新型コロナウイルス感染症に対応する看護職員の確保及び最適なマネジメント検討に向けた実態調査研究

文献情報

文献番号
202006027A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症に対応する看護職員の確保及び最適なマネジメント検討に向けた実態調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2029
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
武村 雪絵(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 真理(東京女子医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,389,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症の流行初期に感染患者を受け入れた病院、クラスター感染が発生した病院や障害者施設、軽症者等の宿泊療養施設で実施された看護職員の確保やマネジメント方策、及び、過去の新興感染症流行時に国内外の病院で実施された看護職員のマネジメント方策を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.医療施設・障害者施設調査
機縁法等により、受け入れ病院及びクラスター発生病院の看護管理者、クラスター発生障害者施設の管理者、クラスター発生病院・施設に派遣された感染管理認定看護師に研究協力を依頼した。2020年9〜12月にインタビューを実施し、看護職員のマネジメント方策と課題の共通点を抽出した。
2.宿泊療養施設調査
機縁法により宿泊療養施設で看護職の確保や業務調整を担った看護職に研究協力を依頼した。2020年8~10月にインタビューを実施し、看護職の確保や組織化、課題の共通点を抽出した。
3.文献調査
2001年1月~2020年12月に出版された新興感染症(重症急性呼吸器症候群、中東呼吸器症候群、ニパウイルス、エボラ出血熱、パンデミックインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症)に関する国内外の文献から、病院が看護職を含む職員に対して実施、もしくは看護管理者が実施したことを抽出した。
結果と考察
1.医療施設・障害者施設調査
15病院(クラスター発生病院6施設を含む)の看護管理者28名とクラスター発生病院に派遣された感染管理認定看護師2名、障害者施設は3施設の対応について施設管理者等4名と支援者を派遣した病院の看護管理者4名(うち2名は派遣者)にインタビューを実施した。
看護体制を構築するフェーズと看護職員を支援しながら組織運営を続けるフェーズがあり、受け入れ病院とクラスター発生病院では対応の迅速さや困難の程度は異なるが、実施していたマネジメントや課題は共通していた。診療の縮小と感染患者を受け入れる病棟(以下、専用病棟)を決定し、専用病棟に配置する看護職員を本人の意思、感染対策技術や看護実践能力、基礎疾患や妊娠、高齢者との同居や家族の反対の有無を基準に選択した。小規模病院や障害者施設でのクラスター発生時は自施設職員の再配置では必要人員を確保できず、他施設や民間職業紹介事業者から専用病棟で働く看護職を含めて確保した。障害者施設では入所者の特性から軽症者は施設で経過観察したため、夜間も含めて看護職の派遣を受けた。他施設からの介護職確保は困難であった。専用病棟・ユニットで働く職員にはさまざまな人的・物的支援が提供された。他部署の職員の負担や不安も理解し、施設全体の一体感の維持・醸成に努めていた。他施設から支援に入った看護職もこれらの支援を提供していた。
共通していた語りから、災害対応の一つとして新興感染症に対応する体制づくりや、幹部が職員の心身の健康と安全を守る宣言をする重要性が示唆された。管理者や他施設からの支援者に求められる力や地域の連携強化の必要性も明らかになった。
2.宿泊療養施設調査
4自治体で宿泊療養施設の管理的立場を担った5名(看護職4名、保健師1名)にインタビューを実施した。
保健師あるいは看護管理経験者(以下、管理経験者)が現場の管理監督者として看護提供体制の構築を担った。宿泊療養施設では、保健師、看護師、管理経験者のそれぞれの強みを理解して組み合わせて配置することが望ましく、確保方法で集められる人材が異なるため、複数の確保方法を組み合わせる必要性が示唆された。宿泊療養施設の看護職には高い看護実践能力と倫理観が求められたが、管理経験者がいることで、経験の浅い看護職等もチームの一員として働くことができた。本研究では、宿泊療養施設の看護職の心身の健康に深刻な影響はみられなかったが、頻回に看護職に面接して対応することや医療提供のための施設ではない場所で働く看護職の安全を守る環境づくりの必要性が指摘された。
3.文献調査
1179本の文献から包含基準・除外基準により71本の文献を抽出した。新興感染症流行時に当該患者を受け入れた病院が実施していたマネジメント方策は34カテゴリに整理され、組織運営や支援等多岐にわたった。
結論
本研究の参加施設は総合的で多面的なマネジメント方策を実施していた。災害対応の一つとして新興感染症に対応する体制づくりや職員の心身の健康と安全を守る宣言の重要性が示された。宿泊療養施設の看護職確保の方策と課題も明らかになった。今後に向けて、感染管理認定看護師の育成と地域の資源としての活用、管理的視点をもつ看護師の育成、看護管理者に求められる力、管理経験者を活用できる仕組み、地域のネットワークの構築・強化が必要なことがわかった。これらの知見は新型コロナウイルス感染症への対応を準備する病院や、将来の新興感染症流行に備えるために有用な示唆を提供する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型コロナウイルス感染症流行初期に感染患者を受け入れた病院やクラスター感染が発生した病院及び障害者施設、軽症者等の宿泊療養施設で実施された看護職員確保及びマネジメント方策を、それぞれの施設の看護管理者や派遣された感染管理認定看護師等にインタビューから明らかした。また、過去20年間の新興感染症流行時に国内外の病院で実施されたマネジメント方策を明らかにした。この研究で用いた複数事例研究手法を学会や書籍等で紹介したところ、文脈を残しつつ汎用性のある知見を抽出する有用な研究手法として反響があった。
