有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究

文献情報

文献番号
200735005A
報告書区分
総括
研究課題名
有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-027
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 充生(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 )
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 杉山 雄一(東京大学大学院 薬学系研究科)
  • 頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
9,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
添付文書の問題点把握のため製薬企業及び医師にアンケート調査を実施し、また相互作用による有害事象報告をまとめた。トラスツズマブ療法に関する研究では、心障害、Infusion Reactionの発生状況に関し診療録調査及び関連因子について解析、評価した。トランスポーターによる細胞膜透過過程での薬物間相互作用として医薬品による発現誘導を検証した。P-糖タンパク質(P-gp)の活性型ビタミンD3による誘導応答を示す培養細胞系の確立を試みた。
研究方法
企業は日本製薬工業協会の協力を得て郵送法で、医師はwebでアンケート調査し、有害事象報告はPubmedで収集した。トラスツズマブ診療録から抽出した患者313名を対象に、心毒性発現の関連因子はCox比例ハザードモデルで評価した。Infusion Reaction発現の関連因子はロジスティック重回帰モデルで評価した。核内受容体(PPARα)リガンド(WY14643)又は非ステロイド性抗炎症薬ibuprofenを前投与したマウスに基質薬物(methotrexate)を経口で与え、血液中濃度をLC/MSで測定した。小腸由来のCaco-2にビタミンD受容体(VDR)とRXRを共発現させ、P-gp遺伝子(MDR-1)のプロモーター領域を用いたレポータープラスミドにより活性型ビタミンD3による転写調節領域を同定した。
結果と考察
添付文書記載順序、相互作用一覧表形式は高く支持されていた。相互作用による有害事象報告は86症例あった。心障害関連因子は心疾患既往歴の関連が、Infusion Reaction関連因子は抗がん剤治療歴が推定された。WY14643及びibuprofen投与群では、methotrexateの血中濃度が高くなったが、mRNAレベルではトランスポーター群の発現誘導はなかった。MDR-1遺伝子の上流領域を用いてP-gp誘導能を持つin vitro アッセイ系を構築した。
結論
添付文書様式は受け入れられていた。重篤副作用を起こす医薬品の組合せのDB化が必要である。トラスツズマブ投与による心障害及びInfusion Reaction発現には既往歴及び薬剤投与歴が推定され、副作用発現予測につながる。WY14643及びibuprofenの効果はトランスポーターmRNAの発現変動とは異なるメカニズムと示唆された。P-gp誘導能を持つin vitro アッセイ系を構築した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200735005B
報告書区分
総合
研究課題名
有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-027
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤充生(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 北條泰輔(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 杉山 雄一(東京大学大学院 薬学系研究科)
  • 頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
添付文書解析、アンケートにより有害事象に関わる相互作用の情報提供の現状と問題点を明らかとする。抗がん剤併用療法時の有害事象情報を診療録調査から明らかにし、より安全ながん薬物治療に資する。薬物間相互作用を予測するために、ヒト組織切片あるいは薬物代謝酵素と薬物トランスポーターを組み込んだ評価システム系を構築する。
研究方法
第二相薬物代謝酵素及びトランスポーターを介する薬物相互作用について、日米英の添付文書と文献情報と比較・検討し、企業及び医師に対し添付文書についてアンケート調査した。抗がん剤併用療法に関し、国立がんセンター中央病院における診療録調査を通じ、乳がんに使用されるトラスツズマブの心障害、infusion reactionの予測可能性を検討し、大腸がん治療に用いる抗がん剤併用療法4レジメンの有害事象発生率を調査して添付文書等と比較した。薬物間相互作用の実験研究では、ヒト腎組織切片や遺伝子発現系を用いたin vitro輸送試験により医薬品の阻害定数を測定し、さらに核内受容体リガンド投与・非投与によるマウスin vivo試験を行った。ヒトCYP3A4やP-gp関連遺伝子の発現プラスミドをヒト肝臓由来細胞のHepG2あるいは小腸由来のCaco-2に導入し、レポーター遺伝子の転写活性を測定した。
結果と考察
グルクロン酸抱合、トランスポーターの添付文書情報は各国で類似し、臨床現場でも支持されていた。抗がん剤併用療法における有害事象発生率の比較によって、患者の既往歴、投与法や支持療法の実施など条件の違いで発生する有害事象と発生率に違いが生じる可能性が明らかとなった。薬物間相互作用の実験研究では、ヒト腎組織切片を用いた輸送実験系を確立し、種々薬剤による阻害定数を測定した。トランスポーター阻害剤によりin vivoで血液中濃度が増加した。レポーター遺伝子の転写活性を測定により、極めて鋭敏に種々の誘導剤による誘導を評価することができた。
結論
第二相薬物代謝酵素、トランスポーター情報の提供は概ね適切であった。抗がん剤併用療法において既往歴及び薬剤投与歴は副作用発現の予測につながる。薬物トランスポーターによる組織への取り込み過程・排出過程の機能阻害が、薬物間相互作用の要因となることが明らかになった。CYP3A4あるいはP-gpのin vivo での誘導に類似したin vitro アッセイ系が確立できた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
抗がん剤併用療法で、患者既往歴、投与法、支持療法等の条件の違いで有害事象の種類と発生率に違いが生じる可能性を示した。グルクロン酸抱合、トランスポーターを介する相互作用の添付文書への反映状況を調査した。薬物間相互作用のリスク評価のために、ヒト組織・遺伝子発現系を用いたin vitro評価システムを確立し、試験成果の一般化を可能にした。in vitro試験からの予測を実証するための実験動物としてサルの有効性を報告した。研究成果は、JPET、DMD誌等、薬理学・薬物動態学領域の一流誌に掲載されている。
臨床的観点からの成果
抗がん剤併用療法で発生する有害事象やその発生率の予測により、併用療法の質の向上が期待出来る。日米欧の添付文書での相互作用の記載状況把握により、よりよい添付文書の記載のあり方を提示する。ヒトにおける薬物間相互作用評価システムの構築のため、循環血中からの消失に関わる取り込み過程での精度の高い予測法を確立した。本研究成果は、分子論に基づいた定量的なリスク評価を可能にし、臨床での安全性確保に大きく貢献する。米国FDAでもP-gpのガイドラインが公開されたところであり、国際的にも意義のある研究成果である。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドライン作成等の予定はないが、トランスポーターの薬物間相互作用の予測については、「薬物相互作用の検討方法について」(医薬審発第813号)(2001/06/04)において提案されており、ガイドラインの実施にあたって、より精度の高い予測法の開発という位置づけにある。
その他行政的観点からの成果
今後の医薬品添付文書の改訂、薬物動態・相互作用ガイドラインの改定等、本研究の成果が反映されるものと期待される。
その他のインパクト
製薬企業研究者が参加する研究集会で、研究成果を発表し、その有効性を積極的に訴えている。また、研究成果が分かるホームページを作成した。
http://www.nihs.go.jp/mss/kouseikagaku8.html

