新たなソーシャルキャピタルを醸成しつつ母子の健康向上に寄与する情報発信手法の開発

文献情報

文献番号
202007008A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなソーシャルキャピタルを醸成しつつ母子の健康向上に寄与する情報発信手法の開発
課題番号
H30-健やか-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 瀧内 剛(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 中川 慧(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 八木 麻未(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 池田 さやか(国際医療福祉大学 三田病院 女性腫瘍センター・婦人科)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究)
  • 荒堀 仁美(大阪大学大学院医学系研究科 小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,272,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子供の健康は親に強く規定される。昔の母親は家庭や地域に支えられて健全な子育てを行っていた。現代の子育ては核家族化や対人関係の希薄化により、母親一人にその重責が集中し、これが母親の孤立化を生み、うつ、子供の不健康・虐待につながっていると考えられる。母親に適切な情報を届け、母親を他者との関係の中に置けるような環境の構築が喫緊の課題である。当研究では、現代の母親の子育て環境や情報収集・共有状況などを解析し、また子育てにおける孤独感についても検討する。さらに、この孤独感を軽減できる自治体からのメッセージの発出手法の開発を行う。すなわち、孤独感を軽減できるメッセージ内容とその発信方法の検討であり、特に後者では、オンラインメディアを媒体とすることで新たなソーシャルキャピタルの醸成を介して効果が高まるかどうかを検証する。
研究方法
(1) 子育て世代の母親における健康情報の収集・共有方法および自治体の医療健康情報・支援体制提供状況の調査
(2) 地域全体へのInstagramを利用した健康情報提供の有効性の評価
 大阪府高槻市において、2019年12月にInstagramを活用して地域子育て支援窓口の案内および孤独感を軽減する(自己効力感を高める)メッセージを発信したが、その後に行われた2020年1月~3月の4か月健診受診者に対してアンケートを行い、Instagram情報の認識度やその効果等を検証し、さらに、Instagramによる情報発信前の6月~8月の4か月健診受診者に行ったアンケートと比較検討した。
(3) 対象者個々へのオンラインメディアを利用した健康情報の提供の有効性の評価(新たなソーシャルキャピタルの醸成と健康行動に及ぼす影響)
→新型コロナウイルス感染拡大の影響で実施不可となり、厚労省担当課に事前相談の上、新型コロナウイルス感染拡大下における子育て世代の母親の生活環境・意識調査に変更した。
結果と考察
(1)子育て世代の母親における健康情報の収集・共有方法および自治体の医療健康情報・支援体制提供状況の調査
→2018年度に済み
(2)地域全体へのInstagramを利用した健康情報提供の有効性の評価
    SNS広告の認知率は8.6%であったが、子育てにおいて孤独を感じた母親は、孤独を感じていない母親に比して有意にSNS広告を認知していた率が高かった(p<0.01)。  Instagramによる情報発信前(2019年6月~8月)の4か月健診受診の母親に比して、Instagramによる情報発信後(2020年1月~3月)の4か月健診受診の母親では、子育てに孤独を感じる割合は低い傾向であり(8.1% v.s. 5.8%、p=0.19)、地域全体へのInstagramを利用した健康情報提供は有効である可能性が示唆されたが、統計的に有意とは言えなかった。
(4) 新型コロナウイルス感染拡大下における子育て世代の母親の生活環境・意識調査
2019年度に実施していた生後4ヶ月〜12ヶ月の子供をもつ母親を対象としたインターネット調査と比較する形で、同様の対象者に同様の質問を行い、子育てにおける新型コロナウイルス感染拡大の影響を評価した。子育てに関して気軽に相談できる相手がいない割合は増加傾向であった(12.1%→16.0%:p=0.086)。相談できる相手については、友人や近所の人がともに有意に減少していた(p=0.001、p=0.002)。子育てにおいて孤独を感じた割合も20.1%から24.6%に増加傾向を認めた(p=0.11)。 生後20ヶ月〜24ヶ月および32か月〜36か月の子供を持つ母親に対しても同様の質問をって子育てにおける新型コロナウイルス感染拡大の影響を調査したが、生後4ヶ月〜12ヶ月の子供をもつ母親と同様の傾向であった。
結論
 子育て中の母親の孤独感軽減を目指した地域全体へのInstagramを利用したメッセージ発出は有効である可能性が示唆されたが、統計的に有意とは言えなかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で解析に必要な症例数を確保できなかったことも一因と考えられた。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、子育てにおける情報入手が制限され、これまで以上に孤独を感じる割合が増加しているものと考えられた。SNSで情報を収集する傾向が強まっていたこともあり、自治体などからのSNSを介した適切な情報発信が、今、正に求められている。

