文献情報
文献番号
202003005A
報告書区分
総括
研究課題名
Precision medicineの確立に資する統合医療データベースの利活用に関する研究
課題番号
19AC1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学病院)
- 鴨打 正浩(九州大学大学院医学研究院 医療経営・管理学講座)
- 西村 邦宏(独立行政法人国立循環器病研究センター・研究開発基盤センター 予防医学・疫学情報部 EBM・リスク情報室)
- 井上 創造(九州工業大学大学院生命体工学研究科)
- 小橋 昌司(兵庫県立大学工学研究科)
- 清水 周次(九州大学病院 国際医療部)
- 吉本 幸司(九州大学病院 脳神経外科)
- 野原 康伸(熊本大学大学院先端科学研究部)
- 大北 剛(九州工業大学大学院情報工学研究院知能情報工学研究系)
- 船越 公太(九州大学病院ARO次世代医療センター)
- 竹上 未紗(国立循環器病研究センター 研究基盤開発センター 予防医学・疫学情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
救急医療の均てん化は喫緊の課題である。現場では病院前救護から急性期医療まで多数の意思決定者が関与するため、医療の断片化が起こり、適確医療の実施が妨げられる可能性がある。現場で生じる多数の指標が患者予後に与える影響を、機械学習をベースとした人工知能(AI)を用いて予測し、結果を意思決定者間で共有できれば、予後改善を達成できる可能性がある。
本研究では脳卒中のリアルワールドの統合医療データベースを活用し、AIを用いた解析、従来の統計手法と予測精度の比較、遠隔医療システムを介した複数の医療機関との予後予測情報の共有により、医療の質向上を継続的にもたらす多施設型Learning Healthcare System (LHS)を開発、実装する。
具体的に、本研究では1)救急統合データベース:消防庁全国救急搬送データとJ-ASPECT Studyデータのマッチングデータ、2)脳内出血統合データベース:DPC、血液検査、CT画像の統合データベース(11施設1484例)、3)Patient-reported outcomes情報(くも膜下出血特異的アウトカム)を付与した統合データベースを活用する。
本研究チームは比類ない統合データベースを持ち、機械学習ベースのAI、特に多数のパラメータを持つデータの変数の解釈性や組み合わせを探索しつつ、感度と特異度のバランスを取る、医療データサイエンスに最適な手法を研究してきた。本研究では手法をさらに発展させ予測精度向上と要因抽出に取り組む。
本研究では脳卒中のリアルワールドの統合医療データベースを活用し、AIを用いた解析、従来の統計手法と予測精度の比較、遠隔医療システムを介した複数の医療機関との予後予測情報の共有により、医療の質向上を継続的にもたらす多施設型Learning Healthcare System (LHS)を開発、実装する。
具体的に、本研究では1)救急統合データベース:消防庁全国救急搬送データとJ-ASPECT Studyデータのマッチングデータ、2)脳内出血統合データベース:DPC、血液検査、CT画像の統合データベース(11施設1484例)、3)Patient-reported outcomes情報(くも膜下出血特異的アウトカム)を付与した統合データベースを活用する。
本研究チームは比類ない統合データベースを持ち、機械学習ベースのAI、特に多数のパラメータを持つデータの変数の解釈性や組み合わせを探索しつつ、感度と特異度のバランスを取る、医療データサイエンスに最適な手法を研究してきた。本研究では手法をさらに発展させ予測精度向上と要因抽出に取り組む。
研究方法
本研究で解析するデータベースは、先行研究で構築した1)救急統合データベース:総務省消防庁の全国悉皆救急搬送データ(2013-2016年 約2,100万件)とJ-ASPECT Study脳卒中データベースのマッチングデータ(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、約30万件)、2)画像、医療情報統合データベース:脳内出血患者のDPCデータ、血液検査データ、CT画像の統合データベース(国内11施設1,484例)、3)くも膜下出血に対する、疾患特異的なアウトカムアセスメントツールを用いた統合データベース、である。これらについて解析を行った。
結果と考察
1) 救急統合データベース
2013-2016年の総務省消防庁全国救急搬送データとJ-ASPECT studyにおける急性期脳卒中3病型のマッチングを行った。その結果救急搬送データ約2132万件とJ-ASPECT study急性期脳卒中3病型データ約30万件を確率論的データマッチング手法(キー変数:性別、年齢、発症(入院)日、都道府県、施設コード)に基づいてマッチングを施行し、約11万件(75%)の症例でマッチングを行うことができ、病院前救護情報と病院診療情報データの紐付けがなされた統合データベースを作成した。また脳内出血については約1500例の脳出血データと、その症例に対応するEFファイルを含むDPC情報および入院時採血データ、既往歴や生活歴・内服薬・血圧などの患者情報データを統合した。またClose The Gap-Strokeプロジェクトにおいて、脳梗塞急性期症例の追加情報登録を全国の脳卒中診療病院に依頼し、医療の質を継続的に評価しうる統合データベースを作成した。脳内出血統合データベース
脳出血における頭部CT画像を用いて、血腫増大予測モデルの開発に取り組んだ。標準脳に対応させるイメージレジストレーション技術を調査し、最新のニューラルネットワークを用いたイメージレジストレーションを実現した。
3)Patient-reported outcomes情報(くも膜下出血特異的アウトカム)を付与した統合データベース
くも膜下出血を含む脳卒中の大規模なデータベースが構築されているが、患者の主観的なアウトカムであるQOLの情報は収集されておらず、長期的な予後の評価は含まれていない。近年、英国にてくも膜下出血患者の疾患特異的なQOLを測定するくも膜下出血特異的なアウトカム評価ツール(SAHOT)が開発された。
2013-2016年の総務省消防庁全国救急搬送データとJ-ASPECT studyにおける急性期脳卒中3病型のマッチングを行った。その結果救急搬送データ約2132万件とJ-ASPECT study急性期脳卒中3病型データ約30万件を確率論的データマッチング手法(キー変数:性別、年齢、発症(入院)日、都道府県、施設コード)に基づいてマッチングを施行し、約11万件(75%)の症例でマッチングを行うことができ、病院前救護情報と病院診療情報データの紐付けがなされた統合データベースを作成した。また脳内出血については約1500例の脳出血データと、その症例に対応するEFファイルを含むDPC情報および入院時採血データ、既往歴や生活歴・内服薬・血圧などの患者情報データを統合した。またClose The Gap-Strokeプロジェクトにおいて、脳梗塞急性期症例の追加情報登録を全国の脳卒中診療病院に依頼し、医療の質を継続的に評価しうる統合データベースを作成した。脳内出血統合データベース
脳出血における頭部CT画像を用いて、血腫増大予測モデルの開発に取り組んだ。標準脳に対応させるイメージレジストレーション技術を調査し、最新のニューラルネットワークを用いたイメージレジストレーションを実現した。
3)Patient-reported outcomes情報(くも膜下出血特異的アウトカム)を付与した統合データベース
くも膜下出血を含む脳卒中の大規模なデータベースが構築されているが、患者の主観的なアウトカムであるQOLの情報は収集されておらず、長期的な予後の評価は含まれていない。近年、英国にてくも膜下出血患者の疾患特異的なQOLを測定するくも膜下出血特異的なアウトカム評価ツール(SAHOT)が開発された。
結論
-
公開日・更新日
公開日
2021-06-02
更新日
2021-07-06