臨床及び非臨床のデータに基づく医薬品の催奇形性のリスク分類に関する研究

文献情報

文献番号
200735004A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床及び非臨床のデータに基づく医薬品の催奇形性のリスク分類に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 裕之(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 三橋 直樹(順天堂大学医学部附属静岡病院)
  • 生水 真紀夫(千葉大学大学院医学研究院)
  • 北川 浩明(虎の門病院)
  • 村島 温子(国立成育医療センター)
  • 濱田 洋実(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
  • 林 昌洋(虎の門病院)
  • 佐藤 信範(千葉大学大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の臨床及び非臨床データから催奇形性のリスクを評価する際の基準を検討するとともに、その検討結果と諸外国のリスク分類基準を参考に、医薬品の添付文書における記載等の情報提供の指針ともなり得る、より一般的かつ詳細な日本版リスク分類基準の確立に向けて、新しい視点に立った分類試案を提唱すること。
研究方法
 ある医薬品について、過去のヒトにおける研究結果(Study)、ヒトにおける過去の臨床経験(Experience)、動物実験データ(Animal experiment)をそれぞれ別に分類・明示し、それらを組み合わせる形式の、従来にない新しい分類を検討した。
結果と考察
 研究の結果、過去の研究結果をS0A、S0B、S1、S2、SXの5段階に、過去の臨床経験をE0、E1、E2、EXの4段階に、動物実験データをA0、A1、A2、AXの4段階にそれぞれ別に分類・明示し、その結果として5段階のリスクグレーディングを行い、さらに臨床的対応の原則的指針を示した新しいリスク分類として、SEA分類を構築、提唱することができた。
 本分類により、本年度までに本研究が明らかにしてきたわが国の現状における問題点は解決に向かうと考えられた。本分類は、研究結果も臨床経験も同等に重視した分類であり、現存の諸外国の分類基準の欠点を克服するものである。また、単なるリスクカテゴリーのグレードを示したものではないため、その根拠がはっきりと医師、薬剤師、さらには患者自身に伝わると考えられる。さらに本分類では、各リスクグレードに対応する臨床的な原則的指針が示されており、有用性が高いと考えられた。このSEA分類に対する、実在する医薬品情報の適合性を検討したところ、分類への情報の割付は概ね可能であった。
 しかしながら、S、E、Aのそれぞれの細分類の定義は本当に適切か、という点が最も問題であることが明らかとなった。また「研究」の定義は適切か、動物実験において催奇形性と胎仔致死作用を同列に扱ってよいのか、その医薬品が投与される妊娠時期をどう考慮するのか等の問題点が抽出された。
結論
 その確立が本研究の最終目的である、従来わが国になかったリスク分類基準として、新たに有用性の高いSEA分類を提唱することができた。ただし、本分類にも未だ解決すべき問題もあると考えられ、これらについては今後さらに十分な議論を重ねてより良い分類にしていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-03-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200735004B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床及び非臨床のデータに基づく医薬品の催奇形性のリスク分類に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 裕之(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 三橋 直樹(順天堂大学医学部附属静岡病院大学)
  • 生水 真紀夫(千葉大学大学院医学研究院)
  • 北川 浩明(虎の門病院)
  • 村島 温子(国立成育医療センター)
  • 濱田 洋実(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
  • 林 昌洋(虎の門病院)
  • 佐藤 信範(千葉大学大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医薬品の臨床及び非臨床データから催奇形性のリスクを評価する際のわが国の現状を詳細に解析し、その評価の基準を検討するとともに、その検討結果と諸外国のリスク分類基準を参考に、医薬品添付文書における記載等の情報提供の指針ともなり得る、より一般的かつ詳細な日本版リスク分類基準の確立に向けて、新しい視点に立った分類試案を提唱すること。
研究方法
 わが国の添付文書の記載とFDA・オーストラリア両分類について一致度等を詳細に検討するとともに、国内の様々な施設における催奇形性リスク評価の現状の分析、動物実験データの評価、さらに妊娠と薬情報センターのデータを解析した。その結果をふまえ、従来にない新しいリスク分類を検討した。
結果と考察
 添付文書の記載とFDA・オーストラリア両分類との一致度は高くなく、特に添付文書の記載は禁忌が多い傾向があった。また、添付文書がリスク分類の代替として使用されている現状と、にもかかわらず全く明確な指針となり得てない事実が認められた。一方、FDA分類では動物実験のデータ取り扱いに問題があった。妊娠と薬情報センター事業はきわめて有用であり、能動的なデータベース構築が期待され、これらをもとにした新しい分類確立の重要性が再認識された。
 その新しい分類として、過去の研究結果を5段階に、過去の臨床経験を4段階に、動物実験データを4段階にそれぞれ別に分類・明示し、その結果として5段階のリスクグレーディングを行い、さらに臨床的対応の原則的指針を示したSEA分類を構築、提唱することができた。
 本分類により、本研究が明らかにしてきたわが国の現状における問題点は解決に向かうと考えられた。本分類は、現存の諸外国の分類基準の欠点を克服するものであり、また各リスクグレードに対応する臨床的な原則的指針が示されているなど、有用性が高いと考えられた。SEA分類に対する、実在する医薬品情報の適合性を検討したところ、分類への情報の割付は概ね可能であった。

