薬剤耐性食中毒菌サーベイランスに関する研究 | 厚生労働科学研究成果データベース

文献情報

文献番号

200734015A

報告書区分

総括

研究課題名

薬剤耐性食中毒菌サーベイランスに関する研究

課題番号

H18-食品-一般-003

研究年度

平成19(2007)年度

研究代表者(所属機関)

渡辺　治雄(国立感染症研究所　細菌第一部)

研究分担者(所属機関)

秋庭　正人((独)農業・食品産業技術総合研究機構　動物衛生研究所　安全性研究チーム)
五十君　靜信(国立医薬品食品衛生研究所　食品衛生管理部)
泉谷　秀昌(国立感染症研究所　細菌第一部)
田口　真澄(大阪府立公衆衛生研究所　感染症部　細菌課)
甲斐　明美(東京都健康安全研究センター　微生物部　食品微生物研究科)
田村　豊(酪農学園大学獣医学部　衛生･環境部門　獣医公衆衛生学教室)
石川　整(農林水産省動物医薬検査所　検査第二部　抗生物質製剤検査室)
山口　正則(埼玉県衛生研究所　臨床微生物担当)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金健康安全確保総合研究食品の安心・安全確保推進研究

研究開始年度

平成18(2006)年度

研究終了予定年度

平成20(2008)年度

研究費

30,000,000円

研究者交替、所属機関変更

研究報告書（概要版）

研究目的

食中毒菌として公衆衛生上重要性の高いサルモネラとカンピロバクターに注目して、ヒト、家畜、及びペット等における薬剤耐性菌の出現状況の調査をおこなう。特に治療薬として重要なニューキノロン、第３，４世代セファロスポリン系薬に対する耐性状況に注目しての調査を行う。

研究方法

薬剤感受性試験をNCCLSに準拠したセンシディスクあるいは、最小発育阻止濃度をEtestあるいはミクロタイタープレートを用いて決定した。パルスフィールドゲル電気泳動（PFGE）は米国疾病管理センターにより推奨されているパルスネットプロトコールに準じた。キノロン系薬剤耐性化機構の解析およびセファロスポリン耐性遺伝子の解析を塩基配列レベルで行った。

結果と考察

H19において、国内患者由来148株のSalmonella Typhimuriumを調査した結果、フルオロキノロン高度耐性菌が３歳および１歳の患者から分離された。H19に大阪府内で流通している国産鶏肉から分離したサルモネラ90株の中で、ESBL産生が3株（3.3%）とAmpC型βラクタマーゼ産生が5株（5.6%）検出された。ESBL産生株はS. Infantis 2株（耐性遺伝子 blaCTX-M-14）およびS. Manhattan 1株（blaCTX-M-2）であり、AmpC型βラクタマーゼ産生株は5株ともS. Infantis（blaCMY-2）であった。牛から分離されたセファゾリン耐性S. TyphimuriumはいずれもblaCMY-2遺伝子によるAmpC型βラクタマーゼ産生菌であった。病畜由来111株を調査した結果、フルオロキノロン（ERFX）に対する耐性株は、牛由来Salmonella Typhimurium（１株）に認められた。180頭の犬の糞便由来大腸菌では、46.3％に耐性菌が認められた。ABPCに対しての耐性は30.6％と高く、第３代セフェム剤であるCPDXに対しては14.3％、フルオロキノロンのERFXに対しては17.7％が耐性を示した。

結論

ニューキノロンおよびセファロスポリン耐性のサルモネラ、大腸菌が、ヒト、家畜（ウシ、鶏）、ペット等から分離されてきている。ペット、家畜等からヒトへの感染の関連性も指摘されていること、またそれら耐性菌の感染により治療に困難を呈する事例も発見されてきており、注意を喚起する必要がある。