大量出血時の止血能の評価と輸血療法に関する研究

文献情報

文献番号
200735032A
報告書区分
総括
研究課題名
大量出血時の止血能の評価と輸血療法に関する研究
課題番号
H18-医薬-一般-028
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高松 純樹(名古屋大学医学部附属病院 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター 輸血管理室)
  • 稲田 英一(順天堂大学医学部附属病院 麻酔科)
  • 高本 滋(愛知医科大学医学部 輸血部)
  • 西脇 公俊(名古屋大学医学部附属病院 麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
術中の大量出血時には赤血球輸血や循環不全への対処が重要であることは言うまでもないが、希釈性凝固障害による止血不全に対する治療が患者の予後を左右する重要なカギとなる。本研究はまず術中大量出血時の止血・凝固能を詳細に評価し、希釈性凝固障害の本態を解明することを目的とする。その上で新鮮凍結血漿投与に替わる新たな治療として、クリオプレシピテートもしくはフィブリノゲン製剤の投与による止血改善効果を検討し、出血量の減少および患者予後の改善に寄与しうるかどうかを明らかにする。
研究方法
術中に2000mlを越える大量出血をきたした場合、出血量の推移を見ながら適宜、血算と血液凝固検査(PT, APTT, フィブリノゲン)を行った。出血量の増加にともなって高度な低フィブリノゲン血症と全身性の出血傾向を認め、希釈性凝固障害と診断された場合には、フィブリノゲン補充効果の高いクリオプレシピテートおよびフィブリノゲン製剤を投与し、その後の出血量と血液凝固能の変化、止血の状況について新鮮凍結血漿投与の場合との比較検討を行った。
結果と考察
術中に大量出血をきたすリスクの高い胸部大動脈瘤症例においては、出血量が2000mlを越えてくると血小板数は5~10万/μlに減少し、フィブリノゲン値は150mg/dl以下に低下した。血小板製剤および新鮮凍結血漿の投与を行ったが止血は困難を極めた。そこでフィブリノゲン値150mg/dl以下の場合にクリオプレシピテ−ト3~6パック(新鮮凍結血漿15~30単位分)もしくはフィブリノゲン製剤3~6gを投与して血液凝固能の改善を図った。それによってフィブリノゲン値が100mg/dl近く上昇するとともに良好な止血が得られ、更なる出血量の増加を防げた。
 術中大量出血時に高度な低フィブリノゲン血症を認めた場合には、新鮮凍結血漿投与では凝固能の十分な改善が得られないことが多く、クリオプレシピテートやフィブリノゲン製剤投与により一気に凝固能を改善することが良好な止血に寄与すると考えられた。
結論
術中大量出血時には血小板数やフィブリノゲン値が低下し、止血凝固能が極度に低下する。それに対しては血小板製剤と新鮮凍結血漿の投与だけでは不十分で、クリオプレシピテートやフィブリノゲン製剤投与で凝固能を一気に改善させることにより良好な止血を達成でき、出血量を減少させうると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-