臨床事例を活用した実践的薬学教育研修システムの確立とその評価

文献情報

文献番号
200735012A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床事例を活用した実践的薬学教育研修システムの確立とその評価
課題番号
H17-医薬-一般-079
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 康文(東京大学大学院情報学環 薬学系研究科兼任)
研究分担者(所属機関)
  • 大谷 壽一(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 堀 里子(東京大学大学院薬学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物治療の最適化などにおける薬剤師へのリスクマネージャーとしての期待は大きい。薬剤師の卒前・卒後教育では、ヒヤリ・ハット事例をはじめとする臨床事例を学ぶことは非常に有効である。しかし、教育的見地から臨床事例を収集し、解析し、提供するシステムはほとんど確立していない。そこで本研究では、研究者らが構築してきた「薬剤師間情報交換・研修システム」を基盤として、ナマの事例(教育的事例素材)の効果的な収集、その評価・体系化・加工、ならびに教育用事例を用いた薬学教育、薬剤師研修のための方法論を確立するとともに、その方法論を実行・評価することを目的とする。
研究方法
教育的事例素材の継続的収集、整理解析・評価・加工を行うとともに、WEB アンケートを積極的に導入し、その実施体制を確立した。一方、収集した事例などをもとに作成した教育的臨床事例の提供にあたっても、昨年までに隔離した情報提供媒体に加えて、インターネットを活用した遠隔セミナーや、研修コースの動画配信による e-ラーニングを構築した。医師・歯科医師を対象としたシステム(アイメディス)の登録会員に対しても計 53 事例を配信し、医師・歯科医師による評価を行った。
結果と考察
WEB アンケートは、医療現場の実態を把握するだけではなく、事例のシーズを収集する上でも有効な手段となりうることがわかった。遠隔会議セミナーシステムは、90% 近い受講者が総合的に「満足」または「やや満足」していた。ビデオ・オン・デマンド (VOD) による教育研修コンテンツ提供 (e-ラーニング) システムを用いて、会場型の育薬セミナーならびにヒヤリハット研究会と同等のコンテンツを、インターネットを介して配信できた。医師・歯科医師に対するアンケートでは、回答者の95%から、提供されたのウェブサイトの情報は日々の診療に役立つとの評価を得た。
結論
医療従事者の資質向上とそれを介した薬物治療の適正化に大きく寄与できるシステムの構築が完了した。今後は、本システムは研究の段階を離れ、研究成果を広く社会実装する段階に至った。本システムの実装は、医療従事者の資質の向上と、それを介した国民医療の質的向上に貢献できるだろう。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200735012B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床事例を活用した実践的薬学教育研修システムの確立とその評価
課題番号
H17-医薬-一般-079
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 康文(東京大学大学院情報学環 薬学系研究科兼任)
研究分担者(所属機関)
  • 大谷 壽一(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 堀 里子(東京大学大学院薬学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物治療の最適化などにおける薬剤師へのリスクマネージャーとしての期待は大きい。薬剤師の卒前・卒後教育では、ヒヤリ・ハット事例をはじめとする臨床事例を学ぶことは非常に有効である。しかし、教育的見地から臨床事例を収集し、解析し、提供するシステムはほとんど確立していない。そこで本研究では、研究者らが構築してきた「薬剤師間情報交換・研修システム」を基盤として、ナマの事例(教育的事例素材)の効果的な収集、その評価・体系化・加工、ならびに教育用事例を用いた薬学教育、薬剤師研修のための方法論を確立するとともに、その方法論を実行・評価することを目的とする。
研究方法
「薬剤師間情報交換・研修システム」を継続的に運用し、教育的事例素材の継続的収集、整理解析・評価・加工を行い、教育的臨床事例を間断なく作出した。作出した事例を、さまざまなメディアを用いて、薬剤師のための臨床薬学的スキル教育に役立てた。また、医師・歯科医師を対象に同様のシステムを構築し、研修用の臨床事例を提供した。
結果と考察
3 年間で計 332 の教育的臨床事例を作出できた。また、作出した事例は登録薬剤師に対するインターネット配信、雑誌・書籍、育薬セミナー、チェーン薬局内教育、ヒヤリハット研究会、e-ラーニングなど、さまざまな教育研修媒体を通じて広く提供できた。さらに医師・歯科医師に対しても計 135 の教育用臨床事例を作出できた。事例の配信の受け手となる医療従事者に対するアンケート調査では、多くの受け手からその内容や提供方法に満足であるとの評価を得た。本システムを実装して継続的に運営することで、医療従事者の資質向上や、それを介した国民医療の質的向上に貢献できることはもちろん、医療現場の問題点やニーズを有効にとらえることができるようになるだろう。
結論
本研究の遂行により、1) 医療現場からの事例素材の効果的な収集法の構築とその実践、2) 事例の体系的分類・解析と教育的臨床事例への加工、ならびに 3) 教育的臨床事例の提供による、臨床スキルの教育、というサイクルと、そのためのメディア、方法論を確立できた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本システムは、医療従事者の資質向上にきわめて有用なシステムであると同時に、薬物治療に関連したさまざまな問題点や創薬ニーズを医療現場から吸収することができるシステムでもある。したがって、薬学的観点から見ても、創薬や製剤改良、育薬にとってきわめて有用なツールとなりうると考えられる。また、リスクマネジメント学の観点からは、他の社会科学領域にも応用可能なコンセプトを提唱するものとして、学術的にすぐれた社会実験結果であるといえるだろう。
臨床的観点からの成果
本研究の遂行により、1) 医療現場からの事例素材の効果的な収集法の構築とその実践、2) 事例の体系的分類・解析と教育的臨床事例への加工、ならびに 3) 教育的臨床事例の提供による、薬剤師の臨床薬学的スキルの教育、というサイクルを安定的に運用し、教育的臨床事例を間断なく作出し、多様な媒体を用いて、広く医療従事者に提供することができた。構築したシステムは、薬剤師をはじめとする医療従事者の資質向上や卒前教育に極めて効果的な教育・研修システムであるといえよう。
ガイドライン等の開発
本研究において確立した臨床事例の解析手法の一部は、日本医師会「医療従事者のための医療安全対策マニュアル」作成の過程で活用された。
その他行政的観点からの成果
VOD による教育研修コンテンツ提供システムに関して、その運営委託先である特定非営利活動法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンターは、薬剤師認定制度認証機構よりプロバイダーの認証を受けた。そして、本研究成果の一環である VOD 育薬セミナー及び会場型育薬セミナーが、DLM認定薬剤師研修制度 (全国で唯一認められた「特定領域認定制度」である) の認定単位となった。
その他のインパクト
薬事日報 2006 年 6 月 30 日号で紹介された。研究会(ヒヤリハット事例に学ぶ「薬剤業務リスクマネジメント」研究会)を2006年5月 及び 2007年7月の二回開催した。本システムの運営事務を継承した特定非営利活動法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンターは、本システムの社会実装に関して、科学技術振興機構 社会技術研究開発事業「研究開発成果実装支援プログラム」の実装支援対象に選定された(平成 20 年度より 3 年間)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
総説
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
「ヒヤリハット研究会」開催×2

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-