食品添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究

文献情報

文献番号
200734021A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究
課題番号
H18-食品-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
能美 健彦(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 本間正充(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 山田雅巳(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 松田知成(京都大学)
  • 長尾美奈子(共立薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
13,748,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、遺伝毒性の閾値形成機構を、主にDNA修復に焦点をあてて研究するとともに、内因性DNA損傷の分析法、遺伝毒性検出用gpt deltaトランスジェニックマウスのバリデーションを進め、遺伝毒性発がん物質の閾値形成機構に関する基盤的研究を推進する。
研究方法
Ames試験菌株TA1535の酸化的DNA損傷に対する修復能(mutM, nth, nei)を欠損した変異株を用いて臭素酸カリウムおよびL-ペニシラミンの遺伝毒性を検索した。ヒト細胞TK6を用いて臭素酸カリウムの遺伝毒性を検索し、変異体の分子解析を行った。文献検索により遺伝毒性の閾値に関する国際情報を収集した。内因性アルデヒド類によるDNA損傷を分析した。gpt deltaマウス由来の肺繊維芽細胞(MEF)にクロシドライト(白石綿)を曝露し変異体を解析した。
結果と考察
バクテリアにおいて、臭素酸カリウムは塩基置換を誘発し、その遺伝毒性は塩基除去修復により抑制された。しかしヒト細胞において、臭素酸カリウムは主に欠失変異を誘発した。閾値に関する国際動向の分析に基づき、遺伝毒性の閾値の有無は化学物質の種類によって異なることが示唆された。アクロレインおよびクロトンアルデヒドは、DNAの塩基以外の箇所に損傷を与え、アルデヒド類による損傷はヒトの臓器からも検出された。クロシドライトはMEFにDNA酸化を介した欠失変異を誘発した。
結論
遺伝毒性の閾値形成には、DNA修復の関与が考えられるが、誘発される変異のタイプや遺伝毒性物質の種類により閾値形成機構は異なることが示唆された。内因性遺伝毒性物質によるDNA損傷の解析は、低用量域での遺伝毒性のリスクを考える上で重要である。gpt deltaトランスジェニックマウスおよびそのMEF細胞は、遺伝毒性物質の閾値形成機構を究明する際に有用である。

公開日・更新日

公開日
2008-03-24
更新日
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