新規消毒剤の承認申請におけるガイドライン策定のための調査研究

文献情報

文献番号
202006023A
報告書区分
総括
研究課題名
新規消毒剤の承認申請におけるガイドライン策定のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2025
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2020年、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)は世界的大流行(パンデミック)となった。これを受け、手指の消毒に用いる新規消毒剤の開発が活発になることが考えられる。手指の消毒を目的とする消毒剤は一般用医薬品や医薬部外品として薬機法の規制を受け、一般用医薬品として製造販売するには有効性や安全性を示す資料を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出して承認を受けなければならない。今後新規消毒剤の開発や新規企業の参入を促す意味でも、消毒剤の製造販売の承認申請において必要な評価項目や試験法を示すことが必要である。そこで本研究は、手指を対象として使用される新規消毒剤の承認申請ガイドライン案を策定することを目的とする。諸外国における手指の消毒剤、その配合成分や消毒効果の評価法に関する規制や基準を調査し、日本の規制と比較する。また、抗ウイルス効果を評価する試験法に関する情報を整理すると共に、新型コロナウイルスを対象とした場合の実施手順案を例示する。更に結果の判定法としての遺伝子定量法について検証する。
研究方法
日本の規制について国内の資料等を調査して取りまとめた。米国、EU、中国、カナダ及び豪州の規制並びに有効性の評価法について業務委託により調査し、調査結果を取りまとめた。JISにおける抗ウイルス試験法並びに国内試験機関での抗ウイルス評価試験及び使用されるウイルスを調査した。業務委託の調査結果も含めて海外主要国における抗ウイルス試験法を調査して整理した。抗ウイルス試験法における結果判定法となるウイルス力価の測定法について、ウイルスの感染性を直接評価するTCID50法およびプラーク法と、COVID-19の拡大により一般にも認知度が高まり、広く普及したリアルタイムPCRによる遺伝子定量法の比較を行った。
結果と考察
米国、EU、中国、カナダ、豪州における消毒剤、その配合成分や評価法に関する規制や基準を調査し、日本の規制と比較したところ、調査した国・地域において、消毒剤は使用先(家庭内・医療分野等)、使用法(擦式・洗浄)、リスク又は配合成分により薬事上の取扱いを区別しており、審査が簡素又は不要となる条件が規定されていた。有効成分として、米国は3~6成分、EUは26成分、中国は53成分、カナダは7成分、豪州は2~3成分が規定されていた。このような外国で承認された成分の取扱いに関する検討が必要と考えられる。
また、有効性の評価法は調査した国・地域のいずれにおいても特定の方法を指定又は推奨している。米国、EU及び中国においては自国の公的評価法が、カナダではEUの方法及び国際非営利機関ASTM Internationalの方法が、豪州では米国又はEUの方法が採用されていた。ガイドライン策定に当たって、特定の評価法を推奨あるいは指定するか検討する必要がある。
JIS規格に示される抗ウイルス試験法は工業製品を対象にしており、一般用医薬品に対応する抗ウイルス試験法については国内では未整備であった。外国ではASTMやEN等で一般的な消毒剤による抗ウイルス試験法が示されていた。特定のウイルスに対する効果を確認する場合には、当該ウイルスを用いた試験が求められており、例えば新型コロナウイルスに対する効果を確認するには新型コロナウイルスを用いた評価試験をBSL3実験施設内で実施する必要がある。
TCID50法およびプラーク法と異なり、リアルタイムPCRによる遺伝子定量法はウイルスの感染性の消失を評価することができなかった。抗ウイルス試験の評価判定にはウイルスの感染性を直接測定するTCID50法やプラーク法を用いる必要があり、遺伝子定量法は適していないことが判明した。
結論
調査した国・地域において、消毒剤は用途(家庭内・医療分野等)、使用法(擦式・洗浄)、リスク又は配合成分により薬事上の取扱いを区別しており、審査が簡素又は不要となる条件が規定されている。特に消毒剤の有効成分として2~53成分が規定されており、その種類と取扱いが国により異なる。有効性の評価法は調査した国・地域のいずれにおいても自国の公的評価法又は国際非営利機関作成の方法を指定又は推奨している。ガイドライン策定に当たって、外国で規定された有効成分の取扱いや指定された有効性評価法の採用に関する検討が必要と考えられる。
新型コロナウイルスはエンベロープウイルスであり、エタノールによる抗ウイルス作用は十分期待できるが、今後は代替的な消毒剤の開発も重要な社会的課題である。新たな病原性ウイルス感染症の発生に備え、非エンベロープウイルスも対象に含む新規医薬品の開発は今後も増加する可能性があり、本研究の成果は抗ウイルス効果を有する新規医薬品の承認申請において科学的根拠として活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-22
更新日
2021-10-06

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006023C

収支報告書

文献番号
202006023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,400,000円
(2)補助金確定額
6,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,657,305円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,744,310円
間接経費 0円
合計 6,401,615円

備考

備考
自費

公開日・更新日

公開日
2021-06-22
更新日
-