ASEANにおける活動的で健康的な高齢期の推進に関する研究

文献情報

文献番号
202005007A
報告書区分
総括
研究課題名
ASEANにおける活動的で健康的な高齢期の推進に関する研究
課題番号
20BA2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 )
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 荒井 秀典(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 菖蒲川 由郷(新潟大学医歯学系)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 佐々木 由理(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 アジア諸国で急速に高齢化が進んでいる。2050年には、中進国のみならず、途上国を含むアジア全域で高齢化社会を迎える。ASEAN諸国でも、一部の国は日本以上の速さで高齢社会を迎えると予測されている。高齢化の進展に伴って、高齢者の人生の満足とQOL、健康で自立して活動的な日常生活を送ること(Healthy and Active Ageing)が重要な課題となる。各国に先駆けて超高齢社会に突入した日本は、その経験を活かしてアジアのHealthy and Active Ageingの推進に寄与することが期待されている。
 平成29年に厚生労働省の検討会により、6分野25項目からなる「ASEAN-Japan Healthy & Active Ageing Indicators 2017 (ASEAN-Japan HAAI 2017)」が開発され、同年6月に開催された第3回ASEAN日本Active Ageing 地域会合で公表された。
 令和2年度は、ASEANにおけるエビデンスに基づいた高齢化政策の更なる整備・推進に資するため、ASEANの高齢化対策に関する実態及び国際機関等の動向を踏まえるとともに、ASEAN各国の行政機関、学術機関及び国際機関等との議論を通じながら、平成29年に開発した活動的で健康的な高齢期の指標(ASEAN-Japan HAAI 2017)の改訂の準備と指標に基づいたASEAN各国の現状分析を行った。
研究方法
 具体的には、①6分野25項目からなるASEAN-Japan Healthy & Active Ageing Indicators 2017 に沿って、ASEANおよびその他のアジア地域における高齢化の状況について、国際機関や各国政府のウェブサイトや報告書・論文等による情報収集・整理、及び他機関が作成した既存の高齢化指標との比較検討、②ASEANおよびその他のアジア地域における高齢化対策の計画やそれに用いられる指標、具体的な事業の概要に関する行政機関・学術機関及び国際機関等に対するヒアリング調査、③日本老年学的評価研究の海外共同研究の一環として、研究分担者(菖蒲川)が関与してきたミャンマーのフィールドにおける高齢化の状況とその対策に関する調査データの分析を実施した。
結果と考察
①介護保険、介護サービスに関する指標等、ASEAN-Japan HAAI 2017 の独自性を保持しながら、国際機関等が公開している既存のAAIとの互換性にも考慮し、New ASEAN-Japan HAAIへと更新していく必要性や高齢者のメンタルヘルスや健康格差を詳細に評価していく必要性も示唆された。
②アジアの場合は同様な均一なデータが存在せず、高齢化指標の作成を難しくしている。アジアの文脈で健康で活動的な高齢化をどうとらえるか、比較分析が必要である。またSDGs指標を用いて、年齢を区分することで高齢化指標とするような形式を検討する必要がある。
③HAAIのうち高齢者のサンプルデータにより評価可能な項目とそうでない項目を分類することができた。また地域のソーシャルキャピタルの項目は健康アウトカムとの関連が明らかであった。改訂するHAAIを可能な範囲でこれまでの調査データを用いて検証することと、縦断データを用いた分析をすることが必要と考えられた。
結論
本研究によって、ASEAN-Japan Healthy & Active Ageing Indicators 2017 の高齢化指標としての特徴やアジア地域における適用可能性に関する有益な知見が得られ、アジアにおける高齢化の文化的要素、SDGsとの関連性、メンタルヘルスなど新たに加えるべき項目、指数化の可否等、今後の改訂検討の方向性が明確になった。また、今後、現場のフィールドにおいて、指標の検証のため、健康状態や要介護状態をアウトカムとする縦断調査の必要性が示された。新型コロナウィルス感染症の蔓延は、高齢者の生活にも大きな影響を与え続けており、その点を高齢化指標に組み入れることが不可欠であると考えられた。
 今後は、今年度の成果をもとにASEAN-Japan Healthy & Active Ageing Indicators 2017の改訂を進めるとともに、指標の数値を実際に改善するための方法論を明確にするために、ASEAN諸国の高齢化対策の好事例を収集・分析・整理すると同時に、ポリシーガイドラインを作成予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-08-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202005007Z