東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた本邦におけるCBRNEテロ等重大事案への対応能力向上のための実践的研究

文献情報

文献番号
202006022A
報告書区分
総括
研究課題名
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた本邦におけるCBRNEテロ等重大事案への対応能力向上のための実践的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20CA2023
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 若井 聡智(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 赤星 昂己(国立病院機構本部DMAT事務局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,297,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、オリパラ)期間中やその前後では、化学・生物・放射線・核・爆発物等を用いたテロ(以下、CBRNEテロ)発生の蓋然性は高まると予想され、これに対する十分な備えと対応が必要である。本研究では前身の研究班で開発した化学テロ現場における非医師等による自動注射器使用モデルの実運用上の実効性の検証、新型コロナウイルス感染症流行下におけるCBRNEテロの医療上の対応の課題の検討と提言、化学テロ対応シミュレーションモデルを用いた国家備蓄の配備・配送戦術の具体化とシナリオ分析、新興の化学テロの脅威に対する本邦におけるガイダンス創出に向けた提言を行うことにより、新型コロナウイルスへの対応を踏まえたオリパラにおけるCBRNEテロ対応体制の強化・精緻化を図ると共に、2021年以降の本邦におけるCBRNEテロ対応能力の向上を図る。
研究方法
非医師等による化学剤解毒剤自動注射器使用の実効性についての実証研究(阿南英明研究分担者)
オリパラ開催に向けて、特に神経剤を使用した化学テロ対策として神経剤解毒剤自動注射器を消防士、警察官、海上保安官、自衛隊員が現場で使用できる体制構築のため、神経剤の特性や神経剤解毒剤自動注射器使用に関する講習内容をe-ラーニングにより学ぶ動画を作成した。自動注射器使用技能の普及には所属毎に指導者(インストラクター)を養成する必要があり、e-ラーニングで知識・技能習得後、当研究班の実技評価により958人の指導者が養成された。
化学テロ対応医薬品国家備蓄の配備・配送戦術の最適化に関する研究(市川学研究分担者)
2020年オリンピック・パラリンピック東京大会(以下、オリパラ)期間中やその前後ではCBRNEテロの発生に備えて、オリパラ特有の状況を踏まえた備えと対応が必要となる。本研究ではテロ対応のシミュレーションモデルを構築し、Cテロ発生時の会場で発生する傷病者に対して十分に医療を届けることが出来るよう、医療品備蓄の配置や総量を模擬実験可能な環境を提供する。具体的には、エージェントベースのアプローチでモデル構築を行い、医療品備蓄場所と備蓄数、さらにはテロ発生会場の関係性について意思決定者が自由に設定を変えてシミュレーションすることを可能にした。
新型コロナウイルス感染症流行下におけるCBRNEテロの医療対応に関する研究(赤星昂己研究分担者)
今般の新型コロナウイルス感染症流行下において、現状のアウトリーチツールに基づく医療対応における課題を分析した。繰り越し研究にて関係者を交えた机上演習で検証を行い、流行下でのテロ医療対応に関する提言を行う予定である。
新興の化学テロの脅威(主にオピオイド)への対応についての研究(若井聡智研究分担者)
海外ではオピオイドによる化学テロ発生の脅威が高まる一方、本邦では日常救急現場でのオピオイド中毒事案も多くない。そのような状況でオピオイドによる化学テロが発生し、数千人規模のオピオイド中毒患者に対応するためには、テロ対応関係機関における脅威の認識、対応プロトコルの作成、医薬品の備蓄等の必要性や要件等の対策案の具体化が必須である。GHSAGを通じて、海外のオピオイドによるテロ対応策を参考にして、本邦での現時点での課題について検討した。
結果と考察
解毒剤自動注射器の現場対応者の使用に関しては1995年東京地下鉄サリン事件からの課題であり、四半世紀を経て現実化した。研修はe-learningによりコロナ禍でも可能となり958名のインストラクターが養成された。自動注射器が現場で使用可能になったことを踏まえ、今後は継続的な教育研修体制と行為の質の担保を担う体制が必要である。また化学テロ対応シミュレーションモデルを用いた国家備蓄の配備・配送戦術の具体化とシナリオ分析により備蓄総量を増やし、現場対応部隊が事前に自動注射器を複数所持する必要性が示された。
結論
上記、結果と考察参照。

公開日・更新日

公開日
2022-06-06
更新日
2022-06-30

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-06
更新日
2022-06-30

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
化学テロのサリン散布が東京オリンピック・パラリンピックで行われた想定でシミュレーションモデルを構築し、備蓄庫からテロ発生会場への搬送シミュレーション(備蓄量と搬送時間)を可視化した。
臨床的観点からの成果
化学テロ対応シミュレーションモデルを用いた国家備蓄の配備・配送戦術の具体化とシナリオ分析により備蓄総量を増やし、現場対応部隊が事前に自動注射器を複数所持する必要性が示された。また発生場所により各医療機関に必要な備蓄数が異なることが判明した。
ガイドライン等の開発
新興の化学テロの脅威に対する本邦におけるガイダンス創出に向けた研究ではオピオイドによるテロに対する対応プロトコル(案)、医薬品備蓄等の必要性や要件の対策案を具体化するための課題を抽出した。
その他行政的観点からの成果
解毒剤自動注射器の現場対応者の使用に関しては1995年東京地下鉄サリン事件からの課題であったが、四半世紀を経て現実化したことは本研究の大きな成果である。研修ではe-learningによりコロナ禍でも可能となり958名のインストラクターが養成され今後広く自動注射器を活用できる人材が増えると期待される。
その他のインパクト
地域の実情に合わせ自動注射器の備蓄場所や医療機関で所持する医薬品最大量を自由に設定してシミュレーションを行うことで、地域の実態に沿った化学テロ発生時の現実的被害や対応結果をシミュレーションし、それに基づき事前準備を計画することができる。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202006022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,757,000円
(2)補助金確定額
6,792,455円
差引額 [(1)-(2)]
2,964,545円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,106,298円
人件費・謝金 500,250円
旅費 751,111円
その他 1,183,796円
間接経費 2,251,000円
合計 6,792,455円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、実働訓練の制限などに加え、計画していた会議や検討会をオンラインで開催したため、旅費などの経費が未使用となった。また、実働訓練に際しても感染予防の観点から事前訓練の中止や参加者を制限したため、経費未使用が発生した。

公開日・更新日

公開日
2022-06-15
更新日
-