麻薬の代替となる薬用植物栽培の国際的普及に関する研究

文献情報

文献番号
200735027A
報告書区分
総括
研究課題名
麻薬の代替となる薬用植物栽培の国際的普及に関する研究
課題番号
H18-医薬-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐竹 元吉(お茶の水女子大学生活環境研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学 香川薬学部)
  • 長野 哲雄(東京大学 大学院薬学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミャンマー連邦、ラオス及びカンボジアで、ケシ代替植物として地域に適した薬用植物や果樹の栽培と振興、健康増進に役立つ知識の普及、国内外での薬用植物の利用拡大を計る。アンフェタミン型興奮薬原料として流用されるエフェドリンやサフロールの起源植物の生育地域及び成分調査を国連麻薬犯罪取締部のプロジェクトと協力し、原料物質規制に役立てる情報の獲得を目指した。
研究方法
ミャンマーの試験農場でベニバナ、ソバ、ブドウを中心に育苗を行い、薬用及び野性ランの生育環境調査及び黒檀に含まれる薬効成分の検索をした。ラオス・カンボジアでミャンマーで確立した代替作物生産法が活用できるか検討した。覚せい剤原料エフェドリン類の水素の安定同位体比を用いて覚せい剤原料の起源推定を検討した。
結果と考察
ミャンマーの麻薬不正栽培地域での代替植物としてブドウ、ベニバナ、ソバが順調に生育していることが明らかとなった。ラオス・カンボジアの調査で、東南アジアには経済的に有望な野生薬用植物が多くあり、新規に薬効のある代替植物の発見が期待できた。黒檀の抽出分画に皮膚型熱帯リーシュマニア原虫に対する活性があることを見出した。覚せい剤原料エフェドリン類の水素の安定同位体比は、炭素・窒素とともに製造法分類に重要な指標であることが明らかになり、これにより詳細な起源解析が可能になった。
結論
ミャンマーでは選択した植物の大量栽培の継続的指導と薬用果樹の育苗を少数民族の要望を聴取し、供給基地を作ることが大切である。インドシナ半島の薬物乱用はゴールデントライアングル以外の国まで及び、カンボジアではケシ栽培は見られないが、麻薬合成原料サフロールが高濃度で含まれるササフラスオイルの横流しが大問題となっていた。メコン五カ国は共通の歩調で伝統医学と伝統薬の普及に取り組んでおり、それに歩調をあわせ、乱用薬物の生産を余儀なくされている貧困層に、薬用植物栽培による経済的基盤の提供に協力して行くことが大切である。営農作物としての薬用ラン選択では、市場ルート及び商品価値を保つ加工調整法の解明を進める必要がある。日本でも、覚せい剤原料の密輸入事件も増加傾向にあり、その起源解析に短時間で測定できるIR-MS法は実用性の高い方法であり、今後、エフェドリン類のより多くの製品収集をし、原料物質規制対策に役立つ情報提供をしていかなければならない。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)