薬物体内動態支配因子のファーマコゲノミクスに基づく医薬品開発評価

文献情報

文献番号
200735013A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物体内動態支配因子のファーマコゲノミクスに基づく医薬品開発評価
課題番号
H18-医薬-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 樋坂 章博(東京大学 医学部附属病院 )
  • 北山 丈二(東京大学 医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、個別化医療への応用の期待されるP450代謝酵素(CYP)について、日本人のファーマコゲノミクス(PGx)に必要な情報を、科学的に整理して収集し、動態変化の定量的予測を通じて効果、安全性、薬物間相互作用の予測を可能とすることを目的とする。平成19年度は、遺伝子変異を有する患者における薬物間相互作用および代謝酵素の誘導による動態変化の予測を重点的に検討した。
研究方法
薬物動態の予測を個別化医療に積極的に利用するには、方法が単純でしかも精度が十分に高い必要がある。我々はこの観点から薬物動態の理論を再検討し、予測に不可欠な最低限度の情報は、①遺伝子変異や併用薬によるCYPの活性の変化と②基質薬の各CYP分子種への代謝依存度(寄与率)であるとした。この情報から、平成18年度には数百の組合せのCYPの阻害による相互作用を網羅的に予測した。平成19年度には、これまで報告例の少ないCYPの誘導による相互作用を予測した(Ohno et al. Clin Pharmacokinet in press, 2008)。また、CYPに遺伝子変異を有する患者における相互作用を本理論によりシミュレートした。
結果と考察
阻害と同様に酵素誘導についても、広範な薬剤間の相互作用の精度の高い予測に成功した。その結果、一部の薬物では併用薬のクリアランスが亢進し、多くの治療無効の原因になると推定された。CYPに遺伝子変異を有する患者においては、薬物間相互作用について野生型とは著しい違いを生ずると予測された。すなわち、相互作用で活性の変化するCYPの活性がSNPsによって失われている場合は相互作用が消失するのに対し、活性の変化するCYP以外の活性がSNPsで失われる場合には、予想以上に強い相互作用が生じて危険となる可能性が示された。現在、数種の薬剤でその臨床における実証を進めている。
結論
本研究で構築した薬物動態予測の方法論は、単純で精度が高いことに加え、必要なパラメータをin vivoの臨床試験の結果から得られるために、in vitroデータの発表されていない薬物でも適用できる。一方で in vitroのデータを積極的に予測に利用し、そのin vivo予測の信頼度を検証することも可能であり、将来は医療で直接利用するほかに、新薬認可申請のガイドラインや添付文書のPGxおよび薬物間相互作用の記述に影響を与えることも期待される。さらに、新薬開発時にCYPにSNPsを有する患者におけるや薬物間相互作用による動態変化を適切に予測することで、候補品をより効率的に選択可能とするものである。

公開日・更新日

公開日
2008-04-14
更新日
-