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
研究成果の概要の分かるホームページを作成した。 http://www.nihs.go.jp/mss/kouseikagaku8.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saito M, Hirata-Koizumi M, Matsumoto M, et al.
Undesirable effects of citrus juice on pharmacokinetics of drugs - Focus on recent studies.
Drug Saf, , 28 , 677-694  (2005)
原著論文2
Saito M, Hirata-Koizumi M, Miyake S,et al.
Comparison of information on the pharmacokinetic interactions of Ca antagonists in the package inserts from three countries (Japan, USA and UK).
Eur J Clin Pharmacol, , 61 , 531-536  (2005)
原著論文3
Hirata-Koizumi M, Saito M, Miyake S, et al.
Adverse events caused by drug interactions involving glucuronoconjugates of zidovudine, valproic acid and lamotrigine, and analysis of how such potential events are discussed in package inserts of Japan, UK and USA.
J Clin Pharm Ther, , 32 , 177-185  (2007)
原著論文4
齋藤充生,平田睦子,浦野 勉,他
スタチン系薬剤の他剤との臨床および非臨床薬物動態学的相互作用の比較.
医療薬学 , 33 , 291-300  (2007)
原著論文5
齋藤充生,平田睦子,浦野 勉,他
現行の添付文書に対する病院薬剤師の意識調査.
医療薬学 , 33 , 442-450  (2007)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
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