文献情報
文献番号
202006081A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による臍帯血移植数増加に対応するための、移植用臍帯血のコロニーアッセイの自動化に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2087
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
木村 貴文(日本赤十字社近畿ブロック血液センター 製剤部)
研究分担者(所属機関)
- 石井 博之(日本赤十字社近畿ブロック血液センター 製剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
17,151,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
造血幹細胞移植は、悪性腫瘍を含める造血器疾患の治療に対して行われる幹細胞を用いた再生医療の一つである。現在は幹細胞源として骨髄、末梢血、臍帯血を用いることが可能である。再生医療臍帯血バンクでは、COVID-19対策に伴う骨髄移植へのバックアップ体制など臍帯血需要拡大により、業務量が増加している。中でも必須検査項目であるコロニー形成細胞の計測(コロニーアッセイ)は、専門技術者が顕微鏡下において目視にて血液細胞系統の判断を行っているため、技術者間で判定結果に不揃いが出やすい傾向にある。本研究では、STEMCELL Technologies 社の造血コロニー判定自動化装置「STEMvisionTM」を用いた移植用臍帯血自動コロニーアッセイ法の有効性を従来の方法(顕微鏡下における目視判定)と比較し、コロニーアッセイの自動化・標準化が可能であるかを検証した。
研究方法
研究同意が得られた臍帯血を対象とし、凍結前濃縮検体および解凍検体を研究試料とした。凍結前濃縮検体30例をMethoCult培地にそれぞれ播種し、STEMvisionTM専用のプレート(SmartDishTM)に1検体当たり3ウェル分注(3重測定)、37 ℃(5 % CO2)にて培養する。14日後に顕微鏡下にて顆粒球系コロニー (colony-forming unit-granulocyte macrophage, CFU-GM), 赤芽球系コロニー(burst-forming unit-erythroid, BFU-E), 混合コロニー (CFU-mix)の各コロニー数および総コロニー数を観察・計数した。観察については、2名の観察者にて各コロニー数を観察(目視判定)するとともに、STEMvisionTMで測定した。
STEMvisionTMによる判定が最適となる播種濃度を検討するために、研究同意が得られた凍結前濃縮検体および解凍検体それぞれ3例を試料とし、培養開始12日~16日後にSTEMvisionTMを用いて測定・解析を実施した。細胞播種濃度は前者が10、20、50、100、150、200 cells/dish、後者が10、20、50、100、150 cells/dishとした。 最適な播種濃度算出の基準としては2名の観察者とSTEMvisionTMの間でのデータの不揃いの程度が最も小さく、また、STEMvisionTM判定時にエラー等が発生しない、または、最も発生が少ないポイントを決定した。また、STEMvisionTMでの解析を含む処理時間についても計測した。
統計解析は2名の観察者間及び各観察者とSTEMvisionTMの結果について行い、相関は
Speaman’s rank correlation coefficient、比較はWilcoxon signed-ranks test with Bonferroni correctionを用いて解析した。
STEMvisionTMによる判定が最適となる播種濃度を検討するために、研究同意が得られた凍結前濃縮検体および解凍検体それぞれ3例を試料とし、培養開始12日~16日後にSTEMvisionTMを用いて測定・解析を実施した。細胞播種濃度は前者が10、20、50、100、150、200 cells/dish、後者が10、20、50、100、150 cells/dishとした。 最適な播種濃度算出の基準としては2名の観察者とSTEMvisionTMの間でのデータの不揃いの程度が最も小さく、また、STEMvisionTM判定時にエラー等が発生しない、または、最も発生が少ないポイントを決定した。また、STEMvisionTMでの解析を含む処理時間についても計測した。
統計解析は2名の観察者間及び各観察者とSTEMvisionTMの結果について行い、相関は
Speaman’s rank correlation coefficient、比較はWilcoxon signed-ranks test with Bonferroni correctionを用いて解析した。
結果と考察
目視判定とSTEMvisionTM判定結果との比較では、2名の習熟した職員とSTEMvisionTM間のコロニー形成細胞数において有意な相関が認められた。特に提供前確認検査の項目である総コロニー数とCFU-GM数は、相関係数から「極めて強い相関」あるいは「強い相関」が認められた。また、各コロニー形成細胞数の比較では観察者とSTEMvisionTM間に有意差を認めた。しかし、この差は目視判定の観察者間にも同様に認められ、許容できる範囲であった。従って、STEMvisionTMの判定結果は目視判定による従来法と同等の結果を得ることが可能であると考えられた。播種濃度については、凍結前濃縮検体と解凍検体の結果から、エラーメッセージの発出されない50 cells/dish(従来法と同じ)が最適な濃度であった。STEMvisionTMの処理時間は、1サンプルあたり27分、従来の顕微鏡下における目視判定に係る時間(5~10分)に比べ時間を要するが、大部分は機器が自動処理をしている時間であり、担当者はその間、別の業務に従事できるため業務効率的に問題はない。
結論
今回の検討結果から、コロニー判定自動化装置「STEMvisionTM」は、従来の方法と同等の結果が得られ、臍帯血バンク事業に導入可能と考える。自動化の導入は、目視判定に見られる担当者の主観や習熟度による結果の不揃いをなくすことによる移植用臍帯血の品質向上、作業時間の短縮及び特殊作業の平準化による業務分散、判定者の育成に必要な時間の大幅な短縮等、事業効率化が期待できる。これらのことから臍帯血バンク事業へ本装置による自動測定システムを導入することにより、COVID-19影響化での臍帯血需要増加に対応することが容易になり、医療現場への移植用臍帯血の安定的供給に大きく寄与できると考える。
公開日・更新日
公開日
2021-08-20
更新日
-