医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究

文献情報

文献番号
202004002A
報告書区分
総括
研究課題名
医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20AD1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
井上 悠輔(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 菅原 典夫(獨協医科大学 精神神経医学講座)
  • 井元 清哉(東京大学 医科学研究所)
  • 佐藤 雄一郎(東京学芸大学 教育学部)
  • 一家 綱邦(国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部医事法研究室)
  • 山本 圭一郎(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 臨床研究センター 臨床研究統括部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本計画は、医療 AI の研究開発や臨床実践に伴う ELSI(倫理的・法的・社会的課題)の論点整理、および医療者や研究開発への従事者に有用な論点整理の資料作成を目的とする。「AI」および関連技術が、患者・市民と医療との接点(医師患者関係を含む)、プロフェッションとしての医師の行為規範に関して、どのような倫理的、法的、社会的課題をもたらしうるか、現時点で想定しうる諸問題を探索的に検討し、一定の整理を行う。
研究方法
本年度は、コロナ禍の影響を受けた活動となったが、①文献レビュー(帰納的検討)、②分担研究報告、③、ヒアリング・勉強会(オンライン)、④質問票調査、⑤その他(執筆、資料整理ほか)を行った。
結果と考察
以下、要旨を示す(詳細は報告書本体を参照されたい)。①医療AIのELSIをテーマとしたレビュー論文の4件に加え、各国の生命倫理委員会(スウェーデン、イギリス)、専門職団体の見解(世界医師会、アメリカ医師会)の、計8件の文書を資料として検討した。おおよその論点は、医療AIの検討の枠組みに関すること、ユーザー・医師個人が経験し得ることや配慮すべきこと、医師患者関係に関すること、その他中長期的な医療への影響に関することに大別された。②「医療AIにおける「AI」の含意」、「精神科と医療AI」、「救急と医療AI」、「医療業務支援とAI」「医療AIと研究倫理審査上の諸課題」、医療AIと医療裁判への影響」など、この研究班ならではの先駆的な検討が展開されている。まだ普及していない段階ゆえに検討しきれない部分が大変に多いなか、検討には各氏苦心したが、一方、普及しきれていない段階だからこそ懸念される問題もあるとの指摘も重要である。③コロナ禍で対面かつ長時間の研究班開催や海外調査が難しかったため、テーマを設定した短時間の勉強会を複数回開催した(計4回)。④医師302名、医療通訳者211名の回答協力を得た。結果として、医療者による業務の機械化、自動化には高い関心がある一方、他の職種を頼る段階を飛ばした「一足飛びにAI」とでもいうべき状況が生じないかが不安が残る結果でもあった。ただ、患者の満足度について、医師と医療通訳者の評価は大きく異なっていた。AIツールを用いる際に患者にどのような影響が及びうるか医療職間で議論する機会の確保、専門職によるこの種のツールの利活用を支える研修や教材の開発が期待される。⑤省略。
結論
今年度は2年間の計画の初年度にあたることから、旧班による平成30年度、令和元年度の報告書を踏まえつつ、その後の展開を検討することが出発点となっている。
この間、医療機器をめぐる施策や個人情報保護をめぐる議論など、国によるAI開発支援に関する多くの施策が展開するようになった。これらの効果を検討できる時期にはないが、引き続き検討を要する点も多いものの、AI自体の性質に根差した検討がなされるようになった点は大きな変化である。
一方、各分担報告でも見たように、医師患者関係への影響、医療者としての対応をめぐる議論には、依然として不明確な部分が多くある。医師自身がどのようにこれら電子ツールを使いこなすべきか、理解に立った利用の展開や患者とのコミュニケーションを支援するための活動の推進も考えるべきだろう。その他、学習データの蓄積や質の確保、公衆衛生領域での検討の少なさ、途上国への配慮も課題である。また、市民・患者を対象とした調査や対話行事の結果からは、AIそのものについての大きな反発があるわけではないものの、医師自身の変容や臨床でのコミュニケーションにもたらす変化に一定の懸念が見られている。この点も引き続きの課題としたい。
次年度については、旧班の検討に引き続き、全体として、①「医療AI」のあり方全体に関する問題のほか、その②企画・デザイン段階、③研究開発段階、④試行・実践の蓄積段階、⑤普及・定番化段階等に分けて検討することを基本線とするが、制度の展開に応じて随時修正する予定である。また、架空事例の補充やブラッシュアップと、行事の計画・論点の一層の抽出・明確化が特に課題である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202004002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,131,723円
人件費・謝金 196,200円
旅費 0円
その他 1,546,899円
間接経費 900,000円
合計 3,774,822円

備考

備考
126,000円返納

公開日・更新日

公開日
2021-06-25
更新日
-