がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
202008003A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究
課題番号
H30-がん対策-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,538,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においてがん検診は、健康増進法に基づく健康増進事業として、市区町村が実施主体となり住民に提供されてきたが、近年職域においてがん検診を受診する者が増えている。職域におけるがん検診(職域検診)は、市区町村におけるがん検診(住民検診)とは異なり、科学的根拠に基づかないことに加え、精密検査の実態把握や精度管理が組織的に行われてこなかった。住民検診は、死亡率減少効果のある科学的根拠に基づいており、精度管理の仕組みがすでに整備されているが、職域検診についてはこのいずれも欠いていることから、効果的ながん検診が提供されているとはいえない状況にある。
本研究では3年の研究期間内に、住民検診においては精度管理水準のさらなる改善のために現在の手法の改善策を開発し、職域検診においてはがん検診のデータ把握とそれに基づく精度管理手法を開発することに加え、将来的には住民及び職域検診の全体に対する精度管理法を確立するための検討を行うことを目的とする。
研究方法
〇職域検診のデータ収集及び解析
全国健康保険協会の研究協力により、がん診断前に受診したと考えられる医療コードを抽出することで要精検率、精密検査受診率などを特定する手法を開発する。また、研究協力保険者及び事業主より、個別のヒアリングを行う。

〇住民検診の精度管理手法の開発及び精度管理データの解析
精度管理指標(チェックリスト及びプロセス指標基準値)を基に、全国の精度管理水準を把握し、改善度を測る。プロセス指標基準値は、理想的な条件において達成すべき値を算定し、受入れ可能な値となるよう調整を検討する。
〇新型コロナウイルス感染症に伴うがん検診受診状況の変化
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策としての影響により、2020年4-5月にかけてがん検診受診者数が減少したが、日本全体を反映する即時性のあるデータ補足システムはないため、協力医療機関にデータ提供を依頼し、取りまとめた上で、厚生労働省「がん対策推進協議会」及び「がん検診のあり方に関する検討会」に報告する。
結果と考察
〇職域検診のデータ収集及び解析
1.レセプトを用いたがん患者特定手法の検討
JMDCデータによるがん罹患率の推計は、がん検診の対象となる5つのがん種で妥当性の高い結果が得られた。今後は、他のデータへの汎用性などを検討した上で、実用化を目指す。
2.職域におけるがん検診の実態把握
協力保険者において、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」のチェックリスト項目を全て回答できた保険者は少数であった。今後は意見を集約し改訂について検討する必要がある。
3.職域検診全般における対応すべき問題点
研究分担者および研究協力保険者・事業主より以下問題点が指摘された。
①「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の現状に則した改定・普及啓発
②データフォーマットの統一
③健診・検診担当者のリテラシー向上
④ほかのヘルスデータとの整合性・統合
⑤結果を把握するシステムの構築

〇住民検診の精度管理手法の開発及び精度管理データの解析
「事業評価のためのチェックリスト」の調査結果から主な課題として、個別検診の体制整備が著しく遅れていること、市区町村ともに事業評価のフィードバックが出来ていないことなどが挙げられた。これらの項目については今後自治体の優良事例を収集するとともに、体制整備上のバリアの把握と解決策を検討していく。
住民検診における対応すべき問題点及び今後の課題を示す。
①個別検診における精度管理水準の向上
②生活習慣病検診等管理指導協議会の活性化
③指針改定における修正点
④精検受診率向上
⑤指針外検診の非推奨

〇新型コロナウイルス感染症に伴うがん検診受診状況の変化
1. 新型コロナウイルス感染症の影響によりがん検診受診者数は、2020年4-5月は対前年同月比でおよそ2-5割減少したが、2020年度の対前年比ではおよそ1-3割減少した。
結論
職域検診においては、保険者の保有するレセプトデータを用いてがん患者を適切に特定する手法を開発した。さらに今後ほかのデータでの妥当性を検討した上で実用化を目指す。職域検診の実態把握については、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が現状では活用されていないため、修正および改定について検討する必要がある。
住民検診においては、プロセス指標の新基準値を厚生労働省に報告した後に自治体への周知し、さらなる精度管理水準の向上を目指す。
新型コロナウイルス感染症の影響によりがん検診受診者数は年度による比較では1-3割の減少がみられた。今後の受診者数の動向やがん罹患者数・死亡者数の推移を注視し、適切な受診勧奨のあり方を検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202008003B
報告書区分
総合
研究課題名
がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究
課題番号
H30-がん対策-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においてがん検診は、健康増進法に基づく健康増進事業として、市区町村が実施主体となり住民に提供されてきたが、近年職域においてがん検診を受診する者が増えている。職域におけるがん検診(職域検診)は、検査方法や対象年齢が市区町村におけるがん検診(住民検診)とは異なり、科学的根拠に基づかないことに加え、精密検査の実態把握や精度管理が組織的に行われてこなかった。
本研究では、住民検診においては精度管理水準のさらなる改善のために現在の手法の改善策を開発し、職域検診においてはがん検診のデータ把握とそれに基づく精度管理手法を開発することに加え、将来的には住民及び職域検診の全体に対する精度管理法を確立するための検討を行うことを目的とする。
研究方法
〇職域検診のデータ収集及び解析
全国健康保険協会の研究協力により、医療コードを抽出することで要精検率、精密検査受診率などを特定する手法を開発する。また、研究協力保険者及び事業主より、個別のヒアリングを行う。

