プラスティック製医療機器の安全性に関する研究フタル酸エステルDEHPとその活性代謝産物MEHPの比較毒性学的研究

文献情報

文献番号
200735020A
報告書区分
総括
研究課題名
プラスティック製医療機器の安全性に関する研究フタル酸エステルDEHPとその活性代謝産物MEHPの比較毒性学的研究
課題番号
H18-医薬-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今井 清(財団法人食品農医薬品安全性評価センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 関田清司(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 高木篤也(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DEHPおよびMEHPを齧歯類に単回あるいは反復投与した時の毒性プロファイルの比較検討、遺伝子発現変化動を指標にした作用機序の比較検討、両化合物の毒性研究に関する国際的な動向及び文献調査を主な目的とし、本年度はMEHP、DEHPのラットおよびマウスを用いた28日間経口投与毒性試験と単回投与後のマウス標的臓器の網羅的遺伝子解析および情報収集のための文献調査を行った。
研究方法
1)雄マウスに、MEHP 50-500 mg/kgあるいはDEHP 150-1,500 mg/kg/dayを28日間経口投与し、生死の確認、一般状態の観察、体重、摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、病理学的検査を実施した。2)雄ラットにMEHP 70-700 mg/kg/dayあるいはDEHP 200-2,000 mg/kg/dayを28日間経口投与し、生死の確認、一般状態の観察、体重、摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、病理学的検査を実施した。3)MEHPの毒性学的研究等に関する文献を調査・収集し、MEHPの毒性研究その現状についてまとめた。4)雄マウスに、MEHP(70-700 mg/kg)、DEHP(200-2,000mg/kg)を単回強制経口投与して経時的にサンプリングし、新たに標的臓器である事が確認された腎臓のmRNAにつき、網羅的遺伝子発現変動解析を行った。
結果と考察
マウス、ラットともにMEHP、DEHP投与群いずれにも肝毒性および精巣毒性が確認されたほか、MEHP投与群では、ラットの高用量群で、呼吸障害あるいは神経症状が確認され、マウスでは、DEHP、MEHP投与により腎尿細管障害が起きることが明らかにされたが、MEHPはDEHPと比較して腎標的性が高く、投与群では肝障害、精巣障害に比較すると腎毒性がより強く発現し、腎障害の発現にスフィンゴシン-1-リン酸シグナルカスケードが関与する可能性が示唆された。文献調査の結果、MEHPがPPARαのみならずPPARγのアゴニストであることが判明したほか、ミトコンドリア、Na+-K+-ATPase、cAMP、アセチルコリン受容体等への影響が報告されており、PPAR非依存的な作用にも注目する必要がある
結論
フタル酸エステルDEHPとその活性代謝産物として知られるMEHPの28日間経口投与による比較毒性研究を、マウスおよびラットを用いて実施した結果、肝および精巣毒性のほかにラットではMEHPの高用量群で神経症状を伴った著しい衰弱例が観察され、マウスではMEHP投与による腎毒性が強く発現する事が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200735020B
報告書区分
総合
研究課題名
プラスティック製医療機器の安全性に関する研究フタル酸エステルDEHPとその活性代謝産物MEHPの比較毒性学的研究
課題番号
H18-医薬-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今井 清(財団法人食品農医薬品安全性評価センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 関田清司(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 高木篤也(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プラスティチック製医療用具のガンマ線滅菌によりMEHPが溶出することが報告されたが、in vivoにおいてはMEHPの毒性はほとんど検証されていない。本研究ではDEHPおよびMEHPを齧歯類に単回あるいは反復投与した時の毒性プロファイルの比較検討、遺伝子発現変化動を指標にした作用機序の比較検討、両化合物の毒性研究に関する国際的な動向及び文献調査を主な目的とした
研究方法
1)雄マウスを用いて経口投与によるMEHP、DEHPの単回、14日間あるいは28日間投与毒性試験を実施した。2)雄ラットを用いてMEHP 、DEHP の日間あるいは28日間連続経口投与による亜急性毒性試験を実施した。3)MEHPの毒性学的研究等に関する文献を調査・収集し、MEHPの毒性研究の現状についてまとめた。4)雄マウスに、MEHP、DEHPを単回強制経口投与して、標的臓器である事が確認された腎臓のmRNAにつき、網羅的遺伝子発現変動解析を行った。
結果と考察
MEHP単回投与マウスでは、1,000 mg/kg以上の投与群で、間代性痙攣を伴った死亡例が認められたが、DEHP単回投与では死亡はなく、自発運動亢進が観察された。 MEHP 2,000 mg/kg連続投与ラットでは、間代性痙攣などを伴って死亡した。連続投与の結果、マウス、ラットともにMEHP、DEHP投与群いずれにも肝毒性および精巣毒性が確認されたほか、MEHP投与群では、ラットの2,000 mg/kg連続投与で、呼吸障害あるいは神経症状を伴った衰弱例が見られた。マウスでは、DEHP、MEHP投与により腎尿細管障害が起きることが明らかにされたが、MEHPはDEHPと比較して肝、精巣よりも腎標的性が高かくMEHP投与群では肝障害,精巣障害に比較すると腎毒性がより強く発現した,、腎障害の発現にスフィンゴシン-1-リン酸シグナルカスケードが関与する可能性が示唆された。文献検索の結果、フタル酸類にin vitroの系で心臓毒性を示すこと、MEHPはPPARαのみならずPPARγのアゴニストであること、ミトコンドリア、Na+-K+-ATPase、cAMP、アセチルコリン受容体等への影響が報告されており、PPAR非依存的な作用にも注目する必要がある。
結論
DEHPとその活性代謝産物MEHPの比較毒性研究を、マウスおよびラットを用いて実施した結果、肝および精巣毒性のほか、新たにラットではMEHP高用量群で神経毒性が発現する可能性が示唆されたほか、マウスではMEHP、DEHP投与により腎毒性がが確認され、マウスにおける腎毒性はMEHPでより強く発現する事が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
塩化ビニル製医療用具に可塑剤として用いられているDEHPの生体内活性物質と考えられているMEHPは、近年プラスティック製用具をガンマ滅菌する事により溶出することが明らかにされているが、本研究で実施したマウスおよびラットを用いた毒性実験で,MEHPは神経毒性および腎毒性等DEHPとは異なる毒生を示すことが示唆された.
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究において、DEHPの代謝物と考えられていたMEHP投与により特にマウスにおいて腎毒性が強く発現し、さらに神経毒性が惹起される可能性が示唆されたことから、MEHPは大量投与ではあるがDEHPとは異なる毒性を示すことが明らかになった.従って、本研究の成果は医療用具から溶出するMEHPの毒性評価に際して、新たな情報として活用されることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
菅野純,北嶋聡,相崎健一,他
Percellome Projectによる毒性トランスクリプトミクスの新しい試み
細胞工学 , 26 , 71-77  (2007)
原著論文2
菅野純、相崎健一、五十嵐勝秀,他
トキシコゲノミクスの新展開 Percellome Projectによる2,3,7,8-TCDD—2,3,7,8-TCDF比較
細胞工学 , 26 , 1391-1396  (2007)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-