を実施し、得られた結果を公表するための論文を作成した。
研究2:1年目は、精神障害者のがんの診断、治療およびケアに関する自由記述アンケート調査を実施し、調査票の配布、回収までを行った。2年目である2019年度は抽出された意見の質的解析を進め、がん拠点病院における精神障害者の受け入れ、治療体制の課題をはじめ、わが国における精神障害者のがんの診療における具体的課題を明らかとした。3年目である2020年度は、明らかにした具体的課題がどの程度問題であるかを定量するための質問紙調査を実施した。あわせて、課題と解決方法への理解を促すための症例集を作成した。
研究2:1年目は、精神障害者のがんの診断、治療およびケアに関する自由記述アンケート調査を実施し、調査票の配布、回収までを行った。2年目である2019年度は抽出された意見の質的解析を進め、がん拠点病院における精神障害者の受け入れ、治療体制の課題をはじめ、わが国における精神障害者のがんの診療における具体的課題を明らかとした。3年目である2020年度は、明らかにした具体的課題がどの程度問題であるかを定量するための質問紙調査を実施した。あわせて、課題と解決方法への理解を促すための症例集を作成した。
結果と考察
研究1:2020年6月3日に第1例目を登録し、9月9日に目標症例数の172例に到達した。そのうち1名は研究同意を撤回し、1名は割付後不適格が判明したため、解析対象は170名となった。予定通り、2020年1月~3月末において対象者に対する追跡インタビュー調査も実施した。また、介入をケースマネージャーとして実施した医療者に対して、実装アウトカム(本勧奨法の受容性、適切性、実施可能性)を評価するためのインタビューも実施した。6月にデータ固定を終え、主たる結果の解析が10月に完了した。現在、主論文を査読付き英文誌に投稿中である。
本研究は、通常外来にあわせて行ったが、理想的環境下で介入法の効能を検証した試験である。今後、追跡調査インタビューの結果を解析し、勧奨法のどのコンポーネントが効果に重要かなど、実臨床下での実装に向けて有用な情報を明らかにする。その結果も踏まえ、次のステージとして、実臨床下で介入法の修正(適応)、有効性を検証する実装研究へと進め、普及を目指す取り組みが望まれる。
研究2:がん医療従事者を対象とした調査は、17病院(89.5%)の協力が得られ、661名にアンケートを配布し、388名(58.7%)が回答した。精神科病院医療従事者を対象とした調査は、20病院(87%)の協力が得られ、348名にアンケートを配布し、263名(75.6%)が回答した。現在、それぞれの調査について解析を進め、論文作成中である。本研究によって、精神障害者のがん診療における課題の解決に取り組んでいくにあたっての基礎となるデータが得られた。課題は多岐にわたり、どの課題に優先的に取り組む必要があるかは医療機関ごとに異なる可能性がある。本研究で使用した調査票は、各医療機関で課題を評価するためのツールとして利用できる。今後、それぞれの医療機関で課題を評価し、解決のための取り組みを実践し、好事例を収集していくことが望まれる。
症例集の作成については、1-2年目で実施した調査から抽出された課題、解決方法の内容に基づき、精神科リエゾン経験の豊富な研究者がこれまでの経験を基に、教育資材として架空症例集を作成した。今後、各医療機関で解決方法を具体的に検討する際の資材として活用できる。
本研究は、通常外来にあわせて行ったが、理想的環境下で介入法の効能を検証した試験である。今後、追跡調査インタビューの結果を解析し、勧奨法のどのコンポーネントが効果に重要かなど、実臨床下での実装に向けて有用な情報を明らかにする。その結果も踏まえ、次のステージとして、実臨床下で介入法の修正(適応)、有効性を検証する実装研究へと進め、普及を目指す取り組みが望まれる。
研究2:がん医療従事者を対象とした調査は、17病院(89.5%)の協力が得られ、661名にアンケートを配布し、388名(58.7%)が回答した。精神科病院医療従事者を対象とした調査は、20病院(87%)の協力が得られ、348名にアンケートを配布し、263名(75.6%)が回答した。現在、それぞれの調査について解析を進め、論文作成中である。本研究によって、精神障害者のがん診療における課題の解決に取り組んでいくにあたっての基礎となるデータが得られた。課題は多岐にわたり、どの課題に優先的に取り組む必要があるかは医療機関ごとに異なる可能性がある。本研究で使用した調査票は、各医療機関で課題を評価するためのツールとして利用できる。今後、それぞれの医療機関で課題を評価し、解決のための取り組みを実践し、好事例を収集していくことが望まれる。
症例集の作成については、1-2年目で実施した調査から抽出された課題、解決方法の内容に基づき、精神科リエゾン経験の豊富な研究者がこれまでの経験を基に、教育資材として架空症例集を作成した。今後、各医療機関で解決方法を具体的に検討する際の資材として活用できる。
結論
研究1:3年目である今年度は、無作為化比較試験の主たる解析を完了し、論文投稿を行った。今後は実臨床下への実装に向けた研究を進め、開発したがん検診受診勧奨法の普及につなげる。
研究2:3年目である今年度は、精神障害者のがん診療における課題を定量するための選択式アンケートを実施し、課題の優先度を明らかとした。結果について、今後論文・学会発表を行う。今後は整理した課題をもとに、医療機関の個別性に応じた取り組みを具体的に検討・実施していく必要がある。
研究2:3年目である今年度は、精神障害者のがん診療における課題を定量するための選択式アンケートを実施し、課題の優先度を明らかとした。結果について、今後論文・学会発表を行う。今後は整理した課題をもとに、医療機関の個別性に応じた取り組みを具体的に検討・実施していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2021-06-02
更新日
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