臨床研究を取り巻く状況を勘案した臨床研究法の法改正も含めた対応策の検討

文献情報

文献番号
202006015A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研究を取り巻く状況を勘案した臨床研究法の法改正も含めた対応策の検討
課題番号
20CA2015
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
堀田 知光(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 健一(国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門)
  • 児玉 安司(東京大学 医学部附属病院)
  • 山本 晴子(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
  • 田代 志門(東北大学)
  • 菊地 佳代子(国立成育医療研究センター 臨床研究センター)
  • 吉田 雅幸(東京医科歯科大学生命倫理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,551,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成30年4月に施行された臨床研究法は附則第二条2においては、「法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況、臨床研究を取り巻く状況の変化等を勘案し、この法律の規定に検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされている。一方で、研究者からは臨床研究法の実施に係る負担が大幅に増加し、臨床研究の実施を推進するという法の趣旨の達成が困難との意見があがっている。本研究班は、各ステークホルダーから出されている臨床研究法の問題点についての論点を整理し、法改正の要否や運用上の改善事項について整理・対応策の検討を行い、厚生科学審議会臨床研究部会における臨床研究法の見直しの議論の基礎となる考え方を明らかにすることを目的とした。
研究方法
規制要件、法律、研究倫理、倫理審査の専門家に加え、臨床研究に携わる研究者などで研究班を構成し、これまで日本医学会連合、日本臨床試験学会、JCTN(Japanese Cancer Trial Network)等の団体から出された臨床研究法見直しに係る提言や要望書から論点を抽出するとともに、日本製薬工業協会および日本医療機器産業連合会等の業界団体からの意見聴取ならびに患者・一般を代表する立場の方々との意見交換を行った。具体的には計7回の班会議および意見交換会をふまえて、臨床研究法施行後の問題点や要望を聴取し、論点を取りまとめるとともに、臨床研究法の見直しの方向性について検討した。
結果と考察
研究班では、臨床研究法の見直しに向けて、規制の適用範囲、国際的整合性、煩雑な手順の適正化等の観点から議論を行い、主な論点として以下の8つの項目について課題の整理と提言をまとめた。
① 観察研究に関する臨床研究法の適用範囲
法第二条において、臨床研究は「医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」と定義されていることから、日常診療の範囲で使用される医薬品等を用いた観察研究は、法の対象外とすることを施行規則で明記してはどうか。
② 医療機器に関する臨床研究法の適用範囲
薬事申請上の取扱いとして自己認証(届出)、第三者認証の機器、臨床試験不要の改良機器を法の対象から外すことを検討してはどうか。
③ 適応外薬に関する特定臨床研究の適用範囲
効能・効果が同じで、かつ、副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品や、効能・効果が異なったとしても社会保険診療報酬支払基金の審査情報提供事例に掲載されている使用法を除外するなどを検討してはどうか。
④ 研究全体の責任主体(sponsor)概念の導入
試験全体の計画および運営を一元化するとともに、国際的な整合性を持たせるべく、試験全体の運営責任、いわゆるICH-GCP上のsponsorの概念を臨床研究法にも導入してsponsorとinvestigatorの役割を分離することを検討してはどうか。
⑤ 疾病等報告の範囲の適正化
研究責任医師は、因果関係を問わず必要と思われる範囲のすべての有害事象を把握し、論点④で述べたsponsorの役割を有するものに報告するよう、施行規則第13条の記載を改めてはどうか。
⑥ 実施計画の簡略化とjRCTの分離、および手続きの効率化
実施計画とjRCT登録内容を分離し、前者は厚労大臣への報告が必要なほどの重要事項のみに絞り、後者は「国民の臨床研究への参加の選択に資する情報」に絞ってはどうか。また、厚生労働大臣(地方厚生局)提出時の郵送を省略し、オンラインで手続きを完了できるよう改めてはどうか。
⑦ 利益相反申告手続きの効率化
利益相反報告の正確性の担保は研究責任医師に求めることとし、医療機関に事実確認は求めないこととしてはどうか。また、製薬企業の利益相反情報の公表箇所を1か所に集約する仕組みを構築することも重要である。
⑧ 認定臨床研究審査委員会(CRB)認定要件に関する見直しの要否
年間開催件数のみでなく、より本質的に認定/更新を判断できるよう認定要件を見直すほか、専門委員会による調査や模擬審査、CRB間のピア・レビュー等、実際の審査能力を評価する仕組みを構築してはどうか。
上記の論点について検討が加えられるべきと考える。
結論
本研究班では、厚生科学審議会臨床研究部会における臨床研究法の見直しの議論の基礎となる考え方について、上記8項目として論点整理を行った。本報告書で明らかにした論点については、臨床研究部会でさらに審議が行われる。その検討においては、臨床研究法第一条に掲げられた法の目的である、「臨床研究の対象者をはじめとする国民の臨床研究に対する信頼の確保を図ることを通じてその実施を推進し、もって保健衛生の向上に寄与すること」が達成されるかどうかという評価軸に十分配慮がなされることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2021-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006015C

収支報告書

文献番号
202006015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,216,000円
(2)補助金確定額
2,837,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,379,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 981,373円
人件費・謝金 100,000円
旅費 52,560円
その他 38,212円
間接経費 1,665,000円
合計 2,837,145円

備考

備考
千円以下切り捨てのため

公開日・更新日

公開日
2021-11-15
更新日
-