病原体の検出方法等に関する研究

文献情報

文献番号
199700408A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体の検出方法等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進(国立感染症研究所食品衛生微生物部長)
研究分担者(所属機関)
  • 小沼博隆(国立衛生試験所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
19,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年増加してきた腸管出血性大腸菌による食中毒を防止するために、食中毒調査検体および汚染実態調査検体としての各種食品中の腸管出血性大腸菌0157(以下0157)の検出方法を確立することが急がれている。本研究の目的は、同菌の牛挽肉およびかいわれ大根からの検出に有効な増菌培養方法を明らかにすること、損傷を受けた腸管出血性大腸菌0157の回復に適した条件を見いだすことにある。
研究方法
1)食中毒患者および食品から得られた15菌株の0157を一晩TSB中で培養した後希釈したものを約100ケ/mlになるように、牛挽肉抽出液またはかいわれ大根抽出液を加えた各種液体培地10mlに接種してから試験管内で6または 18時間、37℃ま たは42℃で培養した。なお液体培地として、TSB、mTSB(TSB+ノポビオシン+胆汁酸)、mEC+n(EC十ノボビオシン+胆汁酸)、mTSB‐VCC(mTSB+バンコマイシン+セフィキシム+セフスロジン)、TSB‐CTV(TSB+バンコマイ
シン十セフィキシム+亜テルル酸)を用いた。同様に一瞬TSB中で培養した後希釈した一菌株を約10ケ、ストマック袋中の牛挽肉またはかいわれ大根各25gに接種し、22 5mlの各種液体塔地を加え、ストマッグ処理した後、6または18時間、37℃または42℃で培養した。なお液体培地として、TSB、mTSB、mEC十nを用いた。それら培養物について、磁気ピースで集菌してから、またはそのまま直接、選択平板培地に塗抹し、検出を試みた。
2)ー晩TSB中で培養した0157数菌株について、ミリO水で洗浄してから同水中に懸濁してから52℃の湯浴で加熱、または一20℃下で冷凍処理した後に、それら菌液中の0157菌の総数と損傷を受けた菌数を、TSAおよびCTSMAC上で培養するこ
とによって測定した。なお、本研究では両平板上の菌数の差を損傷を受けた菌とした。ついで損傷菌を接種した蒸留水を、各種の液体培地で培養後、TSAまたはCTSMAC上で菌数を測定することにより、水中の損傷菌の増菌に適した培養条件を求めた。なお液体培地と培養条件として、TSB、mTSB、mEC+nまたはK3(日水)で37または42℃24時間培養、LB(LaCtosebroth)で25℃2時間培養後ノポビオシンと胆汁酸を加えて37または42℃22時間培養、?Bで250C2時間培養後ノポビオシンと胆汁酸を加えて37または42℃22時間培養を用い比較した。
結果と考察
結果=1 )挽肉抽出液を含む培地中では、mTSB-VCC37℃18時間以外の培養条件により、全ての菌株が検出できた。かいわれ大根抽出液を含む培地中では、TSBおよびmTSBともにいずれの温度と時間によっても、またmEC+nで37℃18時間によって全菌株が検出できた。mEC+nで37℃6時間、42℃6時間および18時間、mTSB‐VCCで37℃および42℃6時間の各培養により大部分の菌株が検出できた。しかしその他の条件下では検出された菌株数が比較的少ないことが認められた。
ストマック袋中牛挽肉に対しては、mEC+nおよびmTSBで42℃18時間培養後、磁気ピース集菌してから選択平板塗抹の方法により全サンプルから菌を検出することができたが、他の方法では検出できないサンプルもあった。ストマック袋中かいわれ大根に対しては、mEC+nで42℃18時間培養後、磁気ビーズ集菌してから選択平板塗抹の方法が最も検出率が高かった。
2)加熱処理によっても損傷された菌が検出できたが、TSA上とCTSMAC上のコロニー数の大きな差は、冷凍処理によるほうが加熱処理よりも安定して得られることから、損傷菌を得るにはミリO水中の菌を冷凍処理する方法が優れていることが分かった。このようにして得た損傷菌の各液体培地中での増殖を比較した結果、LB(Lactose Broth)で25℃2時間培養後ノボビオシンと胆汁酸を加えて42℃22時間培養、TSBで37または42℃ 24時間培養、またはTSBで25℃2時間培養後ノボビオシンと胆汁酸を加えて37または42℃22時間培養により顕著な増殖が認められたが、他の方法では増殖が認められない検体が多かった。
考察=牛挽肉やかいわれ大根などの自然汚染細菌数の比較的高い食品からの0157検出のための増菌方法としては、mEC+nおよびmTSBで42℃18時間培養が、すなわち選択剤としてのノボビオシンと胆汁酸の存在、および温度条件として42℃が極めて有効に作用することが判明した。水中での損傷菌に対しては、最初から培養液にノボビオシンと胆汁酸が存在する場合には回復増殖が阻害されるが、最初の2時間内に菌がそれらに暴露されていなければ十分回復できてその後の増殖が選択剤による抑制を受けることはほとんど無いことが分かった。
結論
牛挽肉やかいわれ大根などの自然汚染細菌数の比較的高い食品からの0157検出のための増菌方法としては、mEC+nおよびmTSBでの42℃18時間培養が、水中での損傷菌に対しては選択剤の存在しない液体培地での2時間培養を組み込むこが必要であることが判明した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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