裁量労働制実態調査のデータを用いた、裁量労働制の適用・運用実態等の分析研究

文献情報

文献番号
202006018A
報告書区分
総括
研究課題名
裁量労働制実態調査のデータを用いた、裁量労働制の適用・運用実態等の分析研究
課題番号
20CA2018
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
川口 大司(東京大学 大学院経済学研究科(経済学部))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,753,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
裁量労働制の制度の趣旨に適った対象業務の範囲や働く方の裁量と健康を確保する方策等についての検討に資するため、
・専門業務型及び企画業務型それぞれの裁量労働制の適用
・運用実態
・裁量労働制の適用・非適用による労働時間の差異等
を分析すること。
研究方法
専門業務型及び企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態について、適用労働者と非適用労働者では労働者属性や職場属性がどのように異なるかを明らかにするための分析を行う。
・ 裁量労働制の適用・非適用による労働時間など就業条件の差異等について分析を行う。この際には適用労働者と非適用労働者では労働者属性や職場属性が異なることに留意しながら多重回帰やマッチング推定等の手法を用いて分析を行う。

結果と考察
上記のとおり、裁量労働制の適用が労働時間等に与える影響を分析した結果からは、以下大きく3点のことが結論づけられる。
第一に、労働時間については、裁量労働制の適用労働者の方が労働時間が長くなることが推定され、階差推定の結果からも裁量労働制の適用を受けることで前年からの労働時間が増加することが見て取れるが、他方で労働時間の変化は適用労働者の属性によっても異なるものであり、労働時間が増える人もいれば減る人もいて、増加の状況についても裁量労働制の対象業務や役職等により変わりうる。
第二に、健康状態について、適用労働者と非適用労働者及び適用の前後において大きな差は見られなかった。メンタルヘルスの分析においても、裁量労働制の適用によって悪化していると言えるまでの傾向は見られず、睡眠時間についても適用労働者と非適用労働者とでほぼ変わらない結果となり、裁量労働制の適用が労働者の健康状態に影響を及ぼしているとまでは結論づけがたいものであった。
第三に、処遇その他について、裁量労働制の適用を受けて適用労働者の方が年収が10%強高いということが、回帰分析の結果及びマッチング推定の結果として裏付けられ、非適用労働者と比べて一定程度処遇面での差があることがわかった。また、労働者からの自由回答については、これ自体のサンプル数が多いものではないということもあるが、テキスト分析の結果として、裁量労働制の適用に対する満足度別にみたときに特定の単語に正負の意味づけを見いだせるものではないが、それぞれ同じような観点からの意見の傾向にあるという点については確認することができた。
結論
今回、裁量労働制の実態を把握するために実施された初めての政府一般統計である裁量労働制実態調査の結果から、以上のような分析の結果が導き出された。今回の研究の知見は、今後の裁量労働制の検討等において活用されることが期待されるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-07-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回の裁量労働制実態調査については令和元年度に初めて実施された一般統計調査であり、裁量労働制の適用事業場及び適用労働者に加えて裁量労働制の対象業務が存在する裁量労働制非適用事業及び非適用労働者を対象とした大規模な調査であり、今回の研究は初めてその調査結果を分析した先行研究のないものであることから、学術的・社会的意義が高いものと考えられ、日本のホワイトカラー労働者に対する労働経済学的観点からの分析として意義のあるものと考えられる。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
今回の裁量労働制実態調査の結果に対する有益な分析の結果であるとともに、今後の制度の検討に当たっても活用されるものと考えている。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-07-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202006018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,778,000円
(2)補助金確定額
8,778,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 316,015円
人件費・謝金 6,436,985円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 2,025,000円
合計 8,778,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-07-30
更新日
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