輸血用血液の安全性向上のための異常プリオン検出系の開発

文献情報

文献番号
200735009A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液の安全性向上のための異常プリオン検出系の開発
課題番号
H17-医薬-一般-052
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
  • 水澤 左衛子(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変異型CJDは血液を介して感染することが明らかとなり、輸血の安全性向上にはプリオン病の感染を予防する高感度の検出法や除去・不活化法の開発が必要である。現在の異常プリオンの評価はIn vivoによって行なわれ、結果が得られるまで長期間を要する。我々は細胞培養を用いたin vitroの評価系を確立し、短期間に異常プリオン検出できる方法の開発を目指した。さらに血液中の異常プリオンの存在様式についての解析も目指した。
研究方法
昨年度、ウエスタンブロット(以下WB)法によって異常プリオンのバンドが検出された感染細胞を経時的に取り、異常プリオンの発現の変化を解析した。さらにin vivoにおける病原性を解析するために、感染細胞をマウスに接種した。また、培養上清中でのプリオンの存在様式を解析するために、抗プリオン抗体を付けた磁気ビーズを感染細胞由来の培養上清中に添加し、結合する生体分子を除去することによって異常プリオンの感染価の変化を解析した。さらに、ヒト白血病細胞株に培養上清を加え、異常プリオンの伝達性の有無を解析した。また、ヒト細胞株やヒト血小板を基質としたPMCA(Protein misfolding Cyclic Amplification)法による異常プリオンの増幅法も検討した。
結果と考察
BSEの脳乳剤を感染させた細胞株は約20週の継代の後、WB法によって異常プリオンが検出できるようになった。マウスでの病原性については、現在のところ発症は確認されていないが、経過を追っている。また、凍結保存した感染細胞を融解し、培養しても異常プリオンの産生が確認され、感染細胞の保存が可能であることが判明した。一方、培養上清を抗プリオン抗体で処理しても感染価の低下はなく、トライトン処理によって感染価が増加した。トライトン処理後、抗プリオン抗体で処理することによってプリオンの感染価は著しく低下した。以上から感染細胞から産生される異常プリオンは、膜に包まれた粒子の中に存在することが示唆された。また、PMCA法によるヒトプリオン増幅法の検討では、増幅は確認できなかった。
結論
我々が確立したin vitro評価系では4から5週間以内に結果が得られ、脳乳剤では得られないような感染細胞から産生される異常プリオンの性状等の解析が可能であった。また、凍結保存が可能なため、必要に応じていつでも融解して使用できることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200735009B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血用血液の安全性向上のための異常プリオン検出系の開発
課題番号
H17-医薬-一般-052
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
  • 水澤 左衛子(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変異型CJDは血液を介して感染することが明らかとなり、輸血の安全性向上のためには、プリオン病の感染を予防する高感度の検出法や除去・不活化法の開発が必要である。我々は細胞培養を用いたウシ海綿状脳症(以下BSE)由来プリオンのin vitro感染を確立し、 in vivoよりも短期間に結果が得られる評価法の開発を目指した。また、血液中に存在する異常プリオンの存在様式の解析のために感染細胞の培養上清について詳細に解析した。
研究方法
BSEに感染したウシの脳乳剤をマウス、ヒト、ラット由来の神経系及び血球系の細胞株に添加し、6ヶ月以上継代後、ウエスタンブロット(以下WB)法によって感染の有無を検討した。WB法で陽性バンドが検出された細胞は、マウスに接種して病原性を検討した。また、感染細胞の上清を段階希釈後非感染細胞に接種し、4から5週間継代後、WBにてプリオンの感染価を定量した。さらに、プリオンの存在様式を解析するために、抗プリオン抗体を付けた磁気ビーズを感染細胞由来の培養上清中に添加し、結合する生体分子を除去することによって異常プリオンの感染価の変化を解析した。また、ヒト細胞株やヒト血小板を基質としたPMCA(Protein misfolding Cyclic Amplification)法による異常プリオンの増幅法も検討した。
結果と考察
BSEの脳乳剤を感染させた細胞株は、数ヶ月以上の潜伏期を経て異常プリオンが検出できるようになった。ヒトの神経由来細胞株と白血病細胞株の数種類に感染が成立したと考えられた。その中の1つの細胞株は培養上清中に感染性のプリオンを産生し、非感染細胞を用いることによって、4から5週間でプリオンの感染価の測定が可能であった。また、凍結保存した感染細胞を融解し、培養しても異常プリオンの産生が確認され、感染細胞の保存が可能であることも判明した。一方、培養上清を抗プリオン抗体で処理しても感染価の低下はなかったが、トライトン処理後、抗プリオン抗体で処理することによってプリオンの感染価は著しく低下した。これによって感染細胞から産生される異常プリオンは、膜に包まれた粒子の中に存在することが示唆された。また、PMCA法によるヒトプリオン増幅法の検討では、増幅は確認できなかった。
結論
BSE由来のプリオンを用いて in vitro感染系を確立した。非感染細胞と組み合わせることによって4から5週間で異常プリオンが検出可能になった。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-04-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでBSE由来プリオンのin vitro感染系はなく、in vivo による評価がなされていた。我々が培養に成功したBSE由来のプリオンは、長期間の継代によって細胞株に馴化した株と考えられ、感染細胞から培養液中に感染性を持つプリオンが産生される。非感染細胞を用いると4週間前後で感染価が測定可能であり、in vivoに比べ短時間で結果を得ることができる。さらに脳乳剤に比べて血液に類似していることから除去等の評価に貢献すると考えられる。
臨床的観点からの成果
我々が得たBSE感染細胞を用いて、異常プリオンタンパクの産生量を指標にプリオン病治療薬のスクリーニングに応用することが可能である。また、感染価測定に用いている細胞にvCJD感染疑いの検体(血液やリンパ球、可能であれば扁桃)を感染させることによって、診断に応用できる可能性もある。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
血液製剤の安全性を確保するためにプリオン除去効率を検討することが求められていたが、適当な系がないために評価が困難であった。我々の系をさらに改良することで、測定システムがより安定化すれば、血液製剤でのプリオン除去の評価に応用できる可能性がある。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-