文献情報
文献番号
199700406A
報告書区分
総括
研究課題名
電解水の有効性に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小宮山 寛機(北里研究所・基礎研究所・所長)
研究分担者(所属機関)
- 堂ヶ崎知格(麻布大学環境保健学部・助教授)
- 西本右子(神奈川大学理学部・助手)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
最近食塩を添加した水を電気分解し生成される次亜塩素酸ナトリウム溶液(電解水)は優れた殺菌作用を示し、低毒性でしかも従来の多様な消毒液に比較し、残留性がほとんど無いために環境に優しく、経済性も優れており食品消毒への利用が認められたならば社会的見地から見てその有用生は大である。現在食品関係の消毒に利用する試みがなされているが食品衛生法に抵触することからその使用は問題となっている。そこで電解水の食品および厨房への応用を研究した文献調査、次亜塩素酸ナトリウムを希釈した水溶液との物理化学的生物学的同等性、および次亜塩素酸ナトリウムを希釈した水溶液と同等な電解水溶液に関するスペックのあり方に対する検討を行う。
研究方法
1.文献調査
平成8及び9年度に発表された電解水の食品衛生への応用に関する調査をJICSTおよびJAFICで本邦で投稿された文献を検索し内容によって分類した(小宮山)。
2.電解水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との物理化学的および生物学的同等性
試験管内において、大腸菌およびブドウ球菌の2株を用いて強酸性電解水ならびに無隔膜電解水の殺菌作用を次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比較検討した(堂ヶ崎)。腸管出血性大腸菌O157ならびにサルモネラ菌に対するこれら水溶液の殺菌効果ならびに培養細胞に対する毒性をを調べた(小宮山)。西本は以前の研究結果から強酸性電解水溶液は酸性の次亜塩素酸ナトリウムと同様の組成であることが証明していたので、1M塩酸と有効塩素5%の次亜塩素酸ナトリウムおよび食塩を混合し、物理科学的に電解酸性水と比較検討した。
3.規程についての検討方法
次亜塩素酸ナトリウムを希釈した水溶液と同等な電解水溶液に関するスペックのあり方について2人の班員と4人の研究協力者で検討した。食品添加物として認められている次亜塩素酸ナトリウムの食品添加物公定書に記載されている規格を基に、電解水が合致するか否かを中心に文献により検討した。
平成8及び9年度に発表された電解水の食品衛生への応用に関する調査をJICSTおよびJAFICで本邦で投稿された文献を検索し内容によって分類した(小宮山)。
2.電解水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との物理化学的および生物学的同等性
試験管内において、大腸菌およびブドウ球菌の2株を用いて強酸性電解水ならびに無隔膜電解水の殺菌作用を次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比較検討した(堂ヶ崎)。腸管出血性大腸菌O157ならびにサルモネラ菌に対するこれら水溶液の殺菌効果ならびに培養細胞に対する毒性をを調べた(小宮山)。西本は以前の研究結果から強酸性電解水溶液は酸性の次亜塩素酸ナトリウムと同様の組成であることが証明していたので、1M塩酸と有効塩素5%の次亜塩素酸ナトリウムおよび食塩を混合し、物理科学的に電解酸性水と比較検討した。
3.規程についての検討方法
次亜塩素酸ナトリウムを希釈した水溶液と同等な電解水溶液に関するスペックのあり方について2人の班員と4人の研究協力者で検討した。食品添加物として認められている次亜塩素酸ナトリウムの食品添加物公定書に記載されている規格を基に、電解水が合致するか否かを中心に文献により検討した。
結果と考察
結果=1.文献調査
平成8および9年度に発表された電解水の食品関係の文献は1.解説(引用文献無し)=6報、2.総説=11報、3.実験報告=4報、4.他の利用法=10報、5.主として物理化学的性質に関する総説=9報、6.ほぼ無関係=4報であった。この様に消毒関係(1ー3)では実験報告は少なく大部分は解説、総説であった。総説および解説は多くの場合電解水とはなにか、その生成装置、有効化学種、殺菌効果、安全性、食品衛生分野への応用例、使用に際しての留意点、今後の展望などについて述べている。
2.電解水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との物理化学的および生物学的同等性
