新型コロナウイルス感染症対策がリハビリテーション専門職の働き方に及ぼす影響の検証とその対策に資する研究

文献情報

文献番号
202006045A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症対策がリハビリテーション専門職の働き方に及ぼす影響の検証とその対策に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2047
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 哲也(順天堂大学 保健医療学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,933,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症対策がリハビリテーション専門職の需給政策や働き方に及ぼす影響を明らかにするために以下の研究を行った。
研究Ⅰ:新型コロナウイルス感染症対策がリハビリテーション専門職の働き方に及ぼす影響の検証とその対策に資する研究
研究Ⅱ:新型コロナウイルス感染症に対応する理学療法士の業務関連ストレスと働き方に関する研究
研究Ⅲ:医療機関でのリハビリテーションを終えた患者の自宅での自主トレーニングを遠隔で支援するリハビリテーション専門職の働き方の検証及び需給政策に及ぼす影響の調査
研究方法
研究Ⅰ:対象は全国の医療機関からクラスターサンプリングによる多段抽出法を用いて、病院2,502施設を抽出し、インターネットアンケートシステムを用いたアンケート調査を行った。
研究Ⅱ:対象は全国の医療機関から集中治療専門医研修施設、特定機能病院、地域支援病院から487施設を抽出し、インターネットアンケートシステムを用いたアンケート調査を行った。
研究Ⅲ:対象はリハビリテーションの算定日数上限に達した心疾患患者とし、遠隔支援群と外来通院で運動を続けるコントロール群にランダムに割り付けた。遠隔支援群では、遠隔診療システムを使用して、1回20分、週1~2回、1か月間の遠隔支援を行った。
結果と考察
研究Ⅰ:アンケート回答数(率)は1,350施設(54.0%)であった。解析対象は回答不同意施設を除く1,326施設をとした。セラピスト一人当たりの患者数は減少していたが単位数が減少したとする施設は少なかった。感染対策は多岐にわたったが残業は増えておらず、対策がより効率的に行えるようになっていた。外来通院を制限する患者や退院を希望する患者も多く、在宅・訪問リハビリテーションのシステム強化の必要性が認められた。感染対策以外に新たに発生した業務も多岐にわたったが、他の業務を効率化して感染対策を行っている施設が多かった。外来停止による影響があった患者は多く、訪問リハビリや遠隔リハビリなどの各種代替え方法が導入されていた。
研究Ⅱ:分析対象584名のうち、220名(37.7%)が現在もレッドゾーンで理学療法を行っており、85名(14.6%)は半年以上レッドゾーンで理学療法を行っていた。レッドゾーンでは基本的動作の獲得に対する理学療法が多く行われていた。感染対策が通常診療に比べてかなり負担と感じており、94%は心理的にも何らかのストレスを感じていた。また、感染することへの不安だけでなく、周囲からの偏見から差別を受けたなど「社会的ストレス」も少なくなかった。新型コロナウイルス感染症対策はレッドゾーンで働く理学療法士には十分定着しており、業務の効率化が進んでいた。
研究Ⅲ:高齢者はタブレット端末の操作を含むインターネットリテラシーが低く、多くの時間と労力を要した。遠隔支援は外来通院で運動を続けることと同等の運動機能維持効果が認められた。また、遠隔支援は運動や健康管理の行動変容を起こした。遠隔支援の総合的な満足度は高く、遠隔支援の内容も「適切であった」とすべての患者が回答した。
結論
 リハビリテーション専門職の感染対策の適応が進み、診療密度を高くしながら効率的に業務が行われていた。コロナ禍では1箇所に患者を集めることを避けるためにも、リハビリテーション専門職の病棟配置を進めることと、外来リハビリテーションが大きく制限されるため、在宅・訪問リハビリテーション、遠隔リハビリテーションのシステム強化が必要である。
 理学療法士の感染症対策は十分定着しており、業務の効率化が進んでいる。重症病棟での理学療法士の定着に向けて理学療法の効果検証をさらに進めるべきである。
 経験のある理学療法士であれば、各種ICTを利用した患者指導は十分可能である。現状の診療報酬と同等額の遠隔支援のコスト化については、さらなる遠隔支援研究による効果検証及び遠隔支援・遠隔指導のガイドラインが必要である。

