オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必要な研修プログラムに関する研究

文献情報

文献番号
202006012A
報告書区分
総括
研究課題名
オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必要な研修プログラムに関する研究
課題番号
20CA2012
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必要な研修プログラムの作成
令和元年12月4日公布の医薬品医療機器等法(以下、薬機法とする。)改正により、薬局の薬剤師が行う服薬指導について、対面義務の例外として、テレビ電話などによる方法(映像及び音声の送受信により、相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるもの)が可能であることが明記された。本研究はオンライン服薬指導を実施しようとする薬剤師が身につけるべき薬学的知識以外の知識、技能等を習得するための研修内容を検討し、必要となる研修教材を作成した。
2.時限的・特例的に実施できる電話等による服薬指導等の実施状況と課題に関する検討
本研究は、令和2年4月10日付けの事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」に基づき、時限的・特例的な対応として電話等を用いた服薬指導が実施されることになったことを受け、全国の薬局における電話や情報通信機器(電話等)を用いた服薬指導等の実施状況の調査を行い、事務連絡に基づく処方箋を応需した薬局の対応を、実用性、実効性、医療安全等の観点から検証し、課題を整理した。
研究方法
1.オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必要な研修プログラムの作成
オンライン診療の実施に当たって医師が受講する厚生労働省が定める研修の科目を参照し、公益社団法人日本薬剤師会(以下、日本薬剤師会とする)の協力を得て研修教材を作成した。作成した研修教材を用いて、オンライン服薬指導を実施する薬剤師の研修会を開催し、研修会終了後の理解度の確認と研修教材等についての意見収集を行った。
2.時限的・特例的に実施できる電話等による服薬指導等の実施状況と課題に関する検討
日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会に調査協力を依頼し、全国の薬局を対象とするアンケート調査を実施した。調査内容は、時限的・特例的な対応として処方箋の備考欄に「0410対応」と記載された処方箋の応需状況、薬剤交付の手段、電話・画像付き通信機器を用いた服薬指導について等とした。
結果と考察
1.オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必要な研修プログラムの作成
研修内容は、1.オンライン服薬指導を行う薬剤師の研修について、2.オンライン服薬指導の基本的理解と諸制度、3.オンライン服薬指導とセキュリティとした。作成した教材を用いて、日本薬剤師会の協力を得て、鎌倉市薬剤師会、福岡県薬剤師会、京都府薬剤師会、広島県薬剤師会の4地区でWeb形式による研修会を実施した。受講者のアンケート結果からは、研修時間、研修内容ともに適切であったことが把握できた。

2.時限的・特例的に実施できる電話等による服薬指導等の実施状況と課題に関する検討
全国の薬局を対象としてアンケート調査を実施し、13,868薬局から回答を得た。調査結果からは、患者の希望を踏まえて薬剤師が様々な工夫をしながら対応することにより、起こり得る問題の軽減に努めたことがうかがえたものの、電話等による服薬指導が対面と同等にはできないとする薬局は多く、理由として、通信環境が不十分であることだけでなく、患者情報の不足、薬剤特性などが挙げられた。不足する情報を補うためには、事前の準備(計画)が必要と考えられた。また、薬剤特性については、同じ場で薬剤を共有できないとコミュニケーションが困難となるものがあることが示唆されたことから、現状では対面以外の方法では解消されない問題と考えられた。電話による服薬指導は、視覚情報がないことが対面と同等にできない極めて大きな要因であり、対面以外で服薬指導を適切に実施するためには、映像及び音声による対応が不可欠と考えられた。
結論
1.オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必要な研修プログラムの作成
オンライン服薬指導の実施例は現状ではほとんどないが、教材を活用して薬機法に基づくオンライン服薬指導についての理解を広める必要があると同時に、研修教材等で望ましいオンライン服薬指導の事例を示すことが必要である。
2.時限的・特例的に実施できる電話等による服薬指導等の実施状況と課題に関する検討
 時限的・特例的措置を行わざるを得ない状況下では、実用性と実効性を確保しながらも、医療安全の観点からの検証により、電話等による服薬指導の対象外とするケースの提示や実施上の留意点や運用ルールの設定が必要と考えられた。今後普及が予想されるオンライン服薬指導においては、対面と同等に実施することが困難であることを前提とした制度設計と、方策や留意点を踏まえた適切な運用が求められる。

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006012C

収支報告書

文献番号
202006012Z