日本の集中治療臨床情報を基盤として人工知能を用いた本邦発の重症度予測モデルの開発とパネルデータ活用環境の醸成

文献情報

文献番号
202003007A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の集中治療臨床情報を基盤として人工知能を用いた本邦発の重症度予測モデルの開発とパネルデータ活用環境の醸成
課題番号
19AC1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大嶽 浩司(昭和大学 医学部麻酔科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 悟(京都府立医科大学医学部)
  • 飯塚 悠祐(自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科)
  • 高木 俊介(横浜市立大学 附属病院集中治療部)
  • 野村 岳志(東京女子医科大学医学部)
  • 長谷川 高志(特定非営利活動法人日本遠隔医療協会)
  • 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
  • 大下 慎一郎(広島大学大学院医系科学研究科 救急集中治療医学)
  • 重光 秀信(東京医科歯科大学 統合国際機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢化社会に向けて重症患者の確実な増加が見込まれる中、医療従事者不足が恒常化している。特に、集中治療室(ICU)における急性期医療の現場での不足は顕著である。ICUの患者は多臓器に障害を持ち、病態が刻々と変化するため、集中治療専門医がバイタルサインや身体所見、診療データを統合して、病状を繰り返し評価し、重症化の予兆を見定め、適切な医療介入をタイムリーに行わねばならない。しかし、多臓器障害をともなう重症患者の増加が予測されるのに比して、見定める集中治療専門医数は、重症患者増加に比した増加が見込めず、結果、集中治療専門で無い医師がICU患者を管理せざるを得ない状況が恒常化している。また、COVID-19やSARSのような新興感染症パンデミック時には一過性に需要がsurgeすることもICUの特徴である。そのため、常時監視できるAIを用いて重症化予測判断を自動化して、専門医の負担が大幅に軽減させ、対応可能な患者数を増やすことが急務とされている。
先行する平成30年度厚生労働科学研究費「日本版遠隔集中治療(Tele-ICU)の構築に向けた課題及び解決策に関する調査研究」で行われた集中治療患者の重症度評価アルゴリズムに関する調査結果に基づき、集中治療医学会が推進するICU患者レジストリJIPAD(Japanese Intensive care PAtient Database)や稼働中の遠隔ICUシステムなどから抽出したICUパネルデータを用いたAIモデルの構築による重症化予測を目的としている。
研究方法
集中治療医学会が推進するICU患者レジストリや稼働中の遠隔ICUシステムなどから抽出したICUパネルデータを用いたAIモデルの構築による重症化予測を行う。
本邦では、診療情報の各施設での部分最適化が進んでおり、情報集約にはデータ構造・項目の標準化が必要となる。この場でICUデータ標準化・構造の統一化に向けた検討を行い、データ利活用を行うプロジェクトのハブとなることで、研究費終了後にも持続的に組織運営が行われ、事業継続できる方策を検討する。
ICU患者の重症度予測のAIモデルの構築では、1)単施設における時系列パネルデータを用いたAIモデルの構築をいくつか実施し、2)文献を集約した集中治療重症度予測ツールの開発を同時に実施する。
結果と考察
ICU診療データの標準化を目指し、日本集中治療医学会や関連学会・企業と連携してコンソーシアム「集中治療コラボレーションネットワーク(ICON)」を設立した。

ICU時系列診療データの構造に係る調査
ICUで使用される人工呼吸器、人工心肺、腎代替療法などの機器は複数企業の製品がある。また、同一機器でも各施設で取得されるデータ項目は異なる。本研究で、人工呼吸器、CHDF (持続血液濾過装置)、ECMOについて、データ構造をマッピングし、各施設で収集すべき最低限のデータ項目を整理した。

重症系部門システムからの抽出データの匿名化処理プログラムの開発
データ解析のための多施設データ共有に向け、横浜市立大学にて使用されている複数の部門情報システム、電子カルテから抽出された患者データの個人情報の秘匿化に関するプログラムを構築した。

厚生労働省科学研究費における研究の進捗を共有するフォーラムの開催
本研究の進捗を共有する会として、WEBフォーラムを開催し、254名が視聴した。

遠隔ICUデータを用いた集中治療重症度予測AIモデルの開発
1次元CNN(Convolutional neural network)を採用したAIモデルを構築し、昭和大学に導入されているeICUにある2病院5重症病棟の6ヶ月分の診療データを用いて、過去24時間分の血圧の値から未来3時間後の値の予測を行なった。1サンプルに対する予測結果とそのペアである3時間後の実測値との乖離が平均して2〜6mmHgと極めて良好な結果が得られた。

重症度アルゴリズムの文献的レビュー
ICU・集中治療領域において、介入にArtificial intelligence,Machine learningなどが使用されている原著論文・review論文を、医学文献検索エンジンにて網羅的に検索した。既存の重症度評価指標はいずれもある程度の精度を示しているものの、いまだ十分ではなく、重症度評価指標がさらなる精度向上を目指すためにはAI解析の応用が必要不可欠であると考えられた。
結論
本研究により、多施設のICUの診療データを収集し、重症度予測AIモデルを構築し、臨床現場に資するために、
①施設・企業により異なるデータ構造・項目の相違の整理・解消
②多施設診療データを集積するデータベースの構築および持続的な運営体制の設立
③ICU患者に対するAIを用いた重症化予測モデルの構築
が推進された。

公開日・更新日

公開日
2022-03-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202003007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,800,000円
(2)補助金確定額
1,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,129,624円
人件費・謝金 1,846,555円
旅費 0円
その他 11,023,821円
間接経費 3,000,000円
合計 18,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-03-02
更新日
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