歯科技工士の業務内容の見直しに向けた調査研究

文献情報

文献番号
202006001A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科技工士の業務内容の見直しに向けた調査研究
課題番号
20CA2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大川 周治(明海大学 歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤川 安正(昭和大学 学長室)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学)
  • 高橋 英和(東京医科歯科大学 歯学部)
  • 横山 敦郎(北海道大学 大学院歯学研究科 )
  • 北村 知昭(九州歯科大学 歯学部)
  • 田地 豪(広島大学大学院 医系科学研究科 口腔生物工学研究室)
  • 志賀 博(日本歯科大学 生命歯学部 歯科補綴学第1講座)
  • 野崎 一徳(大阪大学 歯学部附属病院)
  • 馬場 一美(昭和大学 歯学部)
  • 武部 純(愛知学院大学 歯学部)
  • 朝田 芳信(鶴見大学 歯学部)
  • 池邉 哲郎(福岡歯科大学 口腔歯学部)
  • 森山 啓司(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面頸部機能再建学系 顎顔面機能修復学講座 顎顔面矯正学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,605,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会の進展による社会構造の変化に対応すべく、地域包括ケアシステムの構築が進められている。併せて、歯科保健医療を取り巻く状況の変化やデジタル技術の著しい進歩普及により歯科技工も急速に変化している。一方で、歯科技工士は長時間労働でかつ低賃金というイメージが定着しつつあること、歯科技工士法により診療室のチェアサイドや居宅等において歯科技工士が実施可能な業務に制約があること、さらに、歯科技工士養成施設及びその入学者の数の減少、歯科技工士の高い離職率の常態化や認知度の低下、そして就業歯科技工士数の減少等が生じていることなどから、今後歯科技工士が不足することが予想されており、歯科保健医療の根幹を揺るがす状況となっている。
 本研究の目的は『歯科技工士の業務内容の見直しに向けた調査研究』(以下、特別研究)と題し、歯科技工士の業務範囲の検討及びデジタルデータの取り扱いに関する意識調査を実施するとともに、現在製作されている各種歯科技工物について歯科医学的知見を踏まえた整理を行うことである。
研究方法
1.業務拡大検討WGⅠ
歯科技工士が診療室チェアサイドおよび訪問歯科診療先で実施可能な業務内容や、今後、歯科技工士に求められる業務内容に関してアンケート調査やヒアリングを行う。
2.医療情報検討WGⅡ
歯科技工所におけるデジタルデータ処理業務の実態を明らかにするために、アンケート調査を実施する。
3.歯科技工物検討WGⅢ
調査1:歯科技工士法において明確に規定されていないが歯科技工物として取り扱うべきであろう歯科技工物の現状扱い」について、歯科の各領域から「歯科技工物」を抽出し、整理する。
調査 2:調査1で抽出した「歯科技工物」について、事前調査を実施する。この事前調査結果を基に歯科技工物の現状について、ヒアリング調査を実施する。
結果と考察
1.業務拡大検討WGⅠ
●診療時に歯科技工士の立ち会い経験のある歯科医師は 80%以上だが、現況では約 50%と激減することから、歯科技工士の診療への立ち会いは日常的な業務になっているとはいいがたい。
●歯科技工士が診療の一部に携わることに歯科技工士、歯科医師ともに肯定的であることから、歯科技工士の業務内容拡大に向けて協議を開始することに関して、賛同は得られたと考えられる。
●歯科医師の指示のもとで行いたい(行ってほしい)診療行為は、必要な教育・研修の履修の有無にかかわらず、歯科医師と歯科技工士で異なっていた。両者が異なっていた原因としては、歯科医師は歯科技工士の立ち会いにやや積極的な傾向があるが、歯科技工士はやや消極的な傾向があることは否めないと考えられる。歯科技工士がやや消極的な理由としては、歯科技工士法の法的制約もあるが、技工業務に対する診療報酬上の評価が低いことが大きいと考えられる。
2.業務拡大検討WG2
歯科技工所におけるデジタル化の普及は一部の歯科技工所に限られているといえる。歯科用 CAD/CAM 装置の普及状況と追随している可能性が考えられるが、高価なシステムであることから、歯科 CAD/CAM 装置はデジタル化の進展を促す反面、いわゆる二極化を助長するという二面性も持ち合わせていると考えられる。
3.業務拡大検討WG3
歯科技工士法に規定されている歯科技工物が概ね製作されていることが明らかになった。ただし、口腔内スキャナーや技工用スキャナーなど、CAD/CAM を応用して製作する歯科技工物に関しては、従来の歯科医療機関からの通常の歯科技工指示書による委託だけではない業形態がでてきていることも明らかとなった。歯科医療においても、今後さらにデジタルデータの応用頻度は高くなることは必至であり、デジタルデータの取り扱いに関する対応を検討していくことの重要性が示された。
結論
1.歯科技工業務を拡大すると仮定した場合の、候補となる診療行為が示された。
2.歯科技工記録のデジタル化は、歯科技工指示書に比較すると進んでいたが、データの保管方法の安全性は不十分であった。また、歯科用 CAD/CAM 装置に係る歯科技工
業務は、徐々に拡大しつつあるが、オンラインでの医療情報管理体制が不適切で脆弱な状況であることが明らかとなった。
3.本研究で抽出した「歯科技工物」は、歯科技工士法で規定されているとともに、現状では、歯科技工士法に規定されている歯科技工物が概ね製作されていることが明らかになった。ただし、口腔内スキャナーや技工用スキャナーなど、CAD/CAM を応用して製作する歯科技工物に関しては、従来の歯科医療機関からの通常の歯科技工指示書による委託だけではない業形態がでてきていることも明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2021-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-12
更新日
2022-02-01