臨床的観点からの成果
実施された方策を抽出するだけでなく、管理者の基本姿勢や思考プロセス、困難や課題と認識されたことも明らかにした。看護職員の確保と支援については、多くの施設で共通して実施されたプロセスをある程度具体性を保ちながら統合したことで、さまざまな現場に応用可能な方策として抽出できた。これらの知見は、新型コロナウイルス感染症への対応を準備する病院や、将来の新興感染症流行に備えるために有用な示唆を提供する。
ガイドライン等の開発
日本看護管理学会が厚生労働省委託事業として当研究の成果を「新型コロナウイルス感染症対応から学ぶマネジメント10のポイント」にまとめ、ホームページに公開。また、日本看護管理学会が開発した看護管理者対象のe-ラーニング教材にも当研究成果を反映した。その後、同学会が開発した「危機管理における看護マネジメント研修ガイドライン」における動画教材にも当研究成果を反映した。
その他行政的観点からの成果
令和3年度看護職員確保対策特別事業「新型コロナウイルス 感染症対応看護マネジメント研修実施事業」によるオンラインセミナー「新型コロナウイルス感染症対応から学ぶ看護マネジメント」で看護管理者対象に研究成果を還元した。
その他のインパクト
毎日新聞(2021年5月6日オンライン/2021年5月10日紙面)特集 新型コロナウイルス「「医療崩壊」の大阪で聞いた 看護師不足もたらす三つの要因」で紹介された。
週刊医学界新聞看護号第3430号(2021年7月26日)で「コロナ禍で見えた,次なる看護管理のミッション」として紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
Journal of Nursing Management, Japan Journal of Nursing Science
その他論文(和文)
3件
日本看護協会機関誌「看護」2021年73(4),2022年74(4)に総説発表、東京図書「はじめての事例研究」第2版第5章
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
2021年第25回日本看護管理学会学術集会演題発表4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
ガイドライン、e-ラーニング教材、危機管理における看護マネジメント研修ガイドライン用動画教材
その他成果(普及・啓発活動)
9件
セミナー3回、講演4件(2022年CNS看護学会、2022年医療マネジメント学会、2023年青森県看護協会、2024年九州・沖縄AP協議会)、マスコミ発表2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takemura Y, Inoue M, Ichikawa N, et al.
Key strategies for managing nursing care under the COVID-19 pandemic: A multiple-case study of nursing directors
Journal of Nursing Management , 30 (8) , 4042-4053  (2022)
10.1111/jonm.13844
原著論文2
Kida R, Takemura Y, Inoue M, et al.
Nursing management for temporary lodging facilities in Japan in the early stages of the COVID-19 pandemic: A multiple-case study
Japan Journal of Nursing Science , 20 (1) , e12507-  (2023)
10.1111/jjns.12507

公開日・更新日

公開日
2021-06-18
更新日
2025-06-04

収支報告書

文献番号
202006027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,905,000円
(2)補助金確定額
9,305,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,600,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 782,579円
人件費・謝金 1,357,003円
旅費 440円
その他 4,649,630円
間接経費 2,516,000円
合計 9,305,652円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症対策として原則オンラインでインタビューを実施したため、旅費を大幅に節減できたこと、及び、依頼内容を整理し情報収集や日程調整等の支援業務委託費(その他経費)を大幅に節減できたことで、支出が大幅に減額となった。なお、インタビューだけでなく、新興感染症パンデミック時の看護職のマネジメントに関する国内外の文献をレビューして知見を抽出することも有益だと判断し、追加して実施したため、人件費は当初の予定よりも上回った。

公開日・更新日

公開日
2021-06-17
更新日
2021-11-16