医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究

文献情報

文献番号
202007014A
報告書区分
総括
研究課題名
医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究
課題番号
19DA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 美由紀(東京大学 医学部附属病院)
  • 藤尾 圭志(東京大学医学部附属病院  アレルギーリウマチ内科)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高井 泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)
  • 浜谷 敏生(慶應義塾大学 医学部 産婦人科)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学医学部 外科学(一般・消化器外科))
  • 山田 満稔(慶應義塾大学医学部産婦人科)
  • 渡邊 知映(昭和大学 保健医療学部)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学 外科学 乳腺・内分泌外科)
  • 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
  • 細井 創(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 杉山 一彦(広島大学病院 がん化学療法科)
  • 前田 嘉信(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科・リハビリテーション科)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
18,261,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、①日本の現状に応じた医学的適応による妊孕性維持、不妊治療の制度の構築、②妊よう性温存医療登録システムの運用による支援体制の強化、③がん・生殖医療看護師養成の方法の確立、④AIDに関する海外の制度や取り組みに関する調査、である。

研究方法
①-1生殖医療専門医のがん・生殖医療を実施するにあたっての課題、ニーズを抽出するために、日本産科婦人科学会ART登録施設614施設を対象とし、アンケート調査を行う
②日本産科婦人科学会に登録された全国123の妊孕性温存実施施設において、これまで妊孕性温存のために受診した約2,000症例について原疾患名(悪性腫瘍、免疫疾患、内分泌疾患等)、進行度、原疾患治療施設名、妊孕性温存実施施設名、治療内容、1年ごとの生死や生殖機能、妊娠の有無や出生児の情報などを、日本がん・生殖医療登録システム(https://database.j-sfp.org; JOFR)に入力していただき解析を行う。
③がん・生殖医療に関するがんと生殖の各専門性を有する看護師の意識調査を行う。
④本邦では提供配偶子を用いた生殖医療の基盤整備が遅れ、患者は海外への医療ツーリズムを余儀なくされている。また民法特例法案の附則三条に則り「出自を知る権利」への対応も喫緊の課題である。匿名提供の維持の可能性、非匿名提供へ移行する場合の問題点、出自を知る権利の尊重とドナー個人情報の開示の方法、それに必要なカウンセリング等の体制、児とドナーの不満点、ドナーリンキングなどについて、海外各国の現況を調査する。
結果と考察
①日本産科婦人科学会ART登録施設(生殖医療医)を対象とした調査を完了した。619施設のうち395施設(回収率63.8%)より回答を得た。2016年~2019年の実施件数の調査より、2011年~2015年を対象にした前回の調査結果に比し、治療件数が急速に増加していることがわかった。また、がん治療医の間でも原疾患の領域を超えて認識が広がっており、生殖医療医の側では、提供する治療法などが均質化している傾向にある。生殖医療医への調査結果から、長期保存への懸念、適応やCOS法決定に必要な医学的情報、公的情報へのアクセス、がん・生殖医療の知識を有する人材確保に対する要望 が明らかとなった。
②JOFR対象施設(妊孕性温存実施施設)153施設中、102施設で登録が開始された。順調に登録施設数がのび登録制度が走り出している。凍結検体によらない妊娠が相当数存在することも明らかとなっており、これまでの凍結実施数から見た調査では拾われてこなかった実状が明らかになっている。
③がん・生殖医療看護師OFNN養成のためのe-learning教材の作成を行った。昨年度収録したがん・生殖医療に関する総論に加えて、本年度はがん種別各論8分野について教材を作成中である。さらに、「カップルを対象としたがん治療の生殖への影響と受精卵凍結保存の説明の場面」を想定した介入の実際について、ロールプレイ教材のシナリオ作成を行った。
④本来海外視察を行う調査であったが、COVID-19パンデミックのため文献検索のみの調査となった。出自を知る権利とドナーの個人情報の守秘との間のバランスをどのように取るのか、社会や文化的背景により国ごとに異なり、また経時的にも対応が変化していることが明らかとなった。
結論
 2020年度について、海外視察を主とする④はCOVID-19パンデミックの影響を受けているが、他は概ね予定通り進捗している。次年度以降、①の解析結果を基にした教育資材の構築、②に関して得られたデータの解析、成果の還元、③に関してはe-learningの完成、それを用いた看護師の知識向上に関する研究へと進めていく。また④について引き続き各国の調査を進める。

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202007014Z