結論
 その確立が本研究の最終目的である、従来わが国になかったリスク分類基準として、新たに有用性の高いSEA分類を提唱することができた。今後さらに十分な議論を重ねて、より良い分類にしていく必要がある。また、妊娠と薬情報センター事業についてはさらなる推進が期待される。SEA分類と妊娠と薬情報センター事業の推進が、わが国における妊娠と薬に関する諸問題解決の鍵を握る。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果のうち、妊娠と薬に関して従来行われてきた臨床研究の解析結果は、この領域の研究の正しい方向性を明らかにし、今後のそうした学術研究の発展に不可欠なデータを示すものである。また、動物実験データの評価に関する研究成果は、ヒトの奇形発生に関与する薬剤の評価法の進歩につながるものであり、今後の生殖発生毒性学の進展に大いに寄与するものである。
臨床的観点からの成果
何よりも、実地臨床においてこれまである薬剤の催奇形性について的確な情報を得られなかった医師・薬剤師に、必要かつ十分な情報を提供する手段としてSEA分類を提唱できたことが、臨床的観点から見た最大の成果である。これは、絶対禁忌医薬品の投与の回避と根拠のない人工妊娠中絶の減少に結びつき、結果的にすべての妊娠患者、広くはすべての女性に対して利益を与える成果である。
ガイドライン等の開発
従来わが国になかったリスク分類基準として提唱できたSEA-U分類は、催奇形性リスクの具体的評価法を新たに確立する際の指標として役立ち、さらに、その手法を用いて妊婦及び授乳婦に使用される医薬品のリスク評価の全面的な見直しを行えば、「妊婦及び授乳婦に対する医薬品使用に関するガイドライン」の構築に結びつくものである。
その他行政的観点からの成果
SEA-U分類は実際に医療現場で役立つものを目指し、現在の添付文書の記載にも反映されやすい形でのリスク分類である。平成21,22年度にはそれぞれ4企業に協力をお願いし、実際にSEA-U分類を行ってもらい一部改訂した。今後もこの作業を積み重ねていく予定である。少子化の進展や国民ニーズの多様化・高度化が急速に進むわが国において、安心して子どもを生み育てる環境を整備していくのに役立ち、行政的観点からも価値が高い内容である。また「妊娠と薬情報センター」事業を効率よく推進することにも寄与すると考えられる。
その他のインパクト
平成20年2月10日に弘済会館(東京都千代田区)において、推進事業として講演発表会「妊娠とくすり-リスク分類の現状と新たな展開-」を開催し5つの講演を行った。研修認定薬剤師制度の認定単位2単位を取得できる講演会として、多数の薬剤師が参加した。医薬品の催奇形性のリスク分類に関する現状と問題点、および解決の方向性とSEA-U分類をはじめとした本研究班の取り組みを広く周知させることができた。