〇住民検診の精度管理手法の開発及び精度管理データの解析
精度管理指標を基に、全国の精度管理水準を把握し改善度を測る。プロセス指標基準値は、理想的な条件において達成すべき値を算定し、受入れ可能な値となるよう調整を検討する。

〇新型コロナウイルス感染症に伴うがん検診受診状況の変化
新型コロナウイルス感染症の拡大防止策としての影響について、協力医療機関にデータ提供を依頼し、取りまとめた上で、厚生労働省に報告する。
結果と考察
〇職域検診のデータ収集及び解析
1.レセプトを用いたがん患者特定手法の検討
レセプトデータを用いたがん患者の抽出法について、より正確に汎用性のある方法が示された。JMDCデータによるがん罹患率の推計は、がん検診の対象となる5つのがん種で妥当性の高い結果が得られた。今後は、他のデータへの汎用性などを検討した上で、実用化を目指す。
2.職域におけるがん検診の実態把握
協力保険者において、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」のチェックリスト項目を全て回答できた保険者は少数であった。今後は意見を集約し改訂について検討する必要がある。
3.職域検診全般における対応すべき問題点
研究分担者および研究協力保険者・事業主の意見より挙がった、問題点を列記する。
①「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の現状に則した改定・普及啓発
②データフォーマットの統一
③健診・検診担当者のリテラシー向上
④ほかのヘルスデータとの整合性・統合
⑤結果を把握するシステムの構築

〇住民検診の精度管理手法の開発及び精度管理データの解析
1.精度管理手法の開発
プロセス指標の基準値について、理想的な条件において達成すべき値を算定し、受入れ可能な値となるよう改訂した。今後結果を「がん検診のあり方に関する検討会」に報告し、自治体への周知を検討する
2.精度管理データの解析および問題点の抽出
主な課題として、個別検診の体制整備が遅れていること、市区町村ともに事業評価のフィードバックが出来ていないことなどが挙げられた。今後自治体の優良事例を収集するとともに、体制整備上のバリアの把握と解決策を検討していく。
3.住民検診における対応すべき問題点
研究分担者より指摘のあった、住民検診における対応すべき問題点及び今後の課題を示す。
①個別検診における精度管理水準の向上
②生活習慣病検診等管理指導協議会の活性化
③指針改定における修正点
④精検受診率向上
⑤指針外検診の非推奨

〇新型コロナウイルス感染症に伴うがん検診受診状況の変化
1. 新型コロナウイルス感染症の影響によりがん検診受診者数は、2020年4-5月は対前年同月比でおよそ2-5割減少したが、2020年度の対前年比ではおよそ1-3割減少した。
結論
職域検診においては、保険者の保有するレセプトデータを用いてがん患者を適切に特定する手法を開発したが、ほかのデータでの妥当性を検討した上で実用化を目指す。「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が現状では活用されていないため、修正および改定について検討する必要がある。
住民検診においては、プロセス指標の新基準値を厚生労働省に報告した後に自治体への周知し、さらなる精度管理水準の向上を目指す。
新型コロナウイルス感染症の影響によりがん検診受診者数は年度による比較では1-3割の減少がみられた。今後の受診者数の動向やがん罹患者数・死亡者数の推移を注視し、適切な受診勧奨のあり方を検討する必要がある。
本研究は、がん検診の精度管理についての議論および新たな精度管理手法の開発などにより、日本における適切ながん検診の実施および質の向上の一助となったなるよう努めたが、長期的には、関連団体や研究班などが連携し情報やビジョンの共有を図ることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202008003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本におけるがん検診の精度管理に関して、問題点を抽出し方向性を示しており、研究の意義は大きい
臨床的観点からの成果
がん検診の精度管理を改善することにより、利益を最大化し不利益を最小化することが可能となるため、臨床分野に与える影響も大きいと考える
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
研究成果は、「がん検診のあり方に関する検討会」および「がん対策推進協議会」に適宜報告しており、行政的にも貢献をしている
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
研究成果は、「がん検診のあり方に関する検討会」および「がん対策推進協議会」に報告し、施策の反映における基礎資料として活用されている
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2023-07-04

収支報告書

文献番号
202008003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,799,000円
(2)補助金確定額
9,799,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,771,065円
人件費・謝金 1,004,064円
旅費 214,500円
その他 1,649,019円
間接経費 2,261,000円
合計 6,899,648円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-