高血圧外来におけるオンライン診療の有用性:クラスターランダム化比較試験

文献情報

文献番号
202006003A
報告書区分
総括
研究課題名
高血圧外来におけるオンライン診療の有用性:クラスターランダム化比較試験
課題番号
20CA2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
西崎 祐史(順天堂大学 革新的医療技術開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野島 正寛(東京大学医科学研究所 TR・治験センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,588,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2022年3月まで、我が国において、高血圧はオンライン診療料の対象となっているが、保険診療においては、3ヶ月に1回の対面診療が要件となっていた。しかしながら、急速に進行する少子高齢社会においては、外来通院困難な高齢者が増えており、可能な限り外来通院の負担を減じる対策を講じる必要がある。本研究においては、現在オンライン診療料の要件である3ヶ月に1回の対面診療の必要性について検証する。
研究方法
クラスターランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)(非劣性試験)を実施する。オンライン診療システムを導入している東京都内および関東地方に位置する8診療所を、介入群(対面診療間隔を6ヶ月に伸ばした診療患者群)とコントロール群(3ヶ月に1回の対面診療を受ける通常診療患者群)にランダムに割り付ける。目標症例数を合計70名(脱落率を10%として算出)とし患者登録を実施する。
 登録された患者の追跡期間は6か月とする。主要評価項目は、収縮期血圧の値の変化量(6ヶ月後の値-ベースライン値)であり、副次評価項目は、6ヶ月後の治療継続率、心血管系イベントや薬の副作用等の安全性の評価、患者満足度評価、医療経済評価である。
 医療経済評価については、対面診療(コントロール群)に対するオンライン診療(介入群)の費用最小化分析を実施する。分析は「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン第2版」に基づいて「公的医療の立場」から実施する。なお、オンライン診療の導入は患者の生産性に直接の影響を与えることが考えられることから、生産性損失を費用に含めた追加的な分析を行う。生産性損失の評価は、就労の有無、職業、年収等の内容で構成された、患者対象アンケートを基に実施する。さらに、オンライン診療の導入による財政インパクトを検討するため、対面診療からオンライン診療へ切り替え可能な患者割合や対面診療とオンライン診療の治療継続率の差異、加えてオンライン診療導入にかかる医療機関の費用支払意志額等に関する調査を、外部モニター(医師)を対象とした、ウェブアンケートによって実施する。
結果と考察
64名の患者が登録された(オンライン診療群31名、対面診療群33名)。年齢は、オンライン診療群51.5±7.4歳、対面診療群57.2±11.9歳(P値=0.02)と対面診療群の方が高かった。全体のうち39名(60.9%)が男性であり、両群間に男女差は認めなかった。主要評価項目である収縮期血圧の値の変化量(6ヶ月後の値-ベースライン値)の両群間の比較については、線形混合モデルによる検討の結果、群間差1.18(90%信頼区間 -3.68-6.04)と推定され、信頼区間の下限が非劣性マージンである-5を上回ったことから本研究における非劣性の基準が満たされた。患者満足度評価では、オンライン診療群方が対面診療群よりも患者満足度が高かった。医療経済評価については、生産性損失時間を円換算した間接費用を計算した結果、オンライン診療群は対面診療群と比較し、有意に生産性損失が低いという結果になった(オンライン診療群9,102.3±13082.6円vs 対面診療群27771.5±28999.6円, P値<0.01)。
 外部モニターを対象としたウェブアンケートの結果からは、オンライン診療を実施した経験がある医療機関においても、その実施件数は非常に少ないことが明らかになった。また現在の環境下では、オンライン診療によって診療の効率は高まらず、追加で必要となる費用に対して十分な収益を賄うことが出来ていないために、結果として多くの医療機関でオンライン診療の採算性が低いと認識していた。オンライン診療を促進するのであれば、効率性・採算性の向上にむけた仕組み作りが不可欠である。
結論
安定した本態性高血圧患者のオンライン診療において、3か月目の対面診療をオンライン診療に切り替えても、血圧の管理状況に差は生まれず、安全性が担保された。また、安定した高血圧診療において3か月目の対面診療の義務を無くすことで、社会的費用削減効果が期待できる。さらには、患者満足度が向上する可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2022-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-14
更新日
2022-07-04

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006003C

収支報告書

文献番号
202006003Z