文献情報
文献番号
202003013A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代バイオデータ基盤の構築に向けたデータ連携の概念実証
課題番号
20AC5003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
寳澤 篤(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門)
研究分担者(所属機関)
- 長神 風二(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 荻島 創一(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 中村 智洋(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 熊田 和貴(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
169,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
産業利活用促進策の具体化を図るため【産業利用促進策・コホート連携の検討】【横断検索システムや企業向け相談窓口の整備等の体制構築】【データ面から見た産業利用促進策の実現可能性に関する調査研究】【先行事例に学ぶ海外動向調査】を実施した。科学的エビデンスに基づいたサービスを提供できる環境整備し、データ駆動型ヘルスケア産業の創出をするとともに、国民のQOL向上に資する疫学研究の発展に寄与することを目的とする。
研究方法
【産業利用促進策・コホート連携の検討】横断検索システムや企業向け相談窓口設置のための産業界ニーズ調査を分析の基盤とし、課題を抽出した。マイクロバイオーム情報のニーズが高いことが明らかとなり、PRISMバイオ技術領域の担当研究者と横断検索システムにおけるデータの持ち方や提供方法について議論した。【横断検索システムや企業向け相談窓口の整備等の体制構築】(1)コホート研究のデータの標準データベースと検索APIの設計:標準化された各コホート研究のデータベースを横断して検索するAPIを設計し、コホート横断検索システムによるデータアクセスの研究開発を行った。横断検索システムのベースとなる統合データベースデータ抽出機能の研究開発を行った。(2)企業向け相談窓口の体制整備と持続的運営の条件定義:企業向け相談窓口の必要性が認められ、持続可能な体制で運営するために窓口業務サポートツールを作成した。また、諸外国の類似組織のサービス内容を調査した。【データ面から見た産業利用促進策の実現可能性に関する調査研究】バイオバンク及び産業界がコホート参加者のライフログ情報を入手する際の障壁について調査し、コミュニケーション基盤を構築する上での課題の抽出及び対応策に関する調査分析を行った。【先行事例に学ぶ海外動向調査】委託調査を活用して海外コホート・バイオバンク産業利活用の動向を調査すると同時に、文献や各コホート・バイオバンクの公開情報などを幅広く収集し、それらの情報を基に分析・検討を行った。
結果と考察
【産業利用促進策・コホート連携の検討】産業界が求める調査項目カタログ及びその提供方法について検討を行った結果、横断検索システムにマイクロバイオーム関連情報を充実させることが必要であると考え、各プロジェクト担当研究者より検査カタログの提供を受けた。【横断検索システムや企業向け相談窓口の整備等の体制構築】(1)コホート研究のデータの標準データベースと検索APIの設計:データを収載する標準データベースの設計を行い、コホート横断検索システムに対する産業界のニーズの把握、コホート横断検索システムの概要設計、コホートデータの標準データベースの設計、分散データベースの横断検索APIの設計とコホート横断検索システムの手順を踏み研究開発を行った。(2)企業向け相談窓口の体制整備と持続的運営の条件定義:産業界から受けた相談内容や産学連携プロジェクトにおける課題を分析した結果、窓口サービスの有料化、利活用数に応じたコホート・バイオバンク専門窓口スタッフ配置、プロジェクトマネージメント、プラットフォームの充実が重要であることを明らかとし、企業向けコホート利用ガイド案を作成した。【データ面から見た産業利用促進策の実現可能性に関する調査研究】データ利用状況の障壁は低いことがわかり、ライフログ情報のニーズについては一定以上期待が大きいことが分かった。また、コホート参加者からライフログ情報の定期的な提供を受けるためには、対象者の背景に応じたモチベーションの維持が必要であることが仮説として挙げられた。【先行事例に学ぶ海外動向調査】海外におけるコホート・バイオバンクの利活用状況調査を行った結果、EUについては、非営利を目的として設置された組織がバイオバンクと産業界を仲介し、社会実装に重要な役割を担っている例が明らかになった。また、中国については、国際的なコホート・バイオバンク利活用の観点からもその動向を今後も継続して注視する必要があることが明らかとなった。コホート・バイオバンク産業利活用促進策について検討を行った結果、関心のあるデータ項目及びその二次利用、代表的なコホートやバイオバンクのデータカタログを閲覧できるプラットフォームへのニーズに対し、本年度構築したコホート横断検索システムの概要設計、コホートデータの標準データベースはそれを満たすものとなったと考える。今後、提供を受けるデータの質・量を増やしていくことが課題となるが、基盤構築は順調に進捗した。
結論
産業界がコホート・バイオバンクを利活用できる横断検索システムおよび相談窓口の構築を進め、これらを活用するために営利・非営利の両面でバイオバンクと産業界を仲介する役割を担う組織を募る必要があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2021-07-06
更新日
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