ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究

文献情報

文献番号
202003002A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究
課題番号
H30-ICT-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(一般社団法人 日本医学会連合)
研究分担者(所属機関)
  • 伴 信太郎(愛知医科大学 医学教育センター)
  • 福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 田中 雄二郎(東京医科歯科大学)
  • 木内 貴弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 高木 康(昭和大学)
  • 河北 博文(公益財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
16,021,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、15年にわたる臨床研修制度の実績と卒前医学教育改革を踏まえ、ICTを活用したシームレスな医学教育支援のための評価法を構築し、さらには医師国家試験のICT化、臨床研修制度の体系的評価法について基礎的検討を行った。 
研究方法
①ICTを活用したシームレスな評価体系構築(田中、木内):全国の大学病院および臨床研修病院を対象にICTを活用した卒後臨床研修評価システムの本運用を開始した。また、卒前臨床実習評価システム(プロトタイプ)の開発を行った。
②ICTを活用した卒前の臨床実習と卒後臨床研修の支援と評価法の開発(高木):動画・音声などを活用・導入した参加型臨床実習で修得すべき技能を評価するCBTシステムを構築し、診療参加型臨床実習で学修すべき具体的な内容、国家試験の実技試験Post-CC OSCEを補完するツールとしての有用性を検証した。
③医師国家試験のCBT化と共用試験CBTの公的化についての研究(伴):日本の先行事例である医療系大学間共用試験実施評価機構への聞き取り調査等を実施した。
④医師国家試験出題基準の改定に向けた提言のための研究(伴):「医師国家試験出題基準」の「医学各論」の各項目に求められる知識レベルについて検討し、分類の妥当性の検証のために過去統計等を収集・突合。医師国家試験の妥当性の継続的向上のための仕組みの構築について提言を行った。
➄臨床研修の評価体系の構築(福井):勤務時間・業務内容把握のためのアプリケーションソフトを開発し、研修医の実態調査を行い、その結果について、研修医の勤務時間・業務内容に関する10年前の研究データと比較検討を行った。
⑥ICTを活用した医学教育コンテンツ等の開発(河北):前年度研究で作成した医学教育コンテンツに関して、Moodleの小テスト形式での双方向性を確保するだけではなく、正しい知識をフィードバックすることに着眼し、医学教育コンテンツの作成を行った。臨床実習の代替教材として6症例のシナリオ・コンテンツを作成し、全国の医学部に無償提供し、各大学の教員および医学生に対してアンケート調査を行った。
結果と考察
①令和2年4月より本運用を開始した卒後臨床研修評価システム(EPOC2)の利用施設・利用研修医数は、800施設、8000名以上となった。明らかとなった運用上の課題に対して対応策を検討した。また、今年度のEPOC運営委員会および全国医学部長病院長会議(AJMC)とともに検討し卒前臨床実習評価システムの内容が確定した。
②動画や音声を活用したマルチメディア活用CBTを開発し、10題の課題をPost-CC OSCEの1課題として施行した結果、高い識別能力であることが確認できた。
"③医師国家試験のCBT化は、導入に向けての具体的は工程の概略を作成するとともに、共用試験の公的化について、どのような合格証書の出し方をするかについての提言を行った。
④「医師国家試験出題基準」の改定提案を「医学各論」に絞って検討した。今回行った2つの提言は「医師国家試験出題基準」の改善のための提言としては初めてのものである。"
➄医師の勤務時間・業務内容を把握するためのアプリケーションソフトを開発し、特に問題なく使用できたことから、今後の活用が期待できる。研修医の勤務時間・業務内容の実態調査の結果、1年次、2年次研修医の平均睡眠時間は10年前とほぼ同じで、平成30年国民健康・栄養調査の結果と比べても、同年代の一般国民とほぼ同値であった。
⑥前年度研究で作成した医学教育コンテンツをバージョンアップさせ、知識面のフィードバックを充実させた、より教育効果が高められる医学教育コンテンツを作成した。また、前年度研究で作成したコンテンツ作成マニュアルに準拠した方法で、臨床実習の代替教材向けのシナリオ・コンテンツを6症例作成し、代替教材として全国医学部42大学に無償提供するとともに、アンケート調査を行ったが、その結果は概ね高い評価であった。
結論
EPOCによる卒前・卒後の臨床実習・研修の評価を一貫性のあるものとすることによって、卒前実習の質の均てん化が図られることが期待される。また、医師国家試験をCBT化することにより、より臨床現場の臨床能力に近い推論能力を問うことができるようになる。さらに、マルチメディアを活用した作問は、今後生涯教育にも活用できるような試験問題の作成への可能性を開くことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-07-06

