新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびインフルエンザの診断における鼻咽頭拭い液・鼻かみ鼻汁液・唾液検体を用いた迅速抗原検査の有用性の検証のための研究

文献情報

文献番号
202006059A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびインフルエンザの診断における鼻咽頭拭い液・鼻かみ鼻汁液・唾液検体を用いた迅速抗原検査の有用性の検証のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2061
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
倭 正也(地方独立行政法人りんくう総合医療センター 感染症センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
13,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症は、本邦においても、既に、市中における気道感染症の初診時における重要な鑑別疾患の一つとなっている。鑑別診断の際に用いられるPCR検査や抗原検査で標準的な検体とされる鼻咽頭拭い液は、採取に際して、技術を有する医療従事者が必要であること、また、十分な感染防御策が必要であることなどが、迅速な検査の実施への障害になっている。本研究班では、採取が容易な鼻腔拭い液等の検体による種々の新型コロナウイルスに対する検査について鼻咽頭拭い液によるPCR検査と比較した際の有用性を検討することを目的とした臨床研究を実施する。また、インフルエンザとの鑑別診断において鼻咽頭拭い検体の他に鼻腔拭い液検体、鼻かみ鼻汁検体あるいは唾液検体が使用できるかどうか検討する。
研究方法
症状を有する新型コロナウイルス感染症患者及び疑い患者を対象に、鼻腔拭い液、鼻咽頭拭い液を採取し、新型コロナウイルスに対するPCR検査、定量抗原検査(ルミパルス®SARS-CoV-2)及び迅速抗原定性検査(エスプライン®SARS-CoV-2)を実施し、鼻咽頭拭い液によるPCR検査との一致率を評価する。
結果と考察
症状を有する新型コロナウイルス感染症患者及び疑い患者を対象に、鼻腔拭い液、鼻咽頭拭い液を採取し、新型コロナウイルスに対するPCR検査、定量抗原検査(ルミパルス®SARS-CoV-2)及び迅速抗原定性検査(エスプライン®SARS-CoV-2)を実施し、鼻咽頭拭い液によるPCR検査との一致率を最終計82例に対して評価した。鼻腔拭い液のPCR検査は、鼻咽頭拭い液のPCR検査との比較で高い一致率を示した。抗原定量検査及び発症1-9日目に採取した鼻腔拭い液による迅速抗原検査は、鼻腔拭い液PCR検査と十分な一致を示した。また、鼻咽頭拭い液PCR検査との一致率は、鼻腔拭い液PCR検査との一致率にくらべやや低いものの同様の結果を示した。一方、発症10日目以降に採取した鼻腔拭い液による抗原検査は、鼻腔拭い液PCR、鼻咽頭拭い液PCR検査のいずれに対しても陽性一致率は高くなかった。発症後1-9日目に採取した、鼻咽頭拭い液の迅速抗原定性検査と鼻腔拭い液の迅速抗定性検査との比較において高い一致率を示した。患者自身でも採取可能な鼻腔拭い液による検査を活用することで、診療の現場でより柔軟な検査体制の整備が可能になると期待される。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの迅速な鑑別を安全に行うことを要する医療現場において、鼻腔拭い液検体(および鼻かみ鼻汁検体)は有用な検体であると考えられた。
結論
鼻腔拭い液によるPCR検査、抗原定量検査、発症1-9日目の迅速抗原定性検査は、標準的な鼻咽頭拭い液検体による検査と同様の一致率を示し、新型コロナウイルスの診断に有用であると考えられた。なお、今回検討した症例数は4症例と少ないながら、鼻かみ鼻汁液検体は鼻腔拭い液検体と同等に新型コロナウイルスの診断に有用であると考えられた。また、今回検討した症例数は3症例と少ないながら、インフルエンザの診断においては新型コロナウイルス感染症とは異なり、唾液検体は使用できないと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-08-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-08-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006059C

成果

専門的・学術的観点からの成果
鼻腔拭い液検体によるPCR検査、抗原定量検査、発症1-9日目の迅速抗原定性検査は、標準的な鼻咽頭拭い液検体による検査と同様の一致率を示し、新型コロナウイルスの診断に有用であると考えられた。
臨床的観点からの成果
患者自身でも採取可能な鼻腔拭い液検体による検査を活用することで、診療の現場でより柔軟な検査体制の整備が可能になると期待される。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの迅速な鑑別を安全に行うことを要する医療現場において、鼻腔拭い液検体(および鼻かみ鼻汁検体)は有用な検体であると考えられた。
ガイドライン等の開発
厚生労働省、国立感染症研究所などから発出されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針に取り上げられている。
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会感染症部会で取り上げられており、患者自身による自己採取可能な鼻腔検体を用いた迅速抗原定性検査について広く利用されている。
その他のインパクト
マスコミにも取り上げられている。厚生労働大臣から鼻腔検体の採取方法、有用性について発表されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202006059Z