大腸菌およびブドウ球菌に対する強酸性電解水ならびに2種の無隔膜電解水の殺菌作用を次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比較検討した。強酸性水が低濃度の塩素量で効果が強かったが、他の2種の溶液の効果は次亜塩素酸ナトリウム水溶液とほぼ同等であった(堂ヶ崎)。腸管出血性大腸菌)157ならびにサルモネラ菌に対する効果は、いずれの水溶液でもほぼ同等の作用を認めた。さらに細胞障害性について比較検討したところ、無隔膜電解水は次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同等であったが、強酸性水では約6.8倍細胞障害性は強かった(小宮山)。物理化学的研究では1M塩酸と有効塩素5%の次亜塩素酸ナトリウムおよび食塩を混合し、物理科学的に電解酸性水と比較検討した。その結果、両液のpH、酸化還元電位、有効塩素濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度はほぼ一致した(西本)。
3.規程について
食品添加物として認められている次亜塩素酸ナトリウムの食品添加物公定書に記載されている規格を基に、電解水が合致するか否かを中心に検討した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液には化学平衡の関係により次亜塩素酸が含まれていると解釈される。電解水との違いは、原液の有効塩素濃度のみであると考えられた。
考察=
文献検索では食品消毒関係では実験報告は少なく大部分は解説、総説であった。 総説および解説は多くの場合電解水とはなにか、その生成装置、有効化学種、殺菌効果、安全性、食品衛生分野への応用例、使用に際しての留意点、今後の展望などについて述べている。電解水はパイロット的に食品衛生分野に導入され始めていることから、将来への検討資料として指針になる。比較的よくしらべられているが、引用文献が少ない総説もあり、具体的にデータを検討する出来ない。特に解説書として分類した文献は、引用文献が無かった。少なくとも代表的な文献ないし総説の紹介があればさらに参考になる。
電解水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との物理化学的および生物学的同等性では、同じ条件で比較検討することに意義があり、食品汚染で問題となっている数種の菌に対する殺菌作用を比較した。従来発表されている強酸性電解水が低濃度の塩素量で効果を発揮すること、無隔膜法で生成された電解水は次亜塩素酸ナトリウムと同等の効果であったことは、従来の研究結果を支持する結果であった。また、物理化学的検討から次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸で酸性とした場合物理化学的には電解酸性水との差は認められなかった。
一方、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同等な電解水溶液に関するスペックのあり方について文献上で検討した。文献的検索では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液はNaClOを主として微量の HClOを含む液体である(ぞれぞれの化学種の濃度はpHによって異なる。平衡状態にあるのでいずれの化学種も存在する。低pHではCl2が生じてくる)。食塩を添加して電気分解した電解水もこれら3種類の化学種を含んでおり、主な成分は同である。
従って、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と電解水との違いは、原液の有効塩素濃度のみであると考えられた。即ち、電解水はあらかじめ希釈された(使用時の濃度に希釈された)次亜塩素酸ナトリウム製剤と言えよう。
平成8および9年度に発表された電解水の食品関係の文献は1.解説(引用文献無し)=6報、2.総説=11報、3.実験報告=4報、4.他の利用法=10報、5.主として物理化学的性質に関する総説=9報、6.ほぼ無関係=4報であった。この様に消毒関係(1ー3)では実験報告は少なく大部分は解説、総説であった。総説および解説は多くの場合電解水とはなにか、その生成装置、有効化学種、殺菌効果、安全性、食品衛生分野への応用例、使用に際しての留意点、今後の展望などについて述べている。
2.電解水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との物理化学的および生物学的同等性
大腸菌およびブドウ球菌に対する強酸性電解水ならびに2種の無隔膜電解水の殺菌作用を次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比較検討した。強酸性水が低濃度の塩素量で効果が強かったが、他の2種の溶液の効果は次亜塩素酸ナトリウム水溶液とほぼ同等であった(堂ヶ崎)。腸管出血性大腸菌)157ならびにサルモネラ菌に対する効果は、いずれの水溶液でもほぼ同等の作用を認めた。さらに細胞障害性について比較検討したところ、無隔膜電解水は次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同等であったが、強酸性水では約6.8倍細胞障害性は強かった(小宮山)。物理化学的研究では1M塩酸と有効塩素5%の次亜塩素酸ナトリウムおよび食塩を混合し、物理科学的に電解酸性水と比較検討した。その結果、両液のpH、酸化還元電位、有効塩素濃度、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度はほぼ一致した(西本)。
