文献情報
文献番号
202006028A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症の影響下における災害時の情報通信技術を活用した被災者の情報収集・支援システムの開発と実証に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2030
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 拓(京都経済短期大学 経営情報学科)
研究分担者(所属機関)
- 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
- 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
- 松川 杏寧(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
- 萩行 正嗣(株式会社ウェザーニューズ AIイノベーションセンター)
- 遠藤 史郎(東北医科薬科大学 医学部 感染症学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
80,271,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大規模災害発生時において、現状、支援が必要な避難所入所者及び在宅避難者(要支援避難者)の情報収集は、保健、医療、福祉、防災等 の各分野においては独自に実施され、災害の初期対応段階において支援者間で十分に共有さ れていないことが課題となっている。要支援避難者の情報を迅速かつ漏れなく収集し、各分野の支援者間で共有することで被災者の迅速な 支援へとつなげるとともに、支援者及び被災者 双方の負担を軽減することは急務となってい る。こうした背景から、令和元年度に内閣府(防災担当)が所管する災害時における様々な被災者支援制度活用に関する連絡協議会のもとに、 厚生労働省の連携により、医療・保健・福祉と防災の連携に関する作業グループ(連携WG) が設置され、被災直後の状況において、医療、保健、福祉、防災分野の関係者が共通で把握し なければならない事項を整理し、分野横断的に共有する基本的な調査項目について整理がなされた。連携WG においては、要支援避難者に関するアセスメント調査票が作成され、その収集のための情報通信技 術(ICT)を活用した迅速的・包括的な情報把握システム(避難者情報把握システム)の概念が整理された。 また、令和2年には、新型コロナウイルス感 染症が流行し、密集・密接・密閉を回避するた め、避難所を分散し、既存の宿泊施設等を活用することが検討されている。避難所が少人数 化・分散化され、また、密集・密接・密閉を避 けることから在宅避難者や車中泊避難者が増 大することが予想される。このような状況のなか、要支援避難者の把握や情報集約はこれまで以上に困難になると想定され、また新型コロナ ウイルス感染症対策の観点における情報収集 も必要となってくる。 本研究の目的は、連携WG で提案された、 避難者情報把握システムについて、新型コロナウイルス感染症を考慮に入れた形での構築に 向けたシステム開発と自治体におけるパイロットスタディを実施し、当該システムの妥当性や有用性を検討することである。
研究方法
被災者情報伝達システムは、被災者支に携わる関係者からの意見や被災者からの情報収集 フローを検討したうえで仕様を検討し、システム会社に発注して構築した。また、被災者から 情報を収集するための防災チャットボットも被災者支援に関わる関係者からの意見を踏まえて仕様を検討し開発した。これらは、実証実験等で自治体や福祉関係の災害支援者と協議を行い検討した。要支援避難者個人帳票の検討は、まず想定される被災者のニーズおよび自治体のニーズを 明確化し、情報収集・支援システムを活用した 業務フロー、他のシステムとの連携、市町村と県の情報の連携のあり方などを検討した。帳票項目・説明文および活用方法等について、被災者の状況を把握するための既存帳票、また新型コロナウイルス感染の可能性を把握するため の問診項目、および関係者へのヒアリング結果などを参考にしながら、研究班内の帳票ワーキ ンググループにおける議論などにより検討を 行った。また、全体研究班会議での議論、実証 実験の結果などを踏まえてブラッシュアップ を行った。 要支援避難者個人帳票を用いた情報把握システム等の開発、防災チャットボットを活用した情報収集システムの開発、要支援避難者個人帳票の検討は、鳥取県・北栄町、長野県・伊那市、熊本市の協力を得た実証実験や、実証実験 の協力自治体が参加した全体会議を開催し、実 災害による経験や知見を得ながら行った。 実証実験は、鳥取県・北栄町、長野県・伊那市、熊本市の3回を現地で実施するとともに、 鳥取県・北栄町・伊那市を結んだオンラインで の実証実験を含め計4回実施した。 また、鳥取県・北栄町、長野県・伊那市、熊本市などの実証実験の協力自治体も参加した 全体会議においては、自治体、他研究者と5回 にわたり意見交換を実施しながら社会実装に向けた提言及び課題についても検討を行った。 また、実証実験を踏まえて、被災者情報収集フローの改善を実施した。
結果と考察
下記の研究結果1・2・3・5によって、Dvics の全体フロー(資料1)を整理するとともに、その基幹部分を開発し、手順書の原案(目次は資料2)も作成した。また研究結果4・5 によって、帳票の質問項目を整理した(資料3)。 これらの検討から、社会実装に向けた課題の整理および提言を取りまとめた(資料4)。
結論
今後は、運用体制、法制度上の必要な措置、財源、個人情報に関わる法的整備などの検討など行いながら社会実装を進めていくことが必要である。
公開日・更新日
公開日
2022-05-20
更新日
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