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202006001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.歯科技工業務を拡大すると仮定した場合の、候補となる診療行為が示された。
2.歯科技工記録のデジタル化は、歯科技工指示書に比較すると進んでいたが、データの保管方法の安全性は不十分であった。
3.歯科用 CAD/CAM 装置に係る歯科技工業務は、徐々に拡大しつつあるが、オンラインでの医療情報管理体制が不適切で脆弱な状況であることが明らかとなった。

臨床的観点からの成果
本研究で抽出した「歯科技工物」は、歯科技工士法で規定されているとともに、現状では、歯科技工士法に規定されている歯科技工物が概ね製作されていることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
厚生労働省医政局歯科保健課
歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会
日時:第1回検討会 令和3年9月30日(木)10~12時  
   第2回検討会 令和3年11月4日(木)14~16時
その他行政的観点からの成果
口腔内スキャナーや技工用スキャナーなど、CAD/CAM を応用して製作する歯科技工物に関しては、従来の歯科医療機関からの通常の歯科技工指示書による委託だけではない業形態がでてきていることも明らかとなった。
その他のインパクト
●大川周治:調査研究からみえる歯科技工士の新しい可能性/内の目・外の目.日本歯科医師会雑誌,75(7):14~15,2022.
●千葉県歯科医学会 令和4年度学術大会シンポジウム  
日 時:令和4年11月3日(木)14:00~16:30
●千葉県歯科医師会 歯科技工士の人材確保対策事業「歯科技工士の未来!再発見!」実施報告書:医療連携・チーム医療と法改正/第4回明海大学シンポジウム(令和4年11月3日).295~308,2022.
いずれも令和2年度および令和3年度の研究成果を執筆、発表  

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
2023-06-06

収支報告書

文献番号
202006001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,058,000円
(2)補助金確定額
6,957,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,101,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,777,014円
人件費・謝金 11,137円
旅費 332,960円
その他 3,383,373円
間接経費 1,453,000円
合計 6,957,484円

備考

備考
COVID-19の蔓延により、緊急事態宣言の発令など対面による会議の実施が困難となり、班会議およびグループ会議の大半をWeb会議(一部対面のハイブリッド型)およびメール会議で行わざるを得なくなった。その結果、研究者に支払う旅費が、当初想定していた金額よりも減額となった。

公開日・更新日

公開日
2021-11-26
更新日
-