生涯を通じた健康の実現に向けた「人生最初の1000日」のための、妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための研究

文献情報

文献番号
202007023A
報告書区分
総括
研究課題名
生涯を通じた健康の実現に向けた「人生最初の1000日」のための、妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための研究
課題番号
20DA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
荒田 尚子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター病院 周産期・母性診療センター母性内科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 隆(愛媛大学医学部)
  • 瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院 看護系研究科 国際看護学)
  • 前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,234,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

概要版(繰越課題)
胎児期から生後早期の環境が生涯を通じた健康に強く影響を及ぼすことから、「人生最初の1000日」の栄養状態の改善が重要である。一方で、妊娠してから女性の栄養や生活スタイルに介入しても、妊娠転帰に対する効果は限られていることから、プレコンセプションケアが重要となる。本研究では、妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための持続可能、発展可能なプラットホームの骨組みを開発する。
① 日本人と東アジア人を対象に、妊娠前の母親の体格および体重増加、妊娠前から妊娠中の栄養摂取状況に関する観察研究および介入研究における文献レビューを行った。やせのチベット人女性は米国医学研究所指針で推奨されている以上の妊娠中の体重増加が必要な可能性を示唆した論文が追加され、「子どもの健康と環境に関する全国調査」の公開論文から妊娠前および妊娠中の栄養摂取状況と出生児の予後の関連性がみられた。妊娠前からのバランスの良い食生活の実践と妊娠中の望ましい体重増加のための行動変容に繋がる啓発および栄養教育が必要である。(瀧本)
➁ 女性の行動変容を起こさせるウェブサイト等の新手法の開発に関する研究では、健康教育における行動変容の理論・モデルを用いた介入の効果についてスコーピングレビューを行い、14件の採択文献から、計7種類の行動変容理論・モデルが同定され、それらを使用した介入/プログラムの効果の範囲として、生活習慣の改善、疾患や予防行動の知識の向上、予防行動への意識・モチベーションの向上、自己効力感の向上、身体的・生化学的な改善の5領域に分類することができ、継続的な介入プログラムの重要性が示唆された。さらに、18歳から44歳までの一般女性のウェブ調査から自己効力感が強いほどヘルスリテラシーの行動・態度得点が高く、望ましい行動変容のためには自己効力感を高めることが重要と考えられた。さらに、妊娠前女性における健康行動の変容に関するスコーピングレビューでは、海外40件のランダム化比較試験と5件の研究を検討し、国外では栄養・食事に関するもの、妊孕性・健康情報の知識(性感染症を含む)、避妊方法、身体活動、葉酸の補給など11領域、国内における研究では4領域の介入/プログラムの効果の範囲と調査研究の評価指標の範囲が分類され、本邦におけるプレコンセプションケアの研究動向と今後の課題が明らかにされた。20代、30代妊娠前女性のフォーカスグループインタビューによって、20代の女性はインターネットやSNSを活用して健康に関する情報を得ており、30代の女性は妊娠やその後の女性としての健康を考えるといった特徴がみられ、それぞれの特性にあった介入策を検討する必要がある。(大田)
③ 既存の「妊娠・出産に当たっての適切な栄養・食生活に関する調査」(日本総合研究所)データ(計5000人の女性へのインターネットによるアンケート調査)を利用して、非妊娠時のBMI値に沿った妊娠可能年齢女性や妊産婦に向けた栄養・食生活に関する正しい情報提供のあり方を検討し、自身の栄養・食生活に興味をもって情報収集している女性の割合は、ふつう体格の女性よりもやせや肥満女性でむしろ高いが、肥満女性では関心や実践度が低く、意識改善から取り組む必要性がある。やせ女性では、推奨される食行動についての関心や意欲は相対的に低くはなく、具体的な実践方法について情報提供を行うことで行動変容を促す可能性が示唆された。(杉山)
④ プレコンセプション期女性の前向きコホート研究を開始し、地方都市コホートでは、今年度96名が参加し、インターネットコホートには3,796名が参加した。地方都市コホート参加者のベースライン調査ではやせの頻度が17%と高く、推定エネルギー摂取量と食事性葉酸の推定摂取量が少ないなど、国民健康・栄養調査と共通する結果が得られた。インターネットコホートの参加者は高学歴・高収入の者が多く、喫煙率も5.8%と低かったが、パートナーの喫煙率は31%であった。今後Time-to-Pregnancyを主要評価項目として追跡調査を行う。(前田)
⑤ 海外の妊娠前から妊娠、産後の栄養・健康に関する知識の普及とそれに伴う効果的な行動変容実施の現状を調査し、先進例である米国プレコンセプションケアイニシアティブのバービスト先生をお迎えしてプレコンセプションケア日米合同カンファレンスを開催(2020年12月12日)した。また、プレコンセプションケアの知識に関するコンテンツおよびリーフレットの開発を行った。海外の文献やウェブ調査、さらにヒアリング調査、カンファレンスの討論等から、プレコンセプションケアの介入効果は期待できるものの限定的であり、介入方法に関しては、さらなる検討が必要であることが明らかになった。(荒田)

公開日・更新日

公開日
2021-11-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202007023Z