文献情報
文献番号
202003014A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全の確保に向けた手術動画の記録および解析におけるAI活用の有用性の実証
課題番号
20AC1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
梶田 大樹(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 斎藤 英雄(慶應義塾大学 理工学部情報工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,384,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働行政の課題として、安全・安心な医療の提供が挙げられる。手術に関しては、第三者の事後検証が実施できるように、術中の映像を残し、調査の対象に含められることが望ましい。特に医療安全の確保を目的に、常に発生しうる医療事故に備える場合、手術の全件録画・全録画が望ましいとされるが、実際の現場には多くの課題がある。
ICTインフラの面では、内視鏡や顕微鏡が使用されない限り、手術動画の録画・保存のために必要かつ利便性の高い機器は開発されていないという問題がある。特に、開腹手術に限らず、外科医が直視下に行う手術(open surgery)においては、手術室のスタッフがわざわざカメラを細かく調整する必要があるうえ、術中にはカメラと術野の間に外科医の頭や体が入り込むため、術野の撮影は困難であり、全録画など不可能であった。
本研究の研究代表者・研究分担者らは、この課題を解決するために、AMED 事業を通じて「マルチカメラ搭載型無影灯」を開発し、スタッフが撮影を意識せずとも、open surgeryの全録画が可能であることを実証した。
本研究の目的は、マルチカメラ搭載型無影灯によるAIを活用した手術の全自動録画(手術全録画AI)およびAIによる手術映像の解析が、医療の質や安全の向上に有用であるとするエビデンスを確立することである。
ICTインフラの面では、内視鏡や顕微鏡が使用されない限り、手術動画の録画・保存のために必要かつ利便性の高い機器は開発されていないという問題がある。特に、開腹手術に限らず、外科医が直視下に行う手術(open surgery)においては、手術室のスタッフがわざわざカメラを細かく調整する必要があるうえ、術中にはカメラと術野の間に外科医の頭や体が入り込むため、術野の撮影は困難であり、全録画など不可能であった。
本研究の研究代表者・研究分担者らは、この課題を解決するために、AMED 事業を通じて「マルチカメラ搭載型無影灯」を開発し、スタッフが撮影を意識せずとも、open surgeryの全録画が可能であることを実証した。
本研究の目的は、マルチカメラ搭載型無影灯によるAIを活用した手術の全自動録画(手術全録画AI)およびAIによる手術映像の解析が、医療の質や安全の向上に有用であるとするエビデンスを確立することである。
研究方法
令和2年度には、手術全録画AIの有用性の実証研究、手術映像データ収集、手術映像解析AIの開発に取り組んだ。
手術全録画AIの有用性の実証研究では、実物大人体模型を使用しての検証と、実際の手術での検証を行った。手術映像データ収集では、マルチカメラ搭載型無影灯やメガネ型アイトラッカーを使用して、手術の撮影を実施した。手術映像解析AIの開発では、術具の識別AIと術野の被注視領域・被注視点予測AIの開発に取り組んだ。
手術全録画AIの有用性の実証研究では、実物大人体模型を使用しての検証と、実際の手術での検証を行った。手術映像データ収集では、マルチカメラ搭載型無影灯やメガネ型アイトラッカーを使用して、手術の撮影を実施した。手術映像解析AIの開発では、術具の識別AIと術野の被注視領域・被注視点予測AIの開発に取り組んだ。
結果と考察
手術全録画AIの有用性の実証研究について、実物大人体模型での検証では、無影灯内蔵のセンターカメラ1台と比較し、周囲4台のカメラの映像を手術全録画AIが選択した映像では術野が見える映像が表示されやすかった。実際の手術での検証でも同様に、マルチカメラ搭載型無影灯の5視点の映像について、このうち1視点の場合と比較すると、術野が見える映像が表示されやすかった。また実際の手術での動画について、外科医によるQoV(Quality of View)の評価では、手術全録画AIが作成した映像は、統計学的に医療用ウエアラブルカメラに劣らない点数を得た。今後は、実際の体腔内の手術においても、手術全録画AIの有用性の実証が求められる。
手術映像データ収集について、令和2年7月から令和3年3月までに、22件のopen surgeryの動画撮影を実施した。open surgeryは撮影が困難でデータが集められないため、AI開発の報告はほとんどない。本研究グループでは、世界で唯一であるopen surgeryの多視点全録画データの活用が可能であり、引き続き世界に先駆けたAI開発が継続されることが期待される。
手術映像解析AIの開発について、術具の識別AIの開発では、手の動きを加味した学習を行うことで、精度の向上が得られた。術野の被注視領域・被注視点予測AIの開発では、メガネ型アイトラッカーで得られた注視点を学習することで、実際の被注視点を含む被注視領域を推定することが可能であった。手術映像解析AIの開発において、形態の類似した術具を判別したり、映像において重要な領域を推定したりする技術は、外科医の行動を判別し、自動的に手術工程の認識と分解、構造化を行うAIの要素技術として用いられる可能性がある。
手術映像データ収集について、令和2年7月から令和3年3月までに、22件のopen surgeryの動画撮影を実施した。open surgeryは撮影が困難でデータが集められないため、AI開発の報告はほとんどない。本研究グループでは、世界で唯一であるopen surgeryの多視点全録画データの活用が可能であり、引き続き世界に先駆けたAI開発が継続されることが期待される。
手術映像解析AIの開発について、術具の識別AIの開発では、手の動きを加味した学習を行うことで、精度の向上が得られた。術野の被注視領域・被注視点予測AIの開発では、メガネ型アイトラッカーで得られた注視点を学習することで、実際の被注視点を含む被注視領域を推定することが可能であった。手術映像解析AIの開発において、形態の類似した術具を判別したり、映像において重要な領域を推定したりする技術は、外科医の行動を判別し、自動的に手術工程の認識と分解、構造化を行うAIの要素技術として用いられる可能性がある。
結論
本研究を通じて手術全録画AIの有用性が確立すれば、手術動画の記録が奨励され、医療事故の客観的な検証が促される。また本研究で開発される手術映像解析AIによって、手術の進捗がリアルタイムに監視されれば、リスクの早期発見にもつながる。本研究では引き続き、これら2つのAIの有用性を示すことによって、安全・安心な医療の実現を目指す。
公開日・更新日
公開日
2021-07-06
更新日
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