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-07-06

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202003002B
報告書区分
総合
研究課題名
ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究
課題番号
H30-ICT-一般-005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(一般社団法人 日本医学会連合)
研究分担者(所属機関)
  • 伴 信太郎(愛知医科大学 医学教育センター)
  • 福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 田中 雄二郎(東京医科歯科大学)
  • 木内 貴弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 高木 康(昭和大学)
  • 河北 博文(公益財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、15年にわたる臨床研修制度の実績と卒前医学教育改革を踏まえ、ICTを活用したシームレスな医学教育支援のための評価法を構築し、さらには医師国家試験のICT化、臨床研修制度の体系的評価法について基礎的検討を行った。 
研究方法
①ICTを活用したシームレスな評価体系構築(田中、木内):卒前臨床実習、卒後臨床研修の評価についてそれぞれ、文部科学省や厚生労働省の関連ガイドライン等の調査を行い、卒後臨床研修評価システムの開発・改良、本運用を開始した。また、卒前臨床実習評価システム(プロトタイプ)の開発を行った。
②ICTを活用した卒前の臨床実習と卒後臨床研修の支援と評価法の開発(高木):動画・音声などを活用・導入した参加型臨床実習で修得すべき技能を評価するCBTシステムを構築し、診療参加型臨床実習で学修すべき具体的な内容、国家試験の実技試験Post-CC OSCEを補完するツールとしての有用性を検証した。
③医師国家試験のCBT化と共用試験CBTの公的化についての研究(伴):海外調査を行うとともに、国内の法律家や教育測定学専門家、テストベンダーへの聞き取り調査を行い、医師国家試験CBT化導入のための設計を検討した。共用試験の公的化については、法律家から公的化の幾つかの可能性について情報収集を行った。
④臨床研修の評価体系の構築(福井):平成30年度調査で得られた最新データを用いた2年次研修医年度末調査の解析を行った。認知分野の客観的試験を用いた「継続」プログラムと「弾力化」プログラムの比較を行った。ICTを活用した研修医の業務量調査を実施し、業務内容、睡眠時間を10年前に行った調査データと比較分析した。
⑤海外のシミュレーションコンテンツの評価やEBMの教育活用の分析を行うとともに、臨床推論、EBMの応用、動画・音声を駆使した8症例のモデルシナリオを作成した。作成したモデルシナリオをMoodleに搭載し、医学教育コンテンツの完成版として2症例のコンテンツを作成した。さらに、臨床実習の代替教材として6症例のシナリオ・コンテンツを作成し、全国医学部に無償提供を行い、教員と医学生にアンケート調査を行った。
結果と考察
①モバイル端末上で利用可能なICTを活用した卒後臨床研修評価システムを開発し、本運用を開始した。その利用施設・利用研修医数は、全国800施設、8000名を超えていた。卒前臨床実習評価システムについては、プロトタイプが完成した。
②マルチメディアを活用した診療参加型臨床実習で修得すべき、あるいは修得した内容を評価するためのマルチメディア活用CBTの内容を検討して、25題を作成した。
③医師国家試験のCBT化、試験問題の不開示、IRT理論による試験問題管理を取り上げ、その為の法律的、教育測定学的、および実施運営工程についての基礎的検討を行うとともに、共用試験CBTの公的化の方法について5つの方法を提案し、メリット、デメリットを整理した。
④「臨床知識、技術、態度に関する自信度」や研修医の「経験症例数」を指標にすると、臨床研修の必修化はより優れた医師の養成に繋がっていることが確認できた。また、幅広い臨床能力を身に付けた医師の養成には、研修医がローテーションする診療科数の多い「継続」プログラムが有効であった。また、令和2年(2020年)度に「見直し」された医師臨床研修制度における新たな研修医評価票の妥当性を確認した。開発したアプリケーションソフトを活用した研修医の勤務時間・業務内容の実態調査の結果、1年次、2年次研修医の平均睡眠時間は10年前とほぼ同じで、平成30年国民健康・栄養調査の結果と比べても、同年代の一般国民とほぼ同値であった。
⑤Moodleの機能を活用し、双方向性を確保するとともに、動画、音声ファイルを駆使した医学教育コンテンツを作成した。医学教育コンテンツは知識面のフィードバックを充実させたなどより充実させるとともに、臨床実習の代替教材向けのシナリオ・コンテンツを6症例作成し、代替教材として全国医学部42大学に無償提供するとともに、アンケート調査を行ったが、その結果は概ね高い評価であった。
結論
今後、期待される成果として、EPOCによる卒前・卒後の臨床実習・研修の評価を一貫性のあるものとすることによって、卒前実習の質の均てん化を図ることができる。また、医師国家試験をCBT化することにより、より臨床現場の臨床能力に近い推論能力を問うことができるようになる。また、マルチメディアを活用した作問は、今後生涯教育にも活用できるような試験問題の作成への可能性を開くことが期待される。 

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-07-06

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-07-06

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202003002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
EPOCによる卒前・卒後の臨床実習・研修の評価を一貫性のあるものとすることによって、卒前実習の質の均てん化が図られることが期待される。また、医師国家試験をCBT化することにより、より臨床現場の臨床能力に近い推論能力を問うことができるようになる。さらに、マルチメディアを活用した作問は、今後生涯教育にも活用できるような試験問題の作成への可能性を開くことが期待される。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
令和2年度に大学病院・臨床研修病院を対象に卒後臨床研修評価システムの本運用を開始し、利用施設・利用研修医数は、全国800施設、8000名以上となった。
その他のインパクト
令和元年(2019 年) 3 月 14 日(木)18:00~20:00 に、「新臨床研修制度 評価票の使い方 2020年度開始 新臨床研修制度について」というタイトルでのワークショップを開催した。本ワークショップの模様は、厚生労働省のホームページで公開した。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03924.html(動画説明:
https://www.youtube.com/watch?v=myayYqG7vmY)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ワークショップ1件(厚生労働省のホームページで公開)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2023-06-06

収支報告書

文献番号
202003002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,101,000円
(2)補助金確定額
15,345,861円
差引額 [(1)-(2)]
755,139円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,790,718円
人件費・謝金 2,261,662円
旅費 39,061円
その他 9,174,420円
間接経費 80,000円
合計 15,345,861円

備考

備考
予定していた委託費等の支出が不要になったため

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-