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202007008B
報告書区分
総合
研究課題名
新たなソーシャルキャピタルを醸成しつつ母子の健康向上に寄与する情報発信手法の開発
課題番号
H30-健やか-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 小林 栄仁(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 松崎 慎哉(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 瀧内 剛(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 中川 慧(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 八木 麻未(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
  • 池田 さやか(国際医療福祉大学 三田病院 女性腫瘍センター・婦人科)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究)
  • 荒堀 仁美(大阪大学大学院医学系研究科 小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子供の健康は親に強く規定される。昔の母親は家庭や地域に支えられて健全な子育てを行っていた。現代の子育ては核家族化や対人関係の希薄化により、母親一人にその重責が集中し、これが母親の孤立化を生み、うつ、子供の不健康・虐待につながっていると考えられる。母親に適切な情報を届け、母親を他者との関係の中に置けるような環境の構築が喫緊の課題である。当研究では、現代の母親の子育て環境や情報収集・共有状況などを解析し、また子育てにおける孤独感についても検討する。さらに、この孤独感を軽減できる自治体からのメッセージの発出手法の開発を行う。すなわち、孤独感を軽減できるメッセージ内容とその発信方法の検討であり、特に後者では、オンラインメディアを媒体とすることで新たなソーシャルキャピタルの醸成を介して効果が高まるかどうかを検証する。
研究方法
(1)子育て世代の母親における健康情報の収集・共有方法および自治体の医療健康情報・支援体制提供状況の調査
(2)地域全体へのInstagramを利用した健康情報提供の有効性の評価
    大阪府高槻市において、2019年12月にInstagramを活用して地域子育て支援窓口の案内および孤独感を軽減する(自己効力感を高める)メッセージを発信し、その後に行われた2020年1月~3月の4か月健診受診者に対してアンケートを行い、Instagram情報の認識度やその効果等を検証し、さらに、Instagramによる情報発信前の6月~8月の4か月健診受診者に行ったアンケートと比較検討した。
(3)対象者個々へのオンラインメディアを利用した健康情報の提供の有効性の評価(新たなソーシャルキャピタルの醸成と健康行動に及ぼす影響)
→新型コロナウイルス感染拡大の影響で実施不可となり、厚労省担当課に事前相談の上、新型コロナウイルス感染拡大下における子育て世代の母親の生活環境・意識調査に変更した。
結果と考察
(1)子育て世代の母親における健康情報の収集・共有方法および自治体の医療健康情報・支援体制提供状況の調査
    自治体の医療健康情報提供や母子の健康支援の媒体・手法をランダムに全国の自治体のホームページを調査し、不明点については直接聞き取りを行ったところ、オンラインメディアとしてはFacebookが大阪府内の自治体ではその約70%、全国の県庁所在地ではほぼ全てで活用されていた。
    また、乳幼児の子育て中の母親の対するアンケート調査・インターネット調査から、子育てで孤独を感じることが物理的な援助者の有無とは相関せずに、子育てへの満足感や自信の有無などという母親の内面と相関し、さらにその孤独感には母親自身の自己効力感が関係していることが明らかとなった。

(2)地域全体へのInstagramを利用した健康情報提供の有効性の評価
    SNS広告の認知率は8.6%であったが、子育てにおいて孤独を感じた母親は、孤独を感じていない母親に比して有意にSNS広告を認知していた率が高かった(p<0.01)。  Instagramによる情報発信前(2019年6月~8月)の4か月健診受診の母親に比して、Instagramによる情報発信後(2020年1月~3月)の4か月健診受診の母親では、子育てに孤独を感じる割合は低い傾向であり、地域全体へのInstagramを利用した健康情報提供は有効である可能性が示唆されたが、統計的に有意とは言えなかった。
(3)新型コロナウイルス感染拡大下における子育て世代の母親の生活環境・意識調査
2019年度に実施していた生後4ヶ月〜12ヶ月の子供をもつ母親を対象としたインターネット調査と比較する形で、同様の対象者に同様の質問を行い、子育てにおける新型コロナウイルス感染拡大の影響を評価した。子育てに関して気軽に相談できる相手がいない割合は増加傾向であった。相談できる相手については、友人や近所の人がともに有意に減少していた。子育てにおいて孤独を感じた割合も20.1%から24.6%に増加傾向を認めた。 生後20ヶ月〜24ヶ月および32か月〜36か月の子供を持つ母親に対しても同様の質問をって子育てにおける新型コロナウイルス感染拡大の影響を調査したが、生後4ヶ月〜12ヶ月の子供をもつ母親と同様の傾向であった。
結論
子育て中の母親の孤独感に、物理的な孤立より精神的な孤立が関係していること、それには母親自身の自己効力感が関わっていることが明らかとなった。新型コロナウイルス感染拡大の子育て環境に与えている影響として、精神的な孤立に加えて物理的な孤立も増えていること、SNSを介した情報発信の重要性が増していることが明らかになり、子育て中の母親の自己効力感を高め、自治体の相談窓口に引き出して相談につなげるための情報のSNSでの発信の重要性がますます高まっている。

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
2023-07-25

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202007008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 子育て中の母親の孤独感に、物理的な孤立より精神的な孤立が関係していることを自治体の乳幼児健診対象者(母親)へのアンケート調査およびインターネット調査において、初めて明確に示した。また、それには母親自身の自己効力感が関わっていることも証明した。また、新型コロナウイルス感染拡大が子育て環境に与えた影響につき、以前の調査と同様の対象に対してインターネット調査を実施したことで、変化を明確に示すことができた。
臨床的観点からの成果
子育て中の母親の自己効力感を高め、自治体の相談窓口に引き出して相談につなげるための情報のSNSでの発信につき、実際の自治体の乳幼児健診において検証することができた。また、新型コロナウイルス感染拡大の子育て環境に与えている影響として、精神的な孤立に加えて物理的な孤立も増えていること、SNSを介した情報発信の重要性が増していることが明らかになり、今後の具体的支援につなげることができると考えている。
ガイドライン等の開発
特記すべきことなし
その他行政的観点からの成果
特記すべきことなし
その他のインパクト
2019年度の大阪府母体保護法指定医師研修会におけるセミナーとして選定され、講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
2024-05-23

収支報告書

文献番号
202007008Z