病院フォーミュラリ-の策定に係る標準的手法開発および地域医療への影響の調査研究

文献情報

文献番号
202006020A
報告書区分
総括
研究課題名
病院フォーミュラリ-の策定に係る標準的手法開発および地域医療への影響の調査研究
課題番号
20CA2020
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(東京大学 大学院医学系研究科 地域医薬システム学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 桑原 健(一般社団法人日本病院薬剤師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,120,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域フォーミュラリーの定義は「一定の地域における医師(会)および薬剤師(会)、その他医療関係者が協働作業を通じて共通の理解と了解を前提に作成され、地域の患者に対してEBMに則りながら有効性、安全性、経済性などの観点から総合的に最適であると判断され使用が推奨される医薬品集および使用指針」とした。本研究班は「地域フォーミュラリーが地域の診療所ならびに病院において現実的に広く導入され円滑に運営および更新され、導入による評価を行いクリニカルインデケーター(臨床指標)や患者満足度をモニターして行ける」ものになるための方法論の開発を目的とした。
研究方法
主に実証的な研究および理論的な研究の両面から実施された。実証的な研究ではフォーミュラリーに関してどのような見方をしているかなどについて質問した医師の意識調査、薬剤師の意識調査を9つの地区を対象に実施した。また、全国規模で病院におけるフォーミュラリーの実施状況なども調査した。質問票送付およびWeb形式でのアンケート調査を行い、回答を得た。また、海外のフォーミュラリーの実態、制度やルールの調査は、主に海外文献およびWeb上の情報を使用して行った。
理論的な研究では、本研究班が実施した実証的な研究の結果に基づいて地域フォーミュラリーの実施ガイドライン(試案)を作成した。恣意的な内容を避けるために文献提示、根拠データの引用など客観的なデータに則るように方法を組み立てた。有識者へのヒアリングおよび有識者のパネルディスカッションから得られた情報や知識なども参考にした。また、フォーミュラリーを作成するための人的な労力が不足している場合に活用できるモデル・フォーミュラリーを作成し、パブリック・ドメインとして誰でも使用できるようにした。
結果と考察
・地域で実施されるフォーミュラリーに関して診療所医師は標準的な薬物治療の推進に寄与すると捉えており、その一方でいろいろな不安や誤解があることが示唆され、医師にフォーミュラリーの理念は何かを十分に理解してもらう必要があることが示された。また、薬剤師は在庫負担軽減、医療費適正化、標準的な薬物治療推進などの理由でフォーミュラリーを必要としていた。
・病院におけるフォーミュラリー作成においては地域連携、利益相反管理などが課題であり、また中小規模の病院への作成サポートが必要と考えられた。
・海外でのフォーミュラリーの調査では、地域医療の関係者が参加してフォーミュラリーが検討されて決定された後に地域に着実に浸透していた。
・有識者によるパネルディスカッションならびに有識者へのヒアリングからも、地域連携が重要であることが分かった。
わが国にフォーミュラリーを普及させるためには地域の医師会、薬剤師会、あるいは診療所医師など地域医療のすべてのステークホルダーを最初からフォーミュラリーの作成や運用に参加させるなどを行い、関係者による検討作業、承諾、周知などの過程を経ることが必須となる前提であることが示唆された。
・以上の本研究の成果として策定したこの実施ガイドライン(試案)は地域医療におけるフォーミュラリー実施の標準的な手法と位置付けられるものである。
また、地域の診療所ならびに中小病院などが容易に実施できるようモデル・フォーミュラリーを作成しパブリック・ドメインとして提示したことにより、実効性ある報告書となった。
結論
わが国にフォーミュラリーの導入を目指して実証的な研究と理論的な研究を行い、施策の実現可能性が高くなる実施ガイドランを作成し、施策研究に資する成果を提供した。わが国の医薬品の処方を巡る状況は、患者のみならず医師、薬剤師、その他の医療者にとって抜本的に改善が必要であり、その解決のための施策立案ならびに実施は喫緊の課題である。本研究班による成果がそうした課題解決のために活用され、有効に生かされることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
2021-12-21

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-12-03
更新日
2021-12-21

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国の地域医療における薬物治療は多剤処方や不適切処方、それによる医療費の無駄など多くの課題があり、先進諸国に比較して関連する制度やルールが未整備であった。それを解決できる端緒と成り得る知見が得られ社会的な意義は大きい。そこで地域フォーミュラリーの普及方法開発や実施ガイドライン作成などに重きを置き、多くの実証研究と理論研究により学術的に高い水準の知見が得られ、国際的に劣っていた「わが国の標準的な薬物治療の推進」に貢献できる研究成果を得た。
臨床的観点からの成果
病院におけるフォーミュラリーの策定に係る標準的手法開発および地域医療への影響の実態を把握するための調査研究であり、臨床的研究ではないため該当しない。
ガイドライン等の開発
地域フォーミュラリの作成・実施・運営・評価に関するガイドライン(試案)を作成した。本ガイドライン(試案)の目的は、研究班の成果を活用しながら客観的な根拠や妥当な理論分析などに基づいて検討し、診療所や病院などから構成される地域医療におけるフォーミュラリの作成・実施・運営・評価などを適切に実施する方法を提示することである。
その他行政的観点からの成果
行政上の医療政策における喫緊のテーマ「標準的な薬物治療の推進」および「医療費適正化」に貢献する制度設計に役立つ研究成果が得られた。また、次期診療報酬改定(2022年度)に寄与できる基礎的な資料内容になった。
その他のインパクト
本年度の中医協の議論において活用できる基礎的な資料になり、次期診療報酬改定(2022年度)に寄与できる内容になった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
PLos One ; 15(4):e0231226. 2020. / Prev Med.;141:106301. 2020.
学会発表(国内学会)
3件
日本病院薬剤師会、第79回日本公衆衛 生学会総会2020、第53回日本薬剤師会学術大会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
2024-06-13

収支報告書

文献番号
202006020Z