ユースケース・ベースのPHRサービスによるOpen FHIRと電子カルテの連携を目指すクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究

文献情報

文献番号
202003019A
報告書区分
総括
研究課題名
ユースケース・ベースのPHRサービスによるOpen FHIRと電子カルテの連携を目指すクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究
課題番号
20AC1008
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 貴範(九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター 理事長室)
  • 吉田 真弓(一般財団法人医療情報システム開発センター ICT推進部)
  • 平松 達雄(国際医療福祉大学 医療情報部)
  • 飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター)
  • 下川 能史(九州大学 脳神経外科)
  • 藤田 卓仙(慶應義塾大学 医学部)
  • 脇 嘉代(東京大学大学院医学系研究科健康空間情報学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
独自規格の民間PHRが濫立する中で、相互運用性のある標準的PHRモデルの構築と検証を目的とする。疾患別標準ユースケース(UC)として、生活習慣病UC、COVID-19標準UC、脳卒中UC等を、疾患非特異UCは、お薬手帳情報、標準診療情報提供書と退院時サマリー、患者報告アウトカム、動的同意取得機能をOpen FHIRで構築する医療連携プラットフォームとPHRに実装する。システム間連携はSS-MIX2出力、HL7 FHIRで実装する。3つの病院の電子カルテおよびPHRをOpen FHIRを介して双方向に連携し、データ相互運用性、ユーザビリティ等の実証を行う。
研究方法
1)PHR-医療連携プラットフォーム-電子カルテ間での連携
AMED2016年度事業で構築したPHRバックアップ基盤をOpen FHIRで一部再構築し、医療連携プラットフォームへと発展する。複数の医療機関(九州大学病院、国際医療福祉大学病院群)の電子カルテをSS-MIX2出力、HL7 FHIR出力を行うと同時にOpen FHIRと双方向連携する。FHIR連携は、日本医療情報学会課題研究会「NeXEHRS」の策定仕様で行い、PHRはユーザビリティを評価して開発・改修を行う。

2)ユースケース(UC)は、a)〜g)を対象とする。2020年度はa-cを進めた。
a) 生活習慣病
b) COVID-19対応
c) 脳卒中
d) 診療情報提供書、退院サマリー、電子版お薬手帳
e) 動的同意取得
f) 糖尿病の患者報告アウトカム(PRO)
g) マイナポータル(特定健診情報、薬剤情報)とのAPI連携

3)ユーザビリティ向上のためのモックアップ作成
 Webデザイン業者が参画し、他業界での実装例を基に、患者の入力モチベーションを調査する。患者のPHR活用の障害を調査し、自らがメリットを感じて行動することを目標設定とした。

4)研究スケジュール
2020年度は、生活習慣病、Common Pass、脳卒中の各PHRのUC仕様を定めた。医療連携プラットフォーム基盤の一部をOpen FHIRで構築した。
結果と考察
1)PHR-医療連携プラットフォーム-電子カルテ間での連携
2段階でPHR-医療連携プラットフォーム基盤を段階的に機能拡張する方針とした。
第1段階は、既開発のPHRバックエンドサーバをベースとして、PHRで扱う情報を段階的にOpen FHIR化対応する。
第2段階は、Open FHIRが、医療機関の電子カルテのFHIRゲートウェイとして振る舞うと同時にPHRアプリがOpen FHIRを介して、相互に利用可能な仕組みへと発展させる。
本研究では、第1段階を対象とし、2020年度は既開発のPHRバックエンドサーバのOpen FHIRへの一部置換を実施した。

2)OpenFHIR-電子カルテ間の仕様
電子カルテの患者情報、アレルギー、検体検査、処方のデータ種別を対象に、各項目のデータベースを整理しFHIR変換仕様のデータ構造設計書を作成した。

3)対象UCの実現に必要な機能の整理と仕様化
UC概要とデータ入出力概要を整理し、必要な機能の仕様を策定した。

4)生活習慣病PHR画面設計
 BMAT理論、カスタマー(患者)ジャーニーを参考にし「トップページ、通院記録、計測記録一覧、計測記録、お薬記録、設定、お知らせ」のモックアップを作成した。

以上、1年目は、主に仕様と設計を進め、ドキュメントを作成した。そして、研究範囲であるPHR-医療連携プラットフォーム-電子カルテ間のインターフェースと、研究対象となるUCのPHR機能について網羅的に検討し、整理した。
結論
Open FHIR-電子カルテ間のインターフェース仕様と、各UCにおける機能要件と連携仕様を整理した。UCに必要なデータ項目の臨床的な定義・構造化の標準化は、データの相互運用性やPHRユーザビリティのみならず、臨床ガイドラインや同意取得などの社会ルール、エンタテイメント要素のPHR実装を可能とする。
Open FHIRとPHRのUC項目の標準化の成果をPHR事業者に公開することで、PHR事業者間の相互運用性が確保される。PHR事業者の独自データベース保有の必要性や利用者のPHR事業者変更の際のデータ移行の必要性がなくなり、コストは大幅に削減され、健全な競争原理下でのPHR業界の発展が期待される。さらに、UC策定・項目セットの標準化、動的同意取得機能の実装でデータ2次利用が向上し、患者の主観的評価や同意の取得からは、患者主体医療を促進することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202003019Z