公開日・更新日

公開日
2024-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006045C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 研究Ⅰでは病院2,502施設に対して1,350施設(54.0%)から回答を得た。リハビリテーション専門職の感染対策の適応が進み、診療密度を高くしながら効率的に業務が行われていた。研究Ⅱでは、584名の回答を得ることができた。これは理学療法士のレッドゾーン内での業務についての現時点で最大級の調査となった。584名の分析対象者のうち、「ストレスがない」と回答したのはわずか6名であった。研究Ⅲでは、経験のある理学療法士であれば、各種ICTを利用した患者指導は十分可能であることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
 リハビリ専門職の感染対策の適応が進み、診療密度を高くしながら効率的に業務が行われていた。蜜を避け、病棟配置を進めることと、在宅・訪問リハビリ、遠隔リハビリのシステム強化の必要性が明らかになった。また、重症病棟での理学療法士の定着に向けて効果検証をさらに進める必要性が明らかになった。研究Ⅲでは、現状の診療報酬と同等額の遠隔支援のコスト化については、さらなる遠隔支援研究による効果検証及び遠隔支援・遠隔指導のガイドラインの必要性が明らかになった。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
 リハビリ部門で実施している感染対策は多岐にわたっていたが、時間外労働は「不変」または「減少」が83.7%を占めていた。リハビリ部門では感染対策の効率化が進み、需給に影響するほどではなかった。リハビリ専門職の需給を考える上で、業務の効率化は極めて重要であり、本調査からは、個々の感染対策は、需給に影響するほどの時間を割くことはなく、むしろ普段の業務の中に効率的に組み込まれて、リハビリ専門職が感染対策に次第に順応していることが窺えた。
その他のインパクト
NHKジャーナルで一部を紹介した(放送日:2021/03/17「コロナ禍で注目 遠隔心臓リハビリテーション」)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
Physical Therapy and Physical Therapist during COVID-19 Pandemic
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saitoh M, Takahashi T, Morisawa T, et al.
Remote Cardiac Rehabilitation in Older Cardiac Disease: A Randomized Case Series Feasibility Study
Cardiol Res , 13 (1) , 57-64  (2022)
doi: 10.14740/cr1346
原著論文2
Morisawa F, Nishizaki Y, Irie Y, et al.
Association between physiotherapist burnout and working environment during the coronavirus disease 2019 pandemic in Japan: A multicenter observational study
PLoS One , 17 (9) , e0275415.-  (2022)
10.1371/journal.pone.0275415
原著論文3
高橋 哲也, 森沢 知之, 齊藤 正和, 他
レッドゾーンで新型コロナウイルス感染症患者に対応する理学療法士の心理的ストレスについて
理学療法学 , 48 (6) , 620-627  (2021)
https://doi.org/10.15063/rigaku.12145
原著論文4
Morisawa F, Nishizaki Y, Nojiri S, et al.
Association between physiotherapist sleep duration and working environment during the coronavirus disease 2019 pandemic in Japan: A secondary retrospective analysis study
PLoS One , 19 (7) , e0306822-  (2024)
doi: 10.1371/journal.pone.0306822

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
2025-06-04

収支報告書

文献番号
202006045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,933,000円
(2)補助金確定額
8,853,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,080,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,623,963円
人件費・謝金 954,166円
旅費 0円
その他 4,275,840円
間接経費 0円
合計 8,853,969円

備考

備考
2020年末からのPCR検査陽性者数の増加により、順天堂医院の外来心臓リハビリテーション患者が制限されたことにより、対象者のリクルートに困難を極め、予定されていた症例数に達することなく研究期間が終了したため。

公開日・更新日

公開日
2021-11-29
更新日
-