3.規程について
食品添加物として認められている次亜塩素酸ナトリウムの食品添加物公定書に記載されている規格を基に、電解水が合致するか否かを中心に検討した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液には化学平衡の関係により次亜塩素酸が含まれていると解釈される。電解水との違いは、原液の有効塩素濃度のみであると考えられた。
考察=
文献検索では食品消毒関係では実験報告は少なく大部分は解説、総説であった。 総説および解説は多くの場合電解水とはなにか、その生成装置、有効化学種、殺菌効果、安全性、食品衛生分野への応用例、使用に際しての留意点、今後の展望などについて述べている。電解水はパイロット的に食品衛生分野に導入され始めていることから、将来への検討資料として指針になる。比較的よくしらべられているが、引用文献が少ない総説もあり、具体的にデータを検討する出来ない。特に解説書として分類した文献は、引用文献が無かった。少なくとも代表的な文献ないし総説の紹介があればさらに参考になる。
電解水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との物理化学的および生物学的同等性では、同じ条件で比較検討することに意義があり、食品汚染で問題となっている数種の菌に対する殺菌作用を比較した。従来発表されている強酸性電解水が低濃度の塩素量で効果を発揮すること、無隔膜法で生成された電解水は次亜塩素酸ナトリウムと同等の効果であったことは、従来の研究結果を支持する結果であった。また、物理化学的検討から次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸で酸性とした場合物理化学的には電解酸性水との差は認められなかった。
一方、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同等な電解水溶液に関するスペックのあり方について文献上で検討した。文献的検索では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液はNaClOを主として微量の HClOを含む液体である(ぞれぞれの化学種の濃度はpHによって異なる。平衡状態にあるのでいずれの化学種も存在する。低pHではCl2が生じてくる)。食塩を添加して電気分解した電解水もこれら3種類の化学種を含んでおり、主な成分は同である。
従って、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と電解水との違いは、原液の有効塩素濃度のみであると考えられた。即ち、電解水はあらかじめ希釈された(使用時の濃度に希釈された)次亜塩素酸ナトリウム製剤と言えよう。
結論
1.最近の電解水の食品生成管理に関する文献は総説書(解説書)が多くなっている。
2.強酸性電解水は低濃度の塩素量でも殺菌作用を発揮し、無隔膜法により生成される電解水は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同等な作用であり、従来の結果を支持できる。また細胞毒性も殺菌活性と同様な傾向であった。
3.電解水は無隔膜法あるいは隔膜法で生成されても、使用時に希釈されて使用される次亜塩素酸ナトリウム(食品添加物公定書に記載されている)水溶液と同等と考えられる。但し、強酸性電解水は有効塩素濃度が低くても効果を示す。これは溶存している化学種の組成比が異なるので(次亜塩素酸濃度が高い)効果が強いが、この濃度については公定書では規定されていない。即ち、電解水はあらかじめ希釈された(使用時の濃度に希釈された)次亜塩素酸ナトリウム製剤と言える。
2.強酸性電解水は低濃度の塩素量でも殺菌作用を発揮し、無隔膜法により生成される電解水は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同等な作用であり、従来の結果を支持できる。また細胞毒性も殺菌活性と同様な傾向であった。
3.電解水は無隔膜法あるいは隔膜法で生成されても、使用時に希釈されて使用される次亜塩素酸ナトリウム(食品添加物公定書に記載されている)水溶液と同等と考えられる。但し、強酸性電解水は有効塩素濃度が低くても効果を示す。これは溶存している化学種の組成比が異なるので(次亜塩素酸濃度が高い)効果が強いが、この濃度については公定書では規定されていない。即ち、電解水はあらかじめ希釈された(使用時の濃度に希釈された)次亜塩素酸ナトリウム製剤と言える。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-