発表件数

原著論文(和文)
37件
原著論文(英文等)
101件
その他論文(和文)
49件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
100件
学会発表(国際学会等)
31件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
43件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ema M, et al.
Reproductive and developmental toxicity of degradation products of refrigerants in experimental animals.
Reprod Toxicol , 29 (1) , 1-9  (2010)
原著論文2
Ema M, et al.
Prenatal developmental toxicity of gavage or feeding doses of 2-sec-butyl-4,6-dinitrophenol in rats.
Reprod. Toxicol , 29 (3) , 292-297  (2010)
原著論文3
Ema M, et al.
Reproductive and developmental toxicity studies of manufactured nanomaterials.
Reprod. Toxicol , 30 (4) , 343-352  (2010)
原著論文4
Ogishima H, Hamada H, Yoshikawa H, Murashima A, et al.
High-dose unfractionated heparin therapy in a pregnant patient with antiphospolipid syndrome: a case report.
International Journal of Rheumatic Diseases, , 13 (3) , 22-35  (2010)
原著論文5
濱田洋実
日本における医薬品添付文書の記載要領と問題点.薬物治療コンサルテーション
妊娠と授乳 , 59-68  (2010)
原著論文6
安部加奈子、濱田洋実
てんかん合併妊娠
周産期医学 , 40 , 243-246  (2011)
原著論文7
小畠真奈、濱田洋実
精神疾患合併妊娠
周産期医学 , 40 , 250-253  (2011)
原著論文8
山口晃史、村島温子、他
妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性
日本感染症学会誌 , 84 , 449-453  (2010)
原著論文9
三橋直樹
妊娠とくすり
今日の治療指針 , 937-939  (2009)
原著論文10
Obata-Yasuoka M, Yoshikawa H, et al.
Midtrimester termination of pregnancy by using gemeprost in combination with laminaria in women who have previously undergone cesarean section.
J Obstet  Gynecol Res , 35 (5) , 901-905  (2009)
原著論文11
村島温子
エビデンスに基づく妊娠中の薬の使い方
日本医師会雑誌 , 139 , 2117-2121  (2011)
原著論文12
Yamada T, Minakami H, et al.
No maternal mortality from pandemic (H1N1) 2009 occurred in Japan.
BMJ  (2010)
原著論文13
生水真紀夫
産科医療の現場からみる今日の妊娠・出産   晩婚化・晩産化の進展が招く様々な問題
JOURNAL OF FINANCIAL PLANNING , 11 (116) , 7-11  (2009)
原著論文14
Yamaguchi K, Murashima A, et al.
Relationship of Th1/Th2 cell balance with the immune response to influenza vaccine during pregnancy.
J Med Virol , 81 (11) , 1923-1928  (2009)
原著論文15
Murashima A, et al.
Etanercept during pregnancy and lactation in a patient with rheumatoid arthritis: drug levels in maternal serum, cord blood, breast milk and the infant's serum.
Ann Rheum Dis , 68 (11) , 1793-1794  (2009)
原著論文16
Tanaka T, Murashima A, et al.
Safety of neuraminidase inhibitors against novel influenza A (H1N1) in pregnant and breastfeeding women.
CMAJ , 181 , 55-58  (2009)
原著論文17
Hayashi T, Murashima A, et al.
Outcome of prenatally diagnosed isolated congenital complete atrioventricular block treated with transplacental betamethasone or ritodrine therapy.
Pediatr Cardiol , 30 (1) , 35-40  (2009)
原著論文18
幸田幸直、濱田洋実、他
「妊娠と薬外来」における薬剤相談の取り組み
Pharmacy Today , 22 (2) , 9-13  (2009)
原著論文19
Shimada S, Minakami H, et al.
A high dose of intravenous immunoglobulin increases CD84 expression on natural killer cells in women with recurrent spontaneous abortion.
Am J Reprod Immunol , 62 (5) , 301-307  (2009)
原著論文20
Morikawa M, Minakami H, et al.
Outcome of pregnancy in patients with isolated proteinuria.
Curr Opin Obstet Gynecol , 21 (6) , 491-495  (2009)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-