新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究

文献情報

文献番号
202006052A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究
課題番号
20CA2054
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
福永 興壱(慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
COVID-19罹患後の遷延する症状、いわゆる後遺症は、Lung COVIDやlong haulersやPost-acute COVID-19 syndromeとも呼ばれ、欧米では徐々に報告されつつある。一方で、日本人における後遺症の報告は、ほとんどなく、後遺症の実態は明らかでない。そこで本研究では、日本で初めてCOVID-19罹患後後遺症の1,000例規模の実態調査を行い、後遺症の実態を明らかにすることを目的とする。
研究方法
COVID-19と確定診断され入院し退院した患者1000例を対象に紙あるいはスマートホンアプリを用いたアンケート調査を行った。全国から、27施設が本研究に参加した。各参加施設に対して、ある一定期間に入院した全患者のリストの抽出を依頼し、各医療機関からリストに上がった全患者に対して研究参加の案内を郵送し、本研究への参加に同意を得た患者(回復者)を対象に研究を遂行した。具体的には診断時、診断3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後のアンケート調査を行い、24の各症状の有症状率を経時的に調査し、また国際的に確立した評価尺度として、健康関連QOLは、「SF-8」と「EQ-5D-5L」を用い、不安や抑うつの傾向は「HADS」、恐怖に関しては「新型コロナウイルス恐怖尺度」、睡眠障害については「ピッツバーグ睡眠質問票」、労働生産性については「WHO健康と労働パフォーマンスに関する質問用紙(日本語版)」を用いて検討した。さらに、仕事や生活などの社会経済状況についても、経済学の専門家と協議しアンケートを作成して行った。
結果と考察
最終評価を行った1,066 例の内訳は、男性679例(63.7 %)、女性387例(36.3%)と国立国際医療研究センターのレジストリ研究の2020年12月28日の時点での男女の割合は、男性59.4%、女性40.6%と本報告とほぼ同一であり、本中間評価が症例数の限られた中でも解析集団として本邦におけるCOVID-19入院患者を反映していると示唆された。また、10代及び20代が8.3%、30代が11.2%、40代が12.8%、50代が23.5%、60代が18.4%、70代が18.4%、80代以上が7.3%であり、調査対象が偏ることなく各世代に分散していた
何らかの症状を有した患者は、診断後から退院までに93.9% (947名/1009名)、診断3ヵ月後には46.3%(433名/935名)、6ヵ月には40.5%(350名/865名)、12ヵ月後33.0%(239名/724名)と、統計学的有意に経時的に低下していたが、12ヵ月の時点でも約1/3で残存していた
代表的な24症状は、いずれも経時的に低下傾向を認めた。
12ヵ月後に5%以上残存していた症状は以下の通り。13%:疲労感・倦怠感、9%:呼吸困難、8%:筋力低下、集中力低下、7%:睡眠障害、記憶障害、6%:関節痛、筋肉痛、5%:咳、痰、脱毛、頭痛、味覚障害、嗅覚障害。
中年者は他の世代と比較して罹患後症状が多い傾向を認めた。個別の症状として、12カ月時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、筋力低下、眼科症状は高齢者に多く、感覚過敏、味覚障害、嗅覚障害、脱毛、頭痛は若年者に多く、罹患後症状の分布に世代間での差異を認めた。
3ヵ月時点では女性で男性と比べて咳、倦怠感、脱毛、頭痛、集中力低下、睡眠障害、味覚障害、嗅覚障害など様々な症状が高頻度で認められた。
一方、12ヵ月時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、皮疹、手足のしびれが男性で高頻度となり、全体の頻度としては性差が減少した。
入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は酸素需要のなかった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。全体での罹患後症状の有症状率の差は酸素需要有り:45.7% (6ヵ月)、36.1% (12ヵ月) 、酸素需要無し:37.7% (6ヵ月)、31.8%(12ヵ月)と重症度による頻度の差は10%未満であった。
本研究では、非感染者との比較は行っておらず、結果の解釈には注意が必要である。
結論
日本で初めて、1000例規模のCOVID-19罹患後の後遺症全般に関する調査研究を行った。今後更なる解析を行い、後遺症のリスク因子の解析など進めている。本研究を通じて、本邦におけるCOVID-19罹患後の後遺症の実態を明らかにし、COVID-19の後遺症に対する医学的・社会政策的な出口戦略策定にも寄与する研究と考える。

公開日・更新日

公開日
2022-07-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006052C

成果

専門的・学術的観点からの成果
COVID-19罹患後の遷延する症状(後遺症)に関する日本国内の研究、特に経時的変化を見た研究はいまだ少なく今回は最終目標数1000例のうち約25%の解析を行い、3カ月後および6カ月後のそれぞれの症状の頻度、QOLの変化などについて明らかにした。解析には24の各症状の有症状率を経時的に調査し、また国際的に確立した評価尺度を用いて行い我が国のCOVID-19罹患後の後遺症についての実態を明らかにした。最終報告ではこれらのデータ1000例について明らかにする予定である。
臨床的観点からの成果
中間評価を行った250例は、COVID-19に関する本報告と男女比などほぼ同一であり、本中間評価が症例数の限られた中でも解析集団として本邦におけるCOVID-19入院患者を反映していると示唆された。また診断後3ヵ月では、後遺症の症状は、上位から、倦怠感21.4%、呼吸困難15.7%、脱毛15.2%など具体的な頻度を示し、女性の方が何らかの後遺症症状の遷延を認める傾向にあり、世代間における検討では嗅覚障害や味覚障害は若年者に多く認める傾向にあるなど層別化した解析結果も示すことができている。
ガイドライン等の開発
特になし(250例解析での報告時点ではなし。)。
その他行政的観点からの成果
日本で初めて、1000例規模のCOVID-19罹患後の後遺症全般に関する調査研究を行っており、今回は250例の中間報告である。入院患者を対象とした本研究はわが国のCOVID-19患者について正確な状況を反映していると考えており、本研究を通じて本邦におけるCOVID-19罹患後の後遺症の実態を明らかにすることで、COVID-19の後遺症に対する社会政策的な出口戦略策定にも寄与する研究と考えている。
その他のインパクト
特になし(250例解析での報告時点ではなし。)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202006052Z