文献情報
文献番号
202006071A
報告書区分
総括
研究課題名
死因究明により得られる知見を新興感染症対策等公衆衛生の向上に活用するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2075
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 秀人(東京都監察医務院 監察医室)
研究分担者(所属機関)
- 岩瀬 博太郎(東京大学医学系研究科法医学教室)
- 岩楯 公晴(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
14,323,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
死因究明施設が新興感染症関連死の死因究明を適切に行い公衆衛生上の重要な役割を果たすために必要な方策について検討を行う。
研究方法
東京都特別区及び多摩・島嶼地区における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連異状死(SARS-CoV-2 PCR陽性例)の発生状況、死因等につき調査した。また全国の法医解剖実施施設にCOVID-19関連異状死の取り扱い状況、感染対策設備の現状について質問紙調査を施行した。
結果と考察
東京都内で新型コロナウイルス感染者数が多く報告された時期に一致して東京都特別区及び多摩・島嶼地区の検案・解剖例でもPCR陽性例の増加が認められた。生前の症状等から事前にCOVID-19が疑われると警察によって判断された疑い例については、全体の陽性率に比べ高い陽性率を示した。PCR陽性例の死因は肺炎が最多であり、死後CT画像上肺野にびまん性のスリガラス影・浸潤影が大部分の事例で認められた。一方、感染症と直接関連のない病死や外因死もPCR陽性例には認められた。またCOVID-19が疑われPCR検査を施行するも陰性であった事例の死因には心疾患や他の重篤な感染症等多岐の疾患が認められた。全国の法医解剖実施施設におけるPCR検査実施体制は、保健所に依頼、自施設内で独自に施行、検査会社に外注等様々であり、費用負担も実施体制と同様に様々であった。陽性例、疑い例の死因究明のための解剖が可能な施設は少なく、その理由として解剖室の設備が十分でないこと、人員・個人防護具の不足等が挙げられた。新興感染症の市中感染の拡大とともに生前何らかの理由で医療につながらなかった例が異状死に一定数含まれることが今後も予測され、その鑑別疾患は多岐に及ぶ。感染症関連死及び疑い例の正確な死因究明には感染症検査(PCR等)・死後CT検査・解剖検査体制の構築が必要である。
結論
死因究明施設が新興感染症発生下において死因究明を通じ公衆衛生の向上に資するためには、警察他関係機関との連携、感染症検査(PCR等)・死後CT撮影・解剖検査体制の構築が必要であり、検査は公費による、地域格差が生じないような体制が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2021-06-22
更新日
2021-10-01