腎臓病・透析患者におけるCOVID-19対策の全国調査および易感染性・重症化因子の後方視的解析

文献情報

文献番号
202006040A
報告書区分
総括
研究課題名
腎臓病・透析患者におけるCOVID-19対策の全国調査および易感染性・重症化因子の後方視的解析
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2042
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
南学 正臣(東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
  • 安藤 亮一(清湘会記念病院 腎臓内科)
  • 篠田 俊雄(つくば国際大学 医療保健学部医療技術学科)
  • 竜崎 崇和(東京都済生会中央病院 腎臓内科)
  • 中元 秀友(埼玉医科大学 総合診療内科)
  • 酒井 謙(東邦大学 医学部)
  • 花房 規男(東京女子医科大学 血液浄化療法科)
  • 柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学)
  • 岩上 将夫(筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野)
  • 菅原 有佳(東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではCOVID-19蔓延下における腎臓病患者の診療体制・感染予防対策を全国的に調査し、その結果から課題抽出を行い今後の望ましい医療提供体制提示へのエビデンスとすることを目的とした。また、施設レベルでCOVID-19罹患CKD患者の治療内容や転帰を調査するとともに、既に日本透析医会・日本透析医学会で行われている「透析患者におけるCOVID-19調査」に登録された症例に対し、検査値・居住形態・通院方法などについて追加調査を行い、これまでの調査結果と合わせて重症化因子の解析を行うことを目的とした。
研究方法
COVID-19下における腎臓病患者(血液透析患者などの末期腎不全患者を含む)の診療体制・感染予防対策について、①日本腎臓学会認定教育施設704施設、②日本透析医会・日本透析医学会会員施設 計4,198施設を対象とした2つの大規模全国アンケート調査を実施した。これらのアンケートの自由記載欄を参考に、COVID-19対策に特に努力されている施設を抽出し、同意が得られた8施設について実際の対策内容の詳細なオンライン調査を行った。
また、①の調査の一部としてCOVID-19罹患慢性腎不全(CKD)患者の治療内容及び転帰を調査した。さらに、既に実施されていた「透析患者におけるCOVID-19調査」の参加症例について、居住形態、通院方法、検査値などについての追加調査を行い、重症化因子の解析を行った。
結果と考察
大規模全国アンケート調査の結果、腎臓病診療・透析診療においての現在の問題点が浮き彫りとなった。腎臓内科施設においては、外来・入院患者数が減少し、また対面の機会を減少させるための診療間隔の延長・電話/オンライン診療実施といった措置に伴う不都合・収益悪化も報告された。これらに伴い慢性腎臓病患者が適切な診療を受けられていない可能性や、今後の医療体制維持に悪影響を及ぼす可能性が懸念された。透析施設においては、一部の感染予防対策の実施率がCOVID-19蔓延後においても低いことや、個室隔離が可能な施設が少ないことなどが明らかとなった。COVID-19対策に特に努力されている8施設よりオンライン調査にて具体的な対策内容を聴取した。これらの内容については周知すべきものと考えられ、日本腎臓学会・日本透析医会・日本透析医学会ホームページ上で公表した。
①のアンケート回答施設において479例のCOVID-19罹患CKD患者が診療されていた。この治療内容・転帰について施設レベルでの集計を行ったところ、酸素投与を必要としたのは47.8%, 人工呼吸器管理を必要としたのは16.5%, 人工心肺装置(ECMO)を必要としたのは2.9%であった。また、死亡率は9.2%であった(転帰不明30.3%)。
「透析患者におけるCOVID-19調査」の追加調査では、126例について回答が得られ、うち31例が死亡の転帰を辿っていた。本邦血液透析患者のCOVID-19重症化危険因子として、一般人口においてと同様に年齢が大きな因子であり、また全身状態の不良や栄養状態の不良といった因子が影響することが示唆された。しかしながら、本邦透析患者におけるCOVID-19重症化因子を調査するためには、更なる症例の蓄積と詳細な調査が必要である。
結論
今回の大規模全国アンケート調査により、腎臓/透析領域におけるいくつかの問題点が浮き彫りとなった(腎臓内科施設:診療間隔の延長・電話/オンライン診療実施に伴う不都合、収益悪化、透析施設:一部の感染予防対策の低い実施率、個室隔離可能施設の少なさ等)。腎臓病患者のCOVID-19診療にあたっては、受け入れ可能病院が限られることから、それぞれの地域において、COVID-19患者の対応(自宅/ホテル待機、自施設で入院、転院、等)や受け入れ可能病院への紹介フローを整理しておくことが望まれる。
また、COVID-19罹患CKD患者の死亡率は9.2%で、酸素投与、人工呼吸器管理を必要とした症例は各47.8%、16.5%あった。さらに、COVID-19罹患血液透析患者においては年齢および全身状態や栄養状態の不良が重症化危険因子である可能性が示唆された。これらの結果は速やかに学会ホームページ上に公開し、全国の施設への情報共有を図った。

公開日・更新日

公開日
2021-07-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006040C

収支報告書

文献番号
202006040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,424,000円
(2)補助金確定額
8,160,000円
差引額 [(1)-(2)]
264,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,006,269円
人件費・謝金 270,580円
旅費 0円
その他 3,939,584円
間接経費 1,944,000円
合計 8,160,433円

備考

備考
自己資金を433円使用した。

公開日・更新日

公開日
2021-